あらすじ
東洋の化粧品王は、いかにして誕生したか。
「ほんまに、きみが愛おし!」
時は明治の世。秀才ながらも、山口の家族を支えるため進学をあきらめ、単身神戸に出てきた少年・利一。牛より安い値段で花街に売られてきた少女・ハナ。神戸の花隈での二人の出会いは、やがて日本の生活をも一変させる発明、大ヒット商品誕生へとつながっていく。そして、幼い日に誓い合った約束の行方は?
産経新聞連載時から大反響! 明治・大正・昭和の激動期を、「真心」の製品作りと斬新な宣伝手法を武器に乗り切り、大阪で100年を超える会社を創業した“東洋の化粧品王”と呼ばれた男の一代記!
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Posted by ブクログ
パラパラ読んだときに花隈の地名が目に入って、学生時代を神戸で過ごしたので懐かしくなって読んでみることに。
飛行機で自身の会社を宣伝するという大胆な導入場面。利一が興した会社はまさに発展していくその時でそれを見ながらハナはいっそう利一が愛おしくなるのだった
この場面が疾走感と希望いっぱいのキラキラ感がすごい 高殿円さんが描写すると眼の前に浮かんでくるよう
全部読み終わってから思ったけど、この場面は利一と離れることを決めているところなんよね
ほんまに愛おし!と言いながらもう一生会うことはないって決めている
自分はこれからどんどん大きくなる利一の邪魔にしかならないから…
切ない!!
この本には色々と対になっている部分があると思った
整った顔立ちがよく似ているハナと利一
大家族を支えたいと都会で頑張る利一と朝生
仏様とキリスト教
ハナと利一の関係はもちろんのこと、利一と朝生も気になった
境遇も想いも似ていたのに2人の生き方はまるで違ってて 朝生は聖書を利用して私欲のために人々を陥れ、利一は真心を大事にみんなを幸せにする…
お寺の掃除に疲れて寝転がると、金色の仏様の飾りに囲まれているようだった
いつも仏様が見ている、だから真心を大事にしなくては、みんなを幸せにしなくちゃという気持ちで育っていけたのかもしれない 例え、学校に行けないほど貧しくても…
ハナも利一も心に大きな鉄の箱を持ってて、その中に自分の気持ちを入れてきた
花街に売られたくない、上の学校に行きたい…
年を取った2人が自分の気持ちを全部言うことができて、ただの狸の子だった小さな頃に戻れてよかった
Posted by ブクログ
今から100年以上前、生活様式も価値観も違った時代で、銀杏の木の下で会った少年少女の人生のお話。もうすぐ結ばれる、上手くいく、というところで離れることになった2人の行先がどうなるのかハラハラしながら読みました。戦争によって全て無くなったけれど、大切にしてきた真心で報われたこと、長い時間がかかったけれど2人のんびりと同じ時間が過ごせているエピローグにほっとしました。
Posted by ブクログ
馴染みのある方言で進む会話や、よく知る地名が出てくるストーリーが心地よくすいすい読めた。
また、信念を持って自分のやりたいことや目指すものに向かってひた走る人のエネルギーに圧倒された。特にハナが誰にも流されて生きたくはない、と渡米するところシーンが胸を打った。
生きていく上で大事なのは人との縁とお金なのではとうっすら思っているけれど、それらを引き寄せるには"真心"が必要なんだと感じさせてくれた。チヨと利一が最後には二人好きなようにゆっくり過ごす時間が持てて本当に良かったと思う。
Posted by ブクログ
利一もハナもたがいの背中を見つめながら
前へと進んでいっているなと思った。
ハナのためにから始まり、
大衆が使える化粧品をと品質や材料をこだわって作る。
利一の世の中を読み取る力が凄くて、
これほど頭が回れば物も売れるだろうなと思ったが
それよりも、ハナを想う気持ち、大衆を想う気持ちが
人を引き付けたんだろうなと思った。
ハナも利一を見ながら花街で技術を磨き、
利一にこれだという助言をして何度も助けてきた。
いつかおたがいに…と思っていた利一がハナに送った
「僕が大阪の堺町あたりに家を買うたら…
その家に銀杏の木があったとしたら、
いや、なくてもや。
もうお座敷にはでんで、
僕の前だけでたぬきを踊ってくれる?」
というプロポーズが
ハナのことをとても想っているなと
心が温かくなった。
恋愛小説をてんで読まないけど
これにはきゅんとしてしまった。
ハナが泣く泣く利一と日本に分かれを告げるところも
涙が出てしまった。
芸妓はただ男に媚びをうっているものだと思っていたけど
実は、仕事と仕事や人と人の縁をうまく結ぶ
そんな役も買っていたんだなとこれを読んで知った。
それも踏まえたうえで、大金を積んでいるんだよなあ。
最後、二人ですき焼きを食べれて良かった。
Posted by ブクログ
難しい言葉や、聞きなれない単語への読みづらさと闘いながら、読み進めたら面白すぎた。神戸の聞いたことある地名とか出ると親近感。期待していた展開(幸せな展開望みがち)ではなかったかもだけど、読後もいい気持ち。
Posted by ブクログ
お仕事小説、時代小説をミックスしたようなお話だった。
NHKの朝ドラにありそうな物語。
利一は会社のために、ハナは人生のために自身の気持ちを鉄の箱に押し込めた。
きっとこの本が伝えたいことの根幹はそこだと思う。
自分の気持ちを素直に出すこと。
確かに働いたり人間関係を保つ上で、自分に蓋をし気持ちを水平に保つことが要されるが、自分の感情や欲望を素直に口に出すことが人間のあるべき姿ではないか。
過度に感情を仕舞い込むことはよくないから、ちゃんと自分を大切にすること。それをこの本から読み取った。
後、個人的に神戸が舞台の小説は初めて読んだので神戸っ子として非常に嬉しかった。
あと大正明治あたりの和洋折衷の文化がとても好きなのでそこが細かく描写されているのもとても良かった。