【感想・ネタバレ】流れる(新潮文庫)のレビュー

あらすじ

梨花は寮母、掃除婦、犬屋の女中まで経験してきた四十すぎの未亡人だが、教養もあり、気性もしっかりしている。没落しかかった芸者置屋に女中として住みこんだ彼女は、花柳界の風習や芸者たちの生態を台所の裏側からこまかく観察し、そこに起る事件に驚きの目を見張る……。華やかな生活の裏に流れる哀しさやはかなさ、浮き沈みの激しさを、繊細な感覚でとらえ、詩情豊かに描く。(解説・高橋義孝)

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Posted by ブクログ

ネタバレ

主人公の梨花が、傾きかけた芸者の置屋に住込みの女中として働き始めるところから話は始まる。
「くろうと」の世界に初めて入った「しろうと」なのに、右も左もろくすっぽ説明されないうちにこき使われる。
なんと初日は晩ご飯を用意されていなかったのだ。住込みなのに!

梨花は目端が利いて、気働きができるので、次第に主人一家からも通いの芸者たちからも信頼されてくる。
梨花の賢いところは大事なことを見逃さず、出過ぎた振る舞いをしないこと。
誰に対しても公平であること。

彼女の半生については多くを語られないので、戦前は女中を持つ側の奥さんであったこと、家族とは死別したことくらいしかわからない。
多分戦後のどさくさで財産を失くしたうえに、家族の病気治療などで没落していったのかなと想像できる。
先日読んだ『小さいおうち』の時子がもし戦後生き抜いていたら、このような境遇にならなかったとも限らない。

置屋の主人とその娘、姪とその娘という女所帯のうえ、通いの芸者が3人。
元は7人いた芸者が3人に減っているのだけれど、その減らし方もよろしくない。
どうにもお金のやりくりが苦しくて、あちらにもこちらにも不義理を働いている様子である。
けれども「しろうと」の梨花はこの世界に身を置こうと思い決めている。

タイトルは『流れる』。
流されるではなく流れるなのだから、彼女たちの生き様を非難しているわけではない。
ただどうしようもなく時代は流れていき、人は低い方に流れるものなのだ。

物語の最後、女たちはそれぞれに身の振り方を考えていく。
そして梨花にもそれなりの話が来るところで終わる。
いちおうはハッピーエンドなのかもしれないけれど、梨花のこれからがハッピーである保証はない。

タイトルは『流れる』だけれど、流されていくのでも、流されまいと気張るのでもなく、流れを見据えながらそこに根を張ろうとする梨花が主人公というところに納得した。

0
2022年10月30日

Posted by ブクログ

ネタバレ

今時人の所作にどきりとしたり、見惚れたりってないもんなあとしみじみ。
全てが素敵で憧れるわけではないけれど、全てが眉を顰めることばかりではない。
主人公が妙にその世界に惹かれてしまう気持ちがわかるかも。

0
2025年05月28日

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