あらすじ
広大な大地と海に囲まれ、正確に季節がめぐるアラスカで暮すエスキモーや白人たちの生活を独特の味わい深い文章で描くエッセイ集。
解説・池澤夏樹。
※この電子書籍は1995年8月に文藝春秋より刊行された単行本の文庫版を底本としています。
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こんなにも豊かで、あらゆる人と繋がり自ら幸福感を生み出した人生を送った星野さんが羨ましいとさえ感じてしまった。
かつての星野さんがそう思っていたように、遠い異国の地であるまだ見ぬアラスカという場所が星野さんの文章によってくっきりと鮮明に思い浮かべることができた。
私の人生にとって大切で宝物のような一冊になりました。素敵な景色を私たちにも届けてくれた星野道夫さんにただひたすら感謝。
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33の物語全てが優しく、読み手の心にゆとりと癒しを与えてくれます。
今、自分の周りに流れる風もやがてアラスカに届くのだろうか…
毎日、一遍に読みたい。いつも手元に置きたい。
そんな気持ちの処方箋のような一冊です
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静かで力強い文章がアラスカの自然と絡まって、滲み出るような壮大さを感じさせる。
動物写真家であるものの、本からは人間が連綿と続く歴史の中で自然と共存共栄する過酷さを感じた。インディアンの老人の物語、セスナの運転士の生き様、亡くなった友人たち、それぞれがここに書かれている以上の背景があり、奥行きがある。
トーテムポールに寄り添うような鹿の話を読んでて、とても写真を見たくなりgoogle検索した結果、壮麗な写真とともに筆者の凄惨な亡くなり方を知ってしまいひどく動揺した。
穏やかで力強い文章が続くので、とても年老いたイメージが湧きやすかっただけ、若くして亡くなったことが一瞬理解できなかった。
解説の池澤夏樹さんの文章がものすごく良かった。
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「人生で最も好きな本は?」と聞かれたら。
私は真っ先に、「星野道夫さんの『旅をする木』です」と答えます。
アラスカの写真家だった彼が、現地で綴った文章の断片に、
この世界で生きるために本当に大切なこと、を教えてくれるような気がします。
お出かけ先には、必ずバッグに入れておく。
そんなお守り的な1冊です。
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静かで綺麗な文章から本当に自分もそこにいるかのような気にさせてくれる本だった。アラスカの大自然と人々の暮らしを通じてもうひとつの時間の存在を教えてくれた。同時に自然と人の距離感を考えさせられ自然を搾取するのではなく、共存し、学び合い、お互いに敬意を払う姿勢が感じられた。自分の生活のスピード感を緩めもっと身近な自然との関わりを大切にしたい。
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著者は、著名な写真家。カムチャッカ半島での取材中にヒグマに襲われて亡くなっている。
20代でアラスカに渡り、亡くなる前にはアラスカを永住の地と定めて生活を開始していた。
この本は、ある写真家の方からお勧めの本として紹介され、手にとったものだ。
写真を趣味としてはじめた今日この頃だったので、何か撮影に役立つようなことが書いてあるのかな~
くらいに思って読み始めたが、びっくり。
こんなきれいな文章、というか景色を描き出せている小説はなかなかお目にかからない。
それこそ、世界はこんなに素晴らしかったのか、と目を見開かされ、
行ったこともなく、経験をしたこともないはずのアラスカの景色、動物、人、がまざまざと眼前に映し出され、その世界を追体験させてくれる。
自然の厳しさ、美しさ、そこに生きる人たちとの友情、動物の生きざま、、
私も若いころは、世界のいろんなところをカメラを持って放浪したい、なんて夢見てたこともあったけど、
この人は本当にそれを実現して、こんな世界があるよ、と私たちに教えてくれている。
「ぼくたちが毎日を生きている同じ瞬間、もうひとつの時間が、確実に、ゆったりと流れている。
日々の暮らしの中で、心の片隅にそのことを意識できるかどうか、それは、天と地の差ほど大きい」
心が忙しくなった時こそ、この本を読み返して、広い広い世界を感じたいと思う。
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読み終わるのが惜しい本に久々に出会えた。
ページをめくる楽しみと、終わりに向かう寂しさの葛藤。忘れていた何かを思い出させてくれる、優しさに溢れた本。
言葉の優しさから、詩を味わう感覚に似ている。そのためか、読み終わるために内容を追うのではなく、言葉を噛み締めて読みたくなる。
水のように一語一語が染み込んでくる。
目まぐるしい日々の中で忘れてしまっていた、生きることについて、教えてくれる。でもその言葉は水のように身体の中に染み込んでくる感覚で、力をかけずに浸透するような享受。
星野さんは、本の中で生き続けている。
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旅本としてずっと気になっていた一冊。
著者は16歳の時にアルバイトをしながらお金を貯め、ヒッチハイクでアメリカを旅する。
また、アラスカ大学に入学する際には合格点に至らなかったにも関わらず、学長にここで学びたいという熱い情熱を伝え入学することが出来る。そして、アラスカをはじめ様々な国へ冒険の旅に出かける。
何て情熱と行動力に溢れているんだろうと感服してしまう。
自分も大学時代にインドを旅したり、イタリアに一人旅に出かけたりしたが、とてもスケールが違う。自分は沢木耕太郎の深夜特急に惹かれてバックパッカーの旅をしたが、この本にもっと早く出会っていたらアラスカの雄大な景色に憧れを持ったかも知れない。
自然の摂理を考えると自分の一生や、今この一時というのはとても儚く短い時間であり、自分の悩みや不安というのはホントにちっぽけなものだなと思い知らされる。
そして、著者の最期を知ったとき、何とも悔やまれなくいたたまれない気持ちになった。
ここまで自然に生き、その厳しさや生命の危険を十分に知っていたはずなのに、なぜ、そんな行動に出てしまったのかと。
自然を愛し、多くの友人に恵まれ、新しく家族が出来たばかりなのに。その後の家族はどうなってしまったのかと思うと、いつか見た「イントゥーザ・ワイルド」を見終わったあとの何とも言えない切ない苦しい気持ちになる。本書の中の一文にあった、ほんのちょっとの違いで悪いカードを引いてしまったのだなと。
この本を書いたときは、まさか自分がそうなるとは思いもしなかったのか、アラスカという大自然の中で生きる以上、常に死とは隣合わせであり覚悟していたのか、それは本書の一文に人生の持ち時間を少しずつ意識してきたとの言葉にもあるように後者であったんだろうと推測する。
本書は自然の美しさや厳しさ、その中で生きる人達の知恵や逞しさ、そして限りある生命の儚さや大切さを伝えてくれる読み応えのある一冊であった。
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じんわりと、疲れた体に染みました。
文を読んでいるだけなのに、自分もアラスカの風を感じて山並みを眺めているのような、焚き火にあたりながらエスキモーの人の昔話を聞いているような…星野さんの経験を追体験しながら豊かな時間が過ごせる本でした。とても素敵でした。
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時々、不意にどこかへ旅に出たいという衝動に駆られることがある。
日々の生活のいろいろなしがらみから解放され、誰一人として自分を知らない場所で、のんびりと過ごしてみたい…。若い頃は思いたったが吉日とばかりに、ふらっと旅に出たものだったけど、最近めっきりなくなった。
本書を読んで、著者が歩んだ旅の道のりを共に辿っているような感覚を覚えた。美しいアラスカの大自然を軸に、世界のあちこちを巡る旅。
その旅路で感じたこと、出会った人たちのことが、著者の優しい言葉で綴られている。
壮大な自然の原風景と動物たちの息吹きが脳裏に広がる。自然の摂理は生と死が隣合せで、その姿は、著者の旅、人生そのもの。儚さや強さ、憧れを感じさせる。
特に印象的だったのは、『アラスカとの出合い』と『十六歳のとき』の章。いずれも星野青年が単身アラスカやアメリカに渡り、その後の人生に深く影響を受けた回顧録が描かれたもの。人生とは何て不思議な因果に満ちているのだろう。
昔のようにふらっと旅立つことは、まだまだ先のようだけど、心の中のしがらみだけは断ち切って、どこか遠く異国の地へ行くことができたかのような…そんな読後感だった。
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1996年に亡くなった星野道夫さん、一流の動物写真家であり、またアラスカを中心とした大自然への向かい方について数多くの随筆を残している。そんな彼の幸福感が感じられる内容となっている。
22歳でアラスカに渡り、現地の気候や大自然の洗礼を受けながらもやがて逞しくその感性を磨いていく。現地のエスキモーやインディアンとの交流を通して、数千年の悠久の時を経て築かれてきた人と野生の関係性を美しく切り取っていく。
我々が彼の写真や言葉に惹かれるのは、根源的欲求として持つ自然への畏敬の念と、そこから隔絶してしまった都市生活の距離を、これら著作によって埋めることができるからだろう。それは現代社会の満ち足りない世界への窓であり、彼の死はつくづく惜しまれる。
しかし掲題となっている旅をする木にも記されている通り、彼の身体は物質的には他の生物の糧となり地球上を廻り、また彼の想いは多くの人々の心に末長く種を植え続けている。
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アラスカの自然の雄大さが浮かぶような書き方で読んでいて楽しかった。
作者の星野さんのように主体的に自分の好きなことをやっている様子はなかなか自分には難しいけれど少しずつでも行動していきたいと思った。
以前より田舎に住みたいという気持ちが強まった、
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「星野さんが出会った人たちは、この本を読んだのだろうか。この本を読んでいると、星野さんがまだ生きているように私は思える。
憧れの写真家の1人で、小学生の時に国語の教科書に掲載されていた星野さん。
彼が人との繋がり、そして人と自然の繋がりを一生涯、大切に思い、それを言葉で写真で伝えてきたことが分かる。
きっと、彼が亡くなったとき彼と出会った人たち全員が深い悲しみに包まれただろう。でも、その悲しみの中できっと彼の温かさや誠実さを改めて感じたと思う。
私は、彼に会ったことがもちろんないけれど、今すぐにでもこの本を持って彼が大切にしてきた人、生き物、風景たちに彼の想いを伝えに行きたい。」
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書籍を拝見した後、星野道夫さんに興味を持ち調べ、その生涯を知りました。
行動力、好きな事を没頭する一貫力。
大自然という若い頃から熱中出来る事を見つけた星野さんを尊敬しています。
また、本書のとても素敵な文章は心が温まり、そして見た事のないアラスカの大地が脳内に広がります。
毎日の日々に疲れた時、何も考えずにふと夜空を見上げたり、立ち止まって風景を楽しむ、そんな事を頭の片隅に僕も置いておきたい。
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これも多くの人がおすすめするので積読してあった本。エッセイを読みたくなってページをめくり出す。おすすめしたくなるのもよくわかる。とにかく文章が美しい。そして、なかなかこうはなれないけど、こんな大人になりたい。そう思わせてくれる。そして、アラスカに人生で一度は行ってみたいと思うようになった。人生は思ったより短い。「好きなように生きよう」という言葉が心に残る。クマに襲われて亡くなったということも含め、最後まで地球と生きた人だったんだろうな。
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星野さんが生きた時代よりもさらに生きるということへの実感を感じにくくなってしまった世界で、この本が人々の心にもたらすものは大きくなり続けていくと思う。
読めてよかった。
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文章のあちこちに「短い人生」という言葉が見受けられます。
星野さんは自分が若くして亡くなることを知っていたんじゃないか……と思えて来るような生き方をなさったんだと改めて感じます。自分の人生という弁当箱に一粒の米も残さずに食べ尽くした人と感じました。
残しまくってる私ですが、もうちょっとじっくり味わいたいと感じました。
面白くて次のページをめくるのに忙しいという本ではありませんが、これもまた良き読書体験を持たらしてくれる本でした。
Posted by ブクログ
3章に分かれていて、1は丁寧で美しくて語りかけるような文章と表現、2は穏やかな追憶、3は彼の体験からの思いとメッセージかな。
アラスカの雄大さや各地の自然や歴史、読んでいるだけで一緒に旅しているような気分になる素敵な本だった。
もっと早く出会いたかったな。
Posted by ブクログ
穏やかで美しい詩のような本だった。
自分もアラスカを歩いている気持ちになる。
自身のお気に入りの写真家や作家の本を引用している話も多く、読書家だったのだろうなと。
ただ「自然が好き」だけでなく、
壮大な自然への敬意や、百年後の地球へ責任を持つこと、狩猟民についての話が面白かった。
ルース氷河、旅をする木、十六歳のとき、カリブーのスープがお気に入り。
「氷河の上で過ごす夜の静けさ、風の冷たさ、星の輝き…情報が少ないということはある力を秘めている。それは人間に何かを想像する機会を与えてくれるからだ。」
「ぼくたちが毎日を生きている同じ瞬間、もうひとつの時間が、確実に、ゆったりと流れている。日々の暮らしの中で、心の片隅にそのことを意識できるかどうか、それは、天と地の差ほど大きい。」
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著者の本は、ずいぶん前に『アラスカ 風のような物語』と『ノーザンライツ』を読んだ。
そのイメージで読んだんだけど、これはそれらとはちょっと違う感じ。
最後を見たら、雑誌に連載されたものに加筆した文章と書き下ろしで構成されているらしい。
大自然の描写より、著者のホームタウンとなったアラスカや撮影の旅で出逢った人の話が多いように感じたのはそのせいか?
それとも、著者が写した写真がないからかな?
著者が神田の洋書店でアラスカの本を見て、そこにあった村の村長に「そこに行きたい。お世話してくれる人はいませんか?」みたいな手紙を出すエピソードが面白かった。
この本の前に読んだ『そして、ぼくは旅に出た。(大竹英洋著)』の著者が憧れの写真家に弟子入りしたくてノースウッズに行ってしまったエピソードにそっくりなのだ。
情報集めてあーでもないこーでもないと考えてないで、思い切ってそこに飛び込まないと人生終わっちゃうよ!ってことなのかな(^^)/
Posted by ブクログ
2025.5
ちびちび読んでいて、
読みかけのまま長い間放置していたけど
久しぶりに本棚に手を伸ばして
最後の40ページ程を一気に読んだ。
気づいたら泣いていた。
あとがきと解説も素晴らしかった。
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P231 最後に意味をもつのは、結果ではなく、過ごしてしまった、かけがえのないその時間である。頬を撫でる極北の風の感触、夏のツンドラの甘い匂い、白夜の淡い光、見過ごしそうな小さなワスレナグサのたたずまい・・・ふと立ち止まり、少し気持ちを込めて、五感の記憶の中にそんな風景を残してゆきたい。何も生み出すことのない、ただ流れてゆく時を、大切にしたい。あわただしい、人間の日々の営みと並行して、もうひとつの時間が流れていることを、いつも心のどこかで感じていたい。そんなことを、いつの日か、自分の子どもに伝えてゆけるだろうか。
Posted by ブクログ
☆☆☆ 2025年7月 ☆☆☆
2025年7月。この本を読んだのは2回目。
一回目に読んだ時よりもずっと心に染みた。
星野氏の自然に対する眼差しやアラスカの自然の雄大さを感じることができた。
本書で触れられているが星野氏は20代前半で親友のTを遭難事故で亡くしている。そのことが彼の人生に大きな影響を与えているようだ。全体を通して「命の儚さ、人生の短さ」ということがテーマの一つになっていると思う。
ただ、本のタイトルになっている『旅する木』のように、朽ちてしまった命でも別の命の拠り所になったり、食物となって脈々と引き継がれていく。
1996年に熊の事故により命を落とした筆者。
彼の思いもまた本を通してずっと引き継がれていくことだろう。
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星野さんの濃い人生。
読んでいてアラスカ行ってみたくなった。
生きているというのはどういうことか?
長く生きる、よく生きる
池澤さんのあとがきもよかったな。
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・私たちが生きてゆくということは、誰を犠牲にして自分自身が生きのびるのかという、終わりのない日々の選択である。生命体の本質とは、他者を殺して食べることにあるからだ。近代社会の中では見えにくいその約束を、最もストレートに受け止めなければならないのが狩猟である。約束とは、言いかえれば血の匂いであり、悲しみという言葉に置きかえてもよい。そして、その悲しみの中から生まれたものが古代からの神話なのだろう。
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アラスカに行きたくなった。自然を感じたくなった。
旅に行って、ぼーっと考えごとをしている時の感覚を思い出させてくれる。トルコに留学していたときのことを懐かしく思った。
好きな章はたくさんあるけど、「もうひとつの時間」が一番お気に入り。
旅に出た時、写真はたくさん撮るけどそれ以外の記録はしないから、これからは少しだけでも文章に残したい。
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エッセイ。
自然に身を置きたくなる。
自分が仕事してる間、眠っている間にも、どこかでそれぞれの時間が流れていることをふと意識するだけでも日常の捉え方が変わると思った。
トウヒの木の話がよかった。
匿名
きらめく言葉
読み終わった後も、見たこともないはずのアラスカの大自然の情景が心に焼き付いて、しばらく抜けなかった。星野さんは、自然からも、動物からも、人間からも広く深く愛され、また愛することのできる特別な資質を持つ人だと思う。この本にはたくさんのかけがえのない出会いや奇跡が濃密に書き留められている。三十年近く前の文章なのに、今そこで紡がれたばかりの言葉であるようなみずみずしいきらめきを放っていることに驚かされる。
Posted by ブクログ
大自然を感じることができた
ずっとスマホばかり触っていないで歩いて人と会話して感じて生きることが大切だよなと改めて
アラスカに興味持ちはじめました