あらすじ
地球上に生まれた瞬間から40億年近く、あらゆる生物は太陽の光、月の満ち欠け、潮の流れに同期しながら、体の中にリズムを奏で続けてきました。我々の小さな細胞がなぜ、宇宙のサイクルに呼応してしまうのか。眠り、刺激、脳波、心臓――体内で繰り返し起こるリズム発生のメカニズムとは? 「繰り返し」に安らぎを感じてしまう人間の本能を、生命の神秘にまつわる21の視点から解き明かします。
本書は1994年10月に中公新書より刊行された『いのちとリズム』を改題、加筆したものです。
目次
1天体の動きとリズム
2サーカディアンリズムの進化
3サーカディアンリズムの分子生物学
4眠りのリズム
5刺激の伝達のリズム
6脳波のリズム
7心臓の拍動
8非線形振動
9線虫の運動のリズム
10受精波
11細胞分裂のリズム
12細胞という繰り返し構造
13細胞性粘菌の集合のリズム
14ベローソフ-ジャボチンスキー反応
15体節という繰り返し構造
16進化のリズム
17DNAの繰り返し構造・
18遺伝子の繰り返し構造
19非平衡系と生命現象
20繰り返しと心の安らぎ
21文化とリズム
おわりに
参考文献
講談社学術文庫版あとがき
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Posted by ブクログ
「おなじ現象が一定の間隔をおいて繰り返し起こるときに、そこにリズムが生じる。心臓の鼓動のリズム、覚醒と睡眠のリズム、日の出と日没のリズムなどは私たちが日常に感じているリズムである」(本書 P.187-188より)
「われわれは行進に心躍らせ、太鼓の響きに陶酔する——」という帯文の文言に惹かれて読み始めたが、いわゆる「音楽的リズム」について言及されるのは、ほぼほぼ最終章の数十ページ。全体の10%にも満たない。著者が「音楽のリズム」に心を打たれた経験がベースに本書が書かれているにも関わらず、である。
平たく言えば、本書は「リズムの不思議」を天体の運行、細胞の仕組みなど、より非常にマクロな、あるいは非常にミクロなものに目を向けることによって捉えようと試みる。本書の内容は細胞の仕組みをはじめとする生物学に類するものがほとんどだ。『リズムの生物学』というタイトルを冠しているのはそのためだ。
生物学は高校1年性程度の知識しかない自分にとっては、本書の内容の10%も理解することができなかったと思う。であるにもかかわらず、リズムというものを考えるにあたって非常に多くの示唆を得られたように思う。何かすぐに役に立つものが得られないものの、それゆえに心地よい読書体験だった。
Posted by ブクログ
生物リズムについて調べていくつもりでいて、何気なく本屋さんで棚を眺めていると、まさにピッタリのタイトルを発見し、購入してみました。最近発売された本ですが、1994年に発売された『いのちとリズム』の改題です。
内容は、「リズム」という横糸を使って普通の教科書では別々の章に描かれる内容を前半で横断的にレビューし、ラストで著者の考えをエッセイ的に述べるという、ちょっと変わった構成です。流れるように理解できる洗練された文章で、サイエンス・ライターとして、読者のことをよくわかって書いておられるな、と自分で書くときの参考になりました。
基本的に、著者は実験家ではなく、これまでの知見をまとめているだけなのですが、文中、それが分かりにくくなっているところがあり、前半ではそれを文脈で補完できたものの、後半ではどこまでが科学的知見でどこからが著者の想像なのか分かりづらくなっている点が増えてきまして、そこで★4です。
平衡状態においては空間の概念も時間の概念もなく、外部刺激に誘発されてリズムが生まれたときに時空間の概念がしょうじるなぜ人間は同じことの繰り返しに安堵を覚えるのか、ということに対する考察が、著者の至ったひとまずの結論で、それは、規則的な動きは予測可能性を生み、その安心感として脳の報酬系に作用するメカニズムが進化したのではないか、ということです。あとがき等をみると、著者はおそらく自らの体験から考えついたようですね。それはそれで、一考に値すると思いました。現代でこのときからどれほどの知見が得られたのか、サイクルを勉強しながら補完していきたいと思いました。