あらすじ
余命の告知を受けた妻と、新婚時代のアパートを訪ねる僕たち…「その日のまえに」。妻の最期を、二人の息子とともに見届ける「その日」。妻が亡くなった病院の看護師さんから、ある日、お目にかかりたい、と連絡がきた…「その日のあとで」。消えゆく命を前にして、いったい何ができるのだろうか──。死と向かいあう人々の切なくもけなげな姿を描き、幸せの意味をみつめる連作短篇集。“王様のブランチ”で「BOOK大賞」を受賞した涙の感動作!
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Posted by ブクログ
自分に関わりのある人のその日(人の死)を前に人々が何を思い、成していったかを綴った短編集。最後の物語は、それに加えて「その日」と「その日の後」も綴られている。
涙、涙で読み進んだ小説だった。
特に、二人の息子のいる妻のその日の物語は、「その日のまえに」「その日」「その日のあとで」で描かれていて、特に印象深かった。前編に出てきた登場人物が出てくるのもよかったし。
「その日のあとで」、亡くなった妻が何度も何度も書き直した夫への手紙が、息子達の未来を託すとかの内容でなく、
「忘れてもいいよ」
のただの一言だったのが印象的だった。
死期を悟った時、私自身、または親族がその日を迎える前にどう思い、どう行動するかを考えさせられる物語だった。
しばらくして、もう一度読んでみようかな。。。
Posted by ブクログ
人にはいつかやってくる死へのカウントダウンという重いテーマだが、周りの人達の感情をストレートに描写しながら穏やかに表現する書き方はとても心に響き涙が止まらなくなった。大事な人との最後はいつ訪れるか分からないがその時までをどう過ごすか、後悔の無いよう生きていきたい。
Posted by ブクログ
家族の余命、、とても考えたくはないけど日々を過ごしているとこの毎日が当たり前ではないということをついつい忘れそうになる。
この物語を読んで、改めて家族との毎日を大切にしようと心から思った。
子供達に和美の余命を告げるか告げないか。
夫婦で話し合う中での和美のセリフ。
「わたしね、最後の最後のもうギリギリまで2人の元気な顔を見ていたいの。ママは治るんだって信じてる顔を見せてほしいの、少しでも長く。悟ったような顔は似合わないって、あの子達には」
「子供から希望を奪う権利は、親にもないと思う」
後悔なく過ごして欲しいから子供達にも告げるべきではないかという夫の気持ちもよくわかるが、母になった私にはこの言葉がとてもよく沁みた。
子供達は、真実を知らないながらもきっと子供ながらに気づいていることがあるハズ。だからこそ、真実を聞く必要はない、母親がいなくなるかもしれないなんて事実を小さい体で受け止めるのは酷だと思う。
それよりも子供達には最後まで笑顔でいて欲しい。
希望がある中でそっといなくなりたい。私も和美と同じ事を思うなと感じました。
こういう話もいいですね。
死に向う人々のオムニバス。
本人だったり、家族だったり。
癌の闘病が多い気がした。
お別れの時間があるからかな?
当たり前だけど忘れてる。
私達はいつ死ぬか分からない事を。
癌の余命半年位が準備するのに
ちょうどいい。
Posted by ブクログ
忘れてもいいよは悲しいなぁ。
自分の奥さんにそんな手紙残されたら号泣どころじゃ済まないわ。最初は絶対忘れてほしくないもんなぁ、絶対最後まで覚えててほしいし何なら再婚だってしてほしくないし、でも色々考えたあげく最終的な結論がそれっていうのは本当何とも言えない悲しさがある。カフェで読んでたから泣かなかったけどいい小説だった。
Posted by ブクログ
目の前にある死に向き合う心情を描いた短編集。
「その日」が来るまで過去を見つめ直し、人生の意味を考えるその時間は不思議なほどゆったりとした時が流れていた。
過去を見つめることは人生を見つめることであると感じさせられた。そして自身が死を迎えた先の未来を思うことの切なさに心が打たれた。周囲の人間としても死に向き合う大切な人との残された時間、過ごしてきた時間を大切にすることで自分の生きる意味を考えることができるのだと気付かされた。
自分はまだ身近な人間の死に直面していない。
いつか来るであろうその時に目を背けず歩んでいきたい。また、自分もいつ死が来るかはわからない。大切な人との大切な時間に感謝をし、するべきことしなければならないことを見つめ直したいと思う。
Posted by ブクログ
いつか誰にも必ず訪れる「その日」
自分が余命宣告された場合、妻がされた場合。
それぞれ考えながら読んだ。
一日一日を大切に生きなければと思った。
Posted by ブクログ
連作短編集、とあるのにバラバラだな、と思って、その日の前に からその前の短編も全て繋がり始めた。
ひこうき雲
小6で癌で亡くなったクラスメイトと、90歳まで生きて認知症になり、施設で不安定な「生きすぎた」妻の祖母。神が選んだのか?
朝日のあたる家
高校教師のぷくさん、旦那を突然だけど亡くしている。昔の教え子武口と睦美。睦美は万引き依存で、旦那からDVを受け、朝日が怖い。始まるのも終わるのも怖い。コンビニのバイトで万引きを隠蔽していた武口と睦美は逃げ出す。日々を続けることはすごいことだぞ、とぷくさん。
潮騒
俊治は癌で余命三ヶ月。ふらっと昔小三、四の頃住んでいた街を訪れる。薬局で昔の友人石川に会う。昔、共通の友人オカちゃんが海に攫われて死んだ。オカちゃんの誘いを当日断っていた俊治に石川はひとごろし、と言った。母親は海を彷徨い続け、みんなで助けようとした。思い出話の後帰りの電車、オカちゃん三人の乗る電車が見えた。三人は会えたのだ。潮騒は砂に沈む音もある。
ヒアカムズザサン
女手一つで育てた母が癌になった。でも検査結果すら息子は中々聞けないでいる。最近毎日母が聞いているストリートミュージシャンに会うと母のがんを告げられ、一緒に歌を聞く。ビートルズのヒアカムズザサン。
その日の前に その日 その日の後で
妻和美は余命宣告された。「その日」の前に夫婦二人で新婚当初の街に来た。住んでいたアパートには、朝日のあたる家 の武口と睦美が住んでいた。
亡くなる直前に息子たちに母と会わせた。
潮騒 で癌だった俊治は亡くなっていて、友人の石川から主人公のイラストレーターに初盆の花火のポスターデザインを頼まれる。ひこうき雲 で主人公と同じクラス委員だった山本美代子は看護師になり、和美を最期まで支えてくれた。和美は美代子に手紙を託していた。一文、「忘れてもいいよ」。「その日」に病院で見かけた、ヒアカムズザサンの母は亡くなったと美代子から聞かされる。最後は息子二人と花火大会へ行く。消えた花火の輪が、残って見えた。