あらすじ
有名建築家による一等地の中古マンション。誰もがうらやむその家はしかし、とんでもない欠陥住宅だった! 上手くいくはずの改修工事は新旧住民の様々な思惑が絡み合い、混沌の様相を呈していく。デザイナーズマンションに人生を振り回された人々の胸中にあるのは、幸福か、絶望か、見栄か、プライドか。誰もが身につまされる、終の住処を巡る大騒動。『おっぱいマンション改修争議』改題。
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Posted by ブクログ
「ランチ酒」シリーズ、「三千円の使い方」の原田ひ香さんの作品。
原田ひ香さんといえば、ふんわり優しい中に人生の奥行きを感じる作品というイメージを勝手に抱いてたが、本著はまたひと味違う。
登場人物が抱えている闇が深い。
誰にも共感できないのに面白い。どんどん読んでしまう。
かつては流行の最先端であったデザイナーズマンションの老朽化、欠陥、建替問題を軸に
建築家の娘、建築家の右腕とその妻、建築家に憧れと悔恨を併せ持ち入居してきた元教師、永年の入居者である元女優など様々な人生が交錯する。
そして隠蔽されてきたアスベスト問題。
親戚でアスベストが原因で亡くなった人がいるので、リアルに岸田の怖さを感じた。
海外に逃げても、その恐怖からは本当に逃げられるのか。
マンションの再建だけは決着がつくのかと思いきや、様々なトラブルが起き、岸田の手紙も読まれることなく捨てられて、有耶無耶。
めでたしめでたしのラストではなく、現実的だ。
実際そんなマンションがあちこちにあるのかもしれない。
本著のおっぱいマンションと呼ばれた建物は、黒川紀章の「カプセルタワー」がモデルとのこと。以前首都高から見えた不思議な建物を思い出した。
今はもう解体されてしまって見ることができないのが残念。
(雨漏り、カビ臭、キッチンなし、洗濯機置場なしなど色々と大変な物件だったよう。それでも住みたい人はいたみたいで、凡人にはわからない。すごいなぁ。。)
Posted by ブクログ
原田ひ香さんは元々テレビドラマの脚本を書いていたとインタビュー記事で読み、だからかあ!と納得。いかにもテレビドラマ的な癖のある登場人物たちと、最後の謎と。ただ結局マンションは取り壊されずアスベスト問題は有耶無耶に……という結末は小説的で好みでした。
あと多くの人と同じく私も終の棲家探しをしているなかタイトルに惹かれて手に取ったので、単行本から改題したのは英断でしたね。おっぱいマンションってタイトルはさすがに手が伸びない。
レビュー見てると「終の棲家探しには役立たなかった」「具体的なお金の話は出てこなくて期待外れ」みたいな感想がちらほらあるけど、小説にそんなお役立ち情報期待しちゃだめよ(笑)
Posted by ブクログ
構造がおもしろいだけに、最後まで隠されていた秘密がいまひとつだった気がしてもったいない。
まだ早いとは思うけど、魅力的な終の住処、探しています。
Posted by ブクログ
5人ほどの主な登場人物が出てくるのだが、どの人物にも感情移入できない。おかげで俯瞰で観ることができる。
そっか私はこのヘンテコなマンションに住む人種とは隔絶しているのだなと気づく。
章ごとに人物に寄った視点になっているのはさすがだな、と思わせる。そして全く違和感がない。
この作品をハッピーエンドと取る読者は少ないだろう。
海外移住する岸田が自身を小宮山親子から、子どもたちを商社の呪縛から解いた点が唯一の希望と言えるのか。それとも単に世間の非難から逃れるためなのか。
あるいは小宮山親子に対する復讐なのか。
読者がどう捉えるかが作者からの課題なのだろう。