あらすじ
変革者たちは「アパレル愛」をいかにビジネスに変えたのか
コロナ禍で苦境に立たされているアパレル業界の課題を明らかにしつつ、常識にとらわれないアプローチで活路を見いだしている「変革者」たちの熱量の原点を探り、未来へのヒントを見いだそうとしているのが、本書『アパレルに未来はある』だ。
前編ではアパレルの未来を左右する"6つの壁"として「サイクル」「セール」「ブランド」「店」「情報」「デザイン」を挙げ、その壁を乗り越えるためのヒントを提示する。「長きにわたって定番商品を展開したり、1カ月ごとに数点の新商品を投下したりする」「適正量を正価で売り切るために知恵を絞る」「ブランドが持っている志を伝える」「リアル店舗をブランドコミュニティーの場と考える」といった具合だ。
しかし、こういった変革を、生産から販売までのプロセスに多くの企業が関わっているアパレル業界で行うのは容易ではない。そこで、未来へのヒントを得るべく、後編では業界の変革者たちを徹底取材し、その軌跡を詳細に紹介している。
感情タグBEST3
Posted by ブクログ
前編 アパレル業界の未来を左右する「6つの壁」
が面白い。
1.サイクルの壁
業界全体で回してきた半年サイクルが
ファストファッションの動きで短縮化されている。
安価な労働力を世界中から探し、世界規模で販売する。
大量生産、大量消費のビジネスモデル。
みなが短縮されたサイクルでは行き詰まる。
今後サイクルも多様性をもつように変化していく。
2.セールの壁
セールありきのビジネスを見直す。
できるだけ適正量を生産して売り切ること。
3.ブランドの壁
生き残っているブランドは、独自の世界観とストーリーを持っている。
4.店の壁
EC強化、まず「リアルありき」の業界の慣習を乗り越える。
リアル店舗の顔や役割を考える。
ライフスタイル提案、リアル接客による「思わぬ自分の発見」
5.情報の壁
川上から川下へ「ものと情報が一体となって流通するしくみ」が存在するのがアパレル業界の特徴。
ニッチからマスへ、上位から下位ということはヒエラルキーが存在することを意味する。
閉鎖的なヒエラルキーの中でコントロールされていた情報が、デジタルによってオープンかつフラットになってきた。
「業界から消費者へ」というクローズドの情報が価値をもっていた状況が立ち行かなくなってきた
→半年ごとのトレンドが価値として通用しなくなった
→デジタルにより消費者に向けた情報発信するチャネルが開けた。
6.デザインの壁
庶民にファッションが広くいきわたったのはミニスカートが流行った1960年代。「人並みに流行をとりいれないといけない」
70年代~80年代デザインの多様化が始まる。
90年代バブルがはじけてから、雑誌やブランドが提案するお仕着せではなく、自分の好みでコーディネイトする「編集的」な着こなしが広がっていった。
消費者は多様化を求め、送り手の企業は同質化へ
Posted by ブクログ
こういう類の本では珍しく、「アパレルの闇」「問題」というよりは、本当にタイトル通り、アパレルの明るい未来が垣間見れる作品でした。(ので、もし基礎的にそういった問題や現状を知りたいという方には少し違うかもしれません…)
昨今では、かなりサステナブルやエシカルといった考え方が広まってきましたが、それでも未だに、大量消費や大量廃棄、搾取をベースとした安い服が は求められ、作られており、特にこの業界の透明性は、まだまだ低いと思います。
この作品の中でご対談されているようなブランドさんは、それぞれアプローチ方法こそ違いますが、こういったアパレル業界の構造を変えようという強い意志を持った方々ばかりでした。
私は一消費者として、こういった未来のあるブランドを支援できるような選択をしたいなと思いました。
Posted by ブクログ
アパレル業界自体は独自性が高いと思っていたが、今、各業界で課題となっている大量生産・大量消費のビジネスモデル、SDGsへの取組、DXへの対応等については共通するものが感じられた。
アパレル業界に根付く問題は、やはりコストを意識した大量生産・大量消費を前提としたビジネスモデルだと思う。
小体ではあるが、徐々にそれらとは異なる価値観を持った事業者が現れており、消費者サイドも考え方を多様化させる必要があるのだと思う。
頭ではわかっていても中々難しい問題なんだと、、、。
事例という形で業界の方々のメッセージが各種掲載されていた点は非常に印象的だった。