【感想・ネタバレ】星ちりばめたる旗のレビュー

あらすじ

日本人であることが、罪になる。祖母は、母は、そんな時代を生き抜いた――日本人というルーツに苦しめられた祖母、ルーツを捨てようとした母、そしてそのルーツに惹かれる私。アメリカ在住日系人家族の三世代を描く百年の物語。太平洋戦争を挟んでの日本とアメリカの姿、時代に翻弄されながらそこに生きる人々のアイデンティティのありようを描き出し、現在の世界に巻き起こる問題をも浮かび上がらせる骨太な感動作。

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山崎豊子さんの二つの祖国を思い出しました。

子どものころは、好奇心も手伝ってか、昭和時代のことを知りたいと思って様々な情報に触れるようにしていました。
が、大人になってからは祖国や世界の残酷な過去を知ることは恐ろしく、積極的な接触はできませんでした。

ただ、やはり思うことは、わたしたちにできる唯一のことは、歴史を知るということです。知らないことは幸せなことですが、真実が何なのか事実が何なのか、知ることから始めなければいけません。

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2023年08月30日

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読みごたえはすごいけれど読むのは苦痛ではない、そんな話だった。根底に「家族とはなにか」を考えさせられる、感じさせられる。

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2021年08月15日

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ネタバレ

小手鞠るい 3作品目。

明治初期、移民政策でUSAへ渡った幹三郎と写真花嫁・佳乃の太平洋戦争終戦までの物語。

物語は、ニューヨーク近代美術館、ジャスパー・ジョーンズの「旗」の場面で終わる。
この旗を掲げ、この旗を守るために、いったいどれほどの人間が命を落としたことだろう。星ちりばめたる旗の掲げる理念、理想、正義のために、どれほど多くのネイティブアメリカンが、メキシコ人が、太平洋戦争時には日本人が殺され、…。その続きに暇はない。

本当は、日本を追い出された移民(棄民)は、米国で所帯を持ち、定住し、できるならば「アメリカン・ドリーム」の実現を夢見るしかなかった。しかし、それが、子孫たちが日系移民の苦しい時代の最後の遺産を受け継ぐだけともしらないで。
きっと、「個人的な関係によって、人種差別も乗り越えられる」ハズだった。ただ、真珠湾攻撃が、反日感情を、強制収容に仕上げていったに過ぎない。移住にかけた燃える気持ちをすべてを奪い去って。戦争が、すべての人を理不尽な暴力にさらされていく。そして、民族に溜まる闇が牙を剥くチャンスを与え、集団の力となって噴出するとき、より弱い者に悲しい運命が訪れる。

星ちりばめたる旗、星条旗はずるい、と思う。星の意味するもの、個人一人ひとりの生き方から、コミュニティ、そして州へと広げている。同時に、光の速さの限界に紐づけて、理性の限界をも示している。
私たちの目にする星は、何万年も前に燃え尽きたもの。けれど儚さと同時に強いきらめきを放つ星は、一人ひとりの人生のようでもある。一瞬を生きていく力に。

明治初期の移民政策に関する書籍については、
南米移民:垣根 涼介 『ワイルド・ソウル』、北 杜夫『輝ける碧き空の下で』(未読)
写真花嫁:ジュリー オオツカ『屋根裏の仏さま』
カナダ移民:ジョイ・コガワ『失われた祖国』(未読)
頑張って、読み続けてみよう。

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2021年06月07日

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「この旗を掲げ、この旗を守るために、いったいどれほどの人間が命を落としたことだろう」
明治時代の棄民政策でアメリカに渡った幹三郎は、写真花嫁である佳乃を呼び寄せ、アメリカで家庭を築いていく。多くの子どもに恵まれ平和に暮らしていたが、真珠湾が攻撃され日本との戦争が始まる。幹三郎は危険人物として捕まり、家族も収容所に入れられ、日系二世である息子はアメリカ兵として戦争に参加する。
幹三郎の時代だけでなく、日系三世である孫のジュンコの現在も書かれている。
読むのが辛い部分も多かったけれど、読めて良かった。おすすめです。

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2018年03月08日

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アメリカ移民の三代に渡る記録.極貧から成り上がる強い意志と運.差別感情や戦争で翻弄されるも日本よりアメリカを選びとった人々の強い気持ち.そして母親の子供への愛,また子が母を思う気持ちに,せつなくなった.全体的に感情を抑えたさらりとした文章ながら,その言葉の背景に広がる壮絶な歴史をみせられていて,心にずっしりと響く物語だった.小手鞠氏の中で一番好きな小説になりました.

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2018年01月13日

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国を挙げて移民を奨励していた時代が日本にもあった。
今や難民や移民に冷たい国なのに。

アメリカに渡った3世代の物語。苦労してようやく手に入れたアメリカでの生活も真珠湾攻撃で激変していく。それまでも差別・排斥はあったけれど、それが露骨になっていく。どうして、戦争になると国というものに囚われてしまうのだろう。個人としてつき合ってきて、どういう人かがわかっている場合でさえも、敵対、排斥されていってしまう。本気でスパイだと思うのだろうか。本気で隔離しなくてはいけないと思うのだろうか。人は何のために戦うのだろう。どうして国のために人を殺したり、殺されたりしなくてはならないのだろう。

私たち人間は非常事態に直面すると、集団は排除の論理に呑みこまれてしまいがち。それを乗り越えていくことはできないのだろうか。どんな時も何があっても多様性を尊重し、認め合うことができるようになりたい。

3世代の女性が誰の話なのか、誰が誰に語っているのかが途中混乱してしまい、何度も読み返した。今、人に貸してしまって手元にないけれど、もう一度丁寧に読み返したい。

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2017年12月27日

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日系移民の3世代に亘る話。太平洋戦争時の日系人収容所の話が軸になるが、各世代の生き様、葛藤がよく描きこまれている。時代が飛び視点が飛んでも物語が破綻することなく、最後まで心地良い緊張感を保っている。。

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2017年12月25日

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再読。『二つの祖国』を読み、思い出して再度手に取りました。

アメリカンドリームを夢見た大原幹三郎とその妻佳乃から始まる日系人三世代の家族の話。
語り手は三世に当たるジュンコ。
母ハンナはアメリカ人として生き、子供達にもアメリカン人として生きることを望んでいたが、ジュンコだけは日本を焦がれ、日本人の心を求めていた。

『二つの祖国』ほど、アイデンティティに悩む人達の姿を感じることは無く、史実に基づいた実際にあった人種差別の、そして、母娘の話として読み進めていました。

戦争が生んだ更なる人種差別。
この歴史を知り、今後そんな不幸が起こることのないようにと願います。

二羽の鶴に有刺鉄線が絡まるブロンズ像、思わず画像を検索してしまいました。
こんな簡単なものでは無いはず…、は著者の言葉だと思いました。

教科書で学ぶことのなかった歴史です。
本との出会いで知れて良かった。
まだまだ知らなければならないことは、きっとたくさんあるのだと思っています。


2017.11.02 初読

3代に渡る日系アメリカ人家族の物語。

アメリカンドリームを夢見た日本人達がいた事は、無知の私は知りませんでした。
そして、第二次世界大戦中の、日系人の苦悩もまるで知りませんでした。
敵国の血を持つ者がどんな目に合うかは想像出来るようで、その域はきっと越えていることでしょう。
悲しいことです。

立場が違えば、戦争に対する見方も感じ方も変わります。
でも、誰も幸せではない。
戦争は、今後決して起こしてはいけない悲劇だと思います。
興味深く、とても素晴らしい本でした。
多くの人に読むべきものだと思います。

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2019年04月27日

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ネタバレ

ある一家の日系移民の3代にわたる苦難の歴史が綴られた物語。その中の言葉が心に沁みる。「何者でもない者として生まれてきた小さき者が、何者かになろうとして懸命に努力し、結局、何者にもなれないまま死んでいったとしても、その人が生きてきた時間は、決して無駄なものではないのです。それらの命は宇宙のかたすみで、一瞬であったかもしれないけれど、確かに輝きを放っていた星たちなのです。わたしたちはみな、流れ星と同じように、空に輝いたあと燃え尽きて、流れ落ちていくのです。その営みを、その儚い運命を、わたしは尊く美しいものだと思っています」

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2017年10月31日

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満洲国のことは日本史で学んだ。第二次世界大戦のことは毎夏、各メディアを通して目にしたり、耳にしたりして、それなりに少しは知っている。
が、いかにそれらの「知識」が薄っぺらいものだったかと思い知らされる。そもそも「知識」ですらないのかもしれない。

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2025年11月07日

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アメリカ在住の日系一世、二世、三世のファミリーヒストリーでした。三世代のことが交互に語られるので、始めは少し戸惑いましたが、徐々に時代ごとに話が進んでいることに慣れて、いつのまにか夢中になって読んでいました。

日系アメリカ人の方がどのように生きてきたのかを初めて知り、人種差別や戦争による苦労の連続に驚きました。

日本人というルーツに悩む祖母、捨てようとした母、興味をもつ娘の三世代の時の流れは、私が初めて知った日系日本人に起きていたことでした。

そのなかで夫婦の子どもへの思いの違いや、それぞれの子どもに対する母親としての思いの違いに、複雑な思いも感じとりました。

この本は、日系三世の娘が自分につながる全ての人に捧げたいと思い、紡がれた、壮大な物語でした。

読後は、星条旗の星一つ一つに生きた証のようなものを感じるようになりました。


〈目次〉
第1章 私たちはどこへ行くのか
第2章 私たちはどこから来たのか
第3章 私たちは何者なのか
第4章 星ちりばめたる旗のもと
第5章 私達は生きて死ぬ
第6章 何者でもない者として


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2025年08月09日

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小手毬さん作品は、あまり触れてこなかった。
ふと手に取ったこの作品がいかなる展開、ポリシー、作者のメッセージを持っているか感慨で胸が熱くなり、読後、しばし喧騒から解き放たれての思いにふけった。

山崎氏作品でも知られた日系2,3世の苦悩、強制収容所の実態、彼カノジョらのアイデンティティの揺らぎがここでも語られている。
戦後の生まれとはいえ、兄や姉から配給時代の話を聞くくらいで詳細は、このような作品を通じて知るだけ・・戦争は遠くなったといわれるゆえんだろうか、今では生き証人が激減している、

従軍し参戦した父は、ご多分に漏れず一言も語らず逝った。
子供、学生時代学んだ現代史は今思うと都合の良いような教育で伝えられていたと思える。
安保闘争、首脳外交、国会論議・・して改憲が叫ばれ
、パワーポリティックスを思うと、何が正解なのか読めない。
ただ思うのは【平和は勝ち取るものでも、声なき民をそっかに置くものでもない。ただ、無能無策の元で棚ぼたで得られるものではない】ということ。

最近頻回に見る東欧、北欧の映画。かつて見聞きしてきた欧米の価値観が近視眼的であったことを今更ながら気づかされる。

作品に出てくる「何者でもないものとして生まれてきた小さき者が、何者かになろうとし懸命に努力し、結局何者にもなれないまま死んでいったとしても、その人が生きてきた時間は、決して無駄なものではないのです…一瞬であったかもしれないけれど、確かに輝きを放っていた星なのです。・・その営みを、その儚い運命を、私は尊く美しいものだと思っています」に作者の想いが収れんされていると嚙み締めた。

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2023年06月17日

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114藤原ていさんの作品を彷彿とさせる世代を超えた物語。こういう歴史を教えない教育とはなんだろう。時系列が前後しないもので読んで見たい。

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2019年10月04日

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ネタバレ

米国で物語が進んでいくのですが、やはり戦争物…ツライ、辛すぎる物語でした。
日本だけじゃなくて、アメリカでも中国でも人々が被った戦争の悲惨さは変わらないんですね。日系アメリカ人という視点でみるとそこに人種差別が絡んできているので、更に理不尽さが加わり、やるせない気持ちになりました。
日系アメリカ人の過去にそんな辛い物語があるなんて全然知りませんでした。

あと、メインは戦争下でのおはなしですが、その裏にある親娘の複雑な関係性が描かれていたように思います。愛したいけど愛せない関係もある。戦争と同じくらい暗くて怖い。

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2018年12月24日

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ネタバレ

これまで読んだこの作家の作品の中では一番良かった。
子ども向けの本も書いている作家だが、これは大人向け。
1904年に岡山から移民してきた一世の幹三郎から、その孫のジュンコまで語り手を変えながら、日系人一家の戦前から現在までを綴る作品。
差別され苦労を重ねながらもアメリカ社会に溶け込み財を築いて、家族を増やした一世の努力を全て奪った戦争。
長男は真珠湾攻撃の直後、アメリカ人の集団に暴行され、家族は全財産を奪われ収容所へ。ノーノーボーイにはならなかった次男は戦死。
戦後から現在までも描かれるが、圧倒的に力を入れて描かれるのは、戦前の家族の姿で、それだけに奪われたものの大きさがリアルに伝わる。
もちろん政治的な内容もあるが、日系人一家の、写真花嫁として幹三郎と結婚した佳乃、その娘のハンナ、ハンナの娘のジュンコが主な語り手であるため、イデオロギーより感情が表現としてさきにあるので、共感できる。
日系人強制収容の小説はたくさんあるが、読むべきものの一つだと思う。

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2018年03月18日

Posted by ブクログ

太平洋戦争時に多くの日系人がアメリカの捕虜となった。
ぼんやりとした知識は持っているけれど、詳しくは知らないし、この史実をもとにした小説や映画もまったく触れた事はない。

戦後70年を超え、徐々に戦争が風化している。
戦争からたった30年しかたっていない頃に生まれた私でさえ、戦争についての知識は乏しい。もう平成も終わるこの日本にあって、今の若者たちの戦争への意識はどんなものなのか。

改憲に向けての流れは変えられないのかもしれない。
9条の重みは薄れ、自国は自国で守るべきなのかもしれない。
でもその前に知らないといけない。
日本が最後に戦ったあの戦争で何が起こったのか。
日本で、アメリカで、中国で、マリアナ諸島で、マレーシアで。
知識こそ一番の武器だ。

この本には日系人が戦時下において、どれほどの辛酸をなめたのかが描かれている。
小手鞠るいさん、書いてくれてありがとう。
私に知識をもたらしてくれてありがとう。
アメリカ在住の作家さんならではの切り口で、日系人のリアルな生活感が伝わってきて良かった。

作品によってだいぶ評価が乱高下してしまうけれど、「アップルソング」やこの作品のようリアリティのある作品の方が性に合ってる気がする・・・。

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2018年02月01日

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