【感想・ネタバレ】夏の終り(新潮文庫)のレビュー

あらすじ

妻子ある不遇な作家との八年に及ぶ愛の生活に疲れ果て、年下の男との激しい愛欲にも満たされぬ女、知子……彼女は泥沼のような生活にあえぎ、女の業に苦悩しながら、一途に独自の愛を生きてゆく。新鮮な感覚と大胆な手法を駆使した、女流文学賞受賞作の「夏の終り」をはじめとする「あふれるもの」「みれん」「花冷え」「雉子」の連作5篇を収録。著者の原点となった私小説集である。

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Posted by ブクログ

ネタバレ

もともと映画版がかなり好きで、原作を買ってしばらく積読していたがようやく先月読んでみた。

登場人物がみんなクズすぎて最高に素晴らしい!(ほめてます)特に知子の年下の恋人涼太はめっちゃイイ。すごいわたし好みの甘えん坊系クズで身を持ち崩している雰囲気がたまらない。私の母性本能がバグを起こしている。源氏物語では匂宮が好きだと言っていた晴美ちゃん(!?)。どうにも他人とは思えない男の趣味に、お互い女学生だったらお友達になりたいくらいだ(大先生にすみません)。

ついふざけたことを書いてしまったが、この連作集に登場する人々は、すべてを曖昧にしてズルズルと流されながらも寛容にその身に受け入れ、受け流してゆく。令和の日本にはこれほどの「寛容力」はないと思うのでそういう意味ではたしかに旧い時代の物語にはちがいないのだが、なぜか普遍的な男女関係のしがらみがあり、グイグイ読まされる。手紙でしか登場しない慎吾の妻の存在感が胸に響く。

文章も美しく、夏の花のようないさぎよい余韻とおおどかさがある。大好きな恋愛小説。映画版もすごく良いので観ていただきたい。

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2021年09月13日

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