あらすじ
著者自らが書いたベストセラー絵本の小説版!嵐の夜、仲間からはぐれて逃げ込んだ小屋で、オオカミのガブとヤギのメイは出会う。暗闇の中、2匹はお互いの姿を見ることもなく、夜通し語り合い、心を通じ合わせる。「嵐の夜に」の合言葉を決めて、翌日、会うことになった2匹だったが、白昼の下、自分たちが「食うものと食われるもの」であることを知る。それでも魅かれ合うガブとメイだったが、天敵同士のオオカミとヤギの群れは2匹に非情な命令を下すのだった。300万部のベストセラー絵本の著者が、新しいエピソード、異なる結末で描いた小説。「この小説だけに、本当のラストが書かれている」(著者)
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Posted by ブクログ
絵本版を全て読み終わったあとで、「この小説だけに、本当のラストが書かれている」との著者のコメントを読んで気になって読んでみた小説版。
そもそもの絵本版の原作が「何故このような深い話を絵本で出版してしまったのか……?」と首を傾げるような子供向きとは思えない内容だったし、あとがきで著者が媒体に合った表現がある、と記している通り小説版は小説ならではの描写の豊かさで、絵本では省かれていた部分も丁寧に拾い上げている印象。スピンオフの絵本で語られた設定も本編中で反映されていて、個人的にはこの小説版が完全版だと思う。
賛否両論あったという絵本版のラストだけれど、私は7巻は蛇足に見えてしまってハッピーエンドとは受け取れないタイプの読者。だけど小説版で付け加えられたエピローグを見たらすとんと腑に落ちてしまった。ふたりがようやく再会して、これから幸せな時間が始まるよとはとても思えなかったので、悲しい結末ではあるけれど私は少し安心してしまった。短いエピローグだけどあの場面が語られる媒体があってよかった。
Posted by ブクログ
あらしの夜出会ったヤギとオオカミの友情物語。
オオカミにとってヤギは「白くてふわふわした美味しそうなもの」でしかない。
ヤギにとってのオオカミは野蛮で自分たちを食べる天敵。
そんな二匹 ”オオカミのガブとヤギのメイ” が嵐の吹きすさぶ夜に避難することになった小屋でお互いの姿が見えない中、何の先入観もないまま、ただ会話から相手が自分と同類と信じ再び会う約束することから物語は始まる。
ガブが目の前のメイを「おいしそう」と感じながらも常に友情を感じ、愛しく思う。「ヤギなんて食べたことがない」と言い張り、追手を逃れて逃避行?の途中ではメイに見つからないよう夜中にネズミを食べに出て空腹を満たすところなんか、その言動ゆえ彼を愛しく感じてしまう。
人間の世界でも、自分と何か違う、見た目が違う、違和感がある等、さまざまな思い込みで摩擦が起こりうる。知り合った時・場所で相手に対する態度に差別がおこる。
最初から異質なものとして出会ったら友情が生まれがたい。
この物語の、オオカミとヤギの関係はそういう事とは真逆で、先入観なしの出会いから「知りあえて良かった」になるまで、ただ相手にひたむきに向き合ってよく知ることで生まれる友情というものが伝わってきた。
オオカミだからって臆病だっていいし、「食べられるかも」と心配しながら隙をみせずに虚勢をはってオオカミを味方につけるヤギがいてもいい。
決められた役割を果たさなくても、分かり合える友達がいれば幸せなのだと言うことか。
森
最初は,なんて可愛らしいお話なんだろうと思って読み進めた。
ヤギのメイはもちろんのこと,オオカミのガブも素直で優しくて愛おしい。
それなのに,読了後はただただ切ない。
唖然としてしまった。
二人は幸せなまま死んだ。
命をかけなければ,成し遂げられない愛だった。
一緒になるには,命を燃やし尽くさないといけなかった。
せっかく緑の森にたどり着いたのに。
ずっとずっと待ち続けていたメイ。
共に満月へ行くことを選んだガブ。
どんな形であっても,一緒じゃないと,意味がないんだね。
Posted by ブクログ
これまで、なんとなくタイトルは聞いたことはあったけれど、内容の詳細は知らず、今回機会があったので手にしました。
もとが絵本だったということもあり、最初は内容に入り込めず、なかなか読み進めることができなかったのですが、ヤギとオオカミそれぞれの群れに、秘密がばれたあたりから、お話にひきつけられて、最後まで一気に読んでしまいました。
種族を超えた、ましてや肉食動物と草食動物の友情(愛情?)は、もどかしさと辛さ以上に喜びがあって、良かったです。
あとがきで、この物語の真のラストは絵本や映画にはなく、小説版だけ、とのことでしたが、最後はなるほど、らしい終わり方に思えました。