あらすじ
トナカイ所有者殺害の前日、カウトケイノの博物館から世界的に貴重なサーミの太鼓が盗まれるという事件が起きていた。実は殺された男は数少ないサーミの太鼓のつくり手でもあった。二つの事件に関連はあるのか。クレメットとニーナは盗まれた太鼓のルートをたどる。寄付主はかつてフランス人探検家がこの地を訪れた際に同行して、サーミ人のガイドから件(くだん)の太鼓をもらったというのだ。七十年以上前のその探検では、ひとりの隊員が亡くなっていた。一年の内四十日間太陽が昇らない極北の地で、トナカイ警察コンビが悲しみに満ちた事件の真相に迫る。
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Posted by ブクログ
(上巻より)
とにかく、その生活や文化に目を奪われて、
殺人と盗難の謎の方がどうもおろそかになる。
ヨイクの名手クレメットの叔父とか、
癖の強い地質学者とか、
いかにもやられるために登場した若い地質学者とか、
登場人物も多いし。
特に後半は、金鉱探しと復讐の攻防がメインになって、
事件のことは忘れがちになってしまった。
一応事件は解決して、
クレメットと北極圏の夜に消えたアクラスの関係もわかったが、
ニーナにパリで何があったのかとか、
二人の過去が気になる。
Posted by ブクログ
広大な自然とそこに秘め備えられた資源がもたらす可能性に吸い寄せられる人間の強欲。
その対立に揉まれつつルールの中で正しき方へ進もうとする体制側の人間。
読んでいくうちに思った。
この構図は北欧版ジョー・ピケット(by C・J・ボックス)。
ただ、ジョーほどには惹き寄せ力が薄いのが残念な主人公クレメット。
外から見える姿はサーミの血を誇りに、かつての頼りなさを都会での経験値を積むことで払拭し、サプミの地に凱旋。毅然と職務に邁進する男。
その実内面には女性に対するトラウマとの折り合いつけられなさが溢れかえっていて、よく言えばリアル、悪く言うと幻滅。
ジョーにも似たようなとこはあるけど、一本通った芯がある。それがあまり感じられなかったのが惜しいところ。
さて、物語の方は盗まれた太鼓の所在が明らかになってからは冒険色強め。
太鼓に描かれたシンボルの解釈をめぐり広げられる想像の翼は、「幻の地を求めて」的な話が好きな人には堪らないのかもしれない。
割と序盤の方からオープンにされる黒幕がどんな意外な関係性を秘めているのかと期待したが、うーん。
40日間の影のない期間からの次第に長くなる日照時間も序盤こそ雰囲気作りに寄与したが、全体としてそこまで象徴性を発揮できていないような気が。
少し前の作品かと思っていたら2021年発刊で意外と最近の作品だった。
しかも北欧の地を舞台にはしているが、フランスの作家さんとのことで驚きでもあり、あーなるほどでもある。
次作は白夜を扱った作品とのこと。