あらすじ
アメリカの8人の高校生が、広島・長崎に落とされた原子爆弾の是非をディベートする。肯定派、否定派、それぞれのメンバーは、日系アメリカ人のメイ(主人公)をはじめ、アイルランド系、中国系、ユダヤ系、アフリカ系と、そのルーツはさまざまだ。日系アメリカ人のメイは、原子爆弾否定派として、演壇に立つことになる。はたして、どのような議論がくりひろげられるのか。そして、勝敗の行方は?
原子爆弾や戦争を体験していない現代に生きるあらゆる出自の十代が、それぞれに抱く考え方の違い。今後の世界を生きていく若者たちに考えてほしい、議論してほしいテーマを扱った、日本人作家による、YAジャンルのあたらしい試みともいえる作品。
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Posted by ブクログ
アメリカの高校生8人による、原爆に関する討論。
とても臨場感のある文章で、目の前で実際に討論が行われているかのような気持ちになる。
そして、原爆がどうして起きてしまったのか、どうするべきだったのか、という中心的な問いに加え、人種のあるべき形や日本語の豊かさもよく考えさせられる一冊だった。また、自身の考えの偏りも強く感じた。
初読は小学生。なんの知識も持たず、ただ表紙に惹かれて取ったが、否定派に強く共感し肯定派に腹を立てた記憶がある。原爆に至ったその経緯も知らないのに、「原爆を肯定する」という言葉に酷く嫌悪感を覚えた。今思い返すと、日本を教育を受けていることで考えが偏っていると改めて考えさせられる。
また、アメリカに住む日本人と、日系アメリカ人。似たような境遇でありながら日本とアメリカどちらに気持ちを寄せるのかという点も読んでいて面白い。何系であっても、何人であっても、その生まれに考えは直結しないのだと思う。
言語の違いに言及される箇所もまた面白い。
「あやまちは二度と繰り返しません」
日本人ならば聞いたことくらいはあるだろうこの言葉の、主語は何なのか。you でも I でもない、全て。その選択が出来る日本語という言語の奥深さに、感動した。
中々に浅く、感じたこと全てを伝えられない自分の語彙に悔しさを感じる。それでも、小学生の頃から、何度も読み返し何度も感想文を書いてきた私のお気に入りの一冊だ。小学生でも読み切れる内容であったので、高校生の今、本を読み慣れていれば1日もあれば読み切れるだろう。
是非、人生で一度は手に取ってほしい。