【感想・ネタバレ】有栖川有栖選 必読! Selection9 後ろ姿の聖像 もしもお前が振り向いたらのレビュー

あらすじ

真夏の工場駐車場で絞殺された元女性歌手。発表前の歌謡曲「そのとき」の盗作を巡る八年前の殺人事件の目撃者であったことから、出所したばかりの犯人・沖圭一郎に容疑が。しかし沖は、鉄壁のアリバイを隠し、あえて脆弱な嘘で自らを冤罪を課そうとする。登場人物の奇妙な行動の謎がすべて一曲の歌詞へと収束していく、逆説的な二重アリバイの離れ業。作家生活二十年目の野心作! ドキュメント風の冒頭部から、落涙必至の結末まで、謎と不運に翻弄されながら一つの信念を貫く魂の遍歴。超技巧のミステリ。(トクマの特選!)

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Posted by ブクログ

ネタバレ

● 感想
 物語は,製パン工場の駐車場で他殺死体が発見されるところから始まる。被害者はバーを経営する十津川英子。荒巻部長刑事と,自分より年下で階級が上の御影警部補のコンビが,容疑者のアリバイ崩しに挑む。
 荒巻は,8年前に有名作曲家・船田元を殺害した罪で服役し,出所したばかりの沖圭一郎に目を付ける。沖は,当時マネージャーを務めていた女優・伊吹マリ(現在は議員・中丸大樹の妻,中丸マリ)の事件で人生を狂わされていた。
 御影が50万円の宝くじをなくして気にしていること,英子が電話魔だったことは,どちらも終盤につながる伏線である。
 荒巻は聞き込みから,殺害直前,英子のもとへ「沖さん」から電話が掛かってきたことを突き止める。さらに,沖が九州で起きた「犬と猫の喧嘩から人間同士の喧嘩に発展した珍事件」を利用してアリバイを作っていたことも暴く。当時なら新聞にも載らないような珍事件を知る方法は限られており,電話で聞いていたことを聞き込みで証明し,アリバイを崩す展開はなかなか面白い。
 追い詰められた沖は,新たに中丸マリと会っていたというアリバイを主張する。しかし,マリはそれを否定し,沖は踏切へ飛び込み自殺する。
 ここまでは,「復讐のために英子を殺害した沖が,アリバイを偽装し,自殺した」という事件に見える。しかし,実は沖には北海道で音楽学院理事長と会っていたという完璧なアリバイがあった。なぜ沖は,本当のアリバイを主張せず,自ら偽のアリバイを作って死んだのか。この謎が本作最大の魅力である。
 再捜査では,共同経営者・砂川や愛人・大出のアリバイが成立していく一方,御影は電話魔だった英子が電話番号帳を持っていなかったことに違和感を覚える。また,沖が出所後に誰かと結婚しようとしていたことも判明する。
 真相は,船田殺しの真犯人は沖ではなく,中丸マリだったというもの。沖はマリを庇って8年間服役し,出所後もなおマリを信じていた。だから,自分が殺人容疑者になったことを利用し,最後にマリが自分のために嘘をついてくれるかを命懸けで試したのである。しかし,マリは沖を切り捨て,夫・中丸大樹を守ることを選んだ。
 ここで,英子が最後に口にした「沖さん」という言葉も回収される。御影が宝くじの「50万円」を「五十万円」→「おおきさん」と言い換えたことから,「沖さん」ではなく「大樹さん」だったことに気付く。この伏線回収はきれいだった。
 英子は,マリが船田殺しの真犯人であることを知り,中丸大樹を恐喝しようとして殺害された。最後まで沖の犠牲を何とも思わないマリの冷淡さは,笹沢左保作品らしい女性像である。
 有栖川有栖は,本作を「捜査陣にも読者にもトリックを仕掛けた作品」と高く評価している。しかし,個人的にはそこまでのサプライズは感じなかった。
 沖にアリバイがある以上,沖は真犯人ではない。そして沖が庇う相手も,自然に考えれば中丸マリしかいない。真相は十分納得できるが,「やられた」と感じる意外性まではなかった。
 とはいえ,「なぜ真アリバイを捨て,偽アリバイを作って自殺したのか」という謎は魅力的で,最後まで読ませる力がある。ミステリとしての意外性よりも,沖圭一郎の悲劇と,中丸マリの冷酷さが強く印象に残る作品だった。★3。

● サプライズ ★☆☆☆☆
 沖が真犯人でないことは早い段階で読める。沖が庇う相手も中丸マリしか考えられず,真相は納得できるが意外性は薄い。
● 熱中度 ★★★☆☆
 笹沢左保らしく,小説としての読みやすさは高い。ページをめくる手が止まらないほどではないが,最後まで自然と読ませる。
● 納得度 ★★★★☆
 電話魔という伏線から「沖さん」→「大樹さん」へつながる流れはきれい。沖を裏切る中丸マリの心理にも,現実的な説得力がある。
● 読後感 ★☆☆☆☆
 沖圭一郎の立場で読むと,非常にやるせない。
● インパクト ★☆☆☆☆
 前半の珍事件の存在を前提としたアリバイは少しバカミス的。有栖川有栖が評価する「読者へのトリック」は,個人的にはあまり強く感じなかった。
● 偏愛度 ★☆☆☆☆
 笹沢左保作品らしい,冷淡で現実的な女性像が印象的。しかし,それだけに好きにはなれない作品でもあった。

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2023年05月20日

Posted by ブクログ

ネタバレ

どこか懐かしい感じがする物語に一気読みでした。
アリバイ崩しがメインかと思いきや、全く違う展開で、最後に明かされた過去には驚きました。

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2023年03月31日

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