あらすじ
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大阪で曽祖父の代から続くワイナリーを営み、発展させてきた母が亡くなった。美しく優秀な母を目標にしてきた姉の光実と、逃げてばかりの人生を送ってきた弟の歩は、家業を継ぐ決意をする。うつくしい四季の巡りの中、ワインづくりを通し、自らの生き方を見つめ直していく双子の物語。
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Posted by ブクログ
すごい良かった。
ワインができるまでにはたくさんの苦悩があること、害虫や台風がもたらす影響、暑さや寒さと葛藤しながらの作業、本当に大変だと思った。
歩が自分の思いを日野さんにまっすぐに伝えた場面や、光実が日野さんに書いた手紙、結婚式での祖父のボイスレコーダーの言葉に感動した。葡萄の蔓と葉のウェディングボードが素敵。
Posted by ブクログ
双子の関係がよかった。
じいちゃんの存在感もよかった。
読んでいて心地よい成長譚でもあった。
最後の手紙の喩えにはっとした。
最近、手紙について考えることがよくあった。
手紙のように、時間をかけて熟成する関係を大切にしたい。
Posted by ブクログ
ワイン農園で働く双子の姉弟。母の意思を守ろうとする姉と特にワインに興味があるわけでもない弟。この2人の違いがいい。自然を相手にし、うまくいくこと。いかないこと。どうしようもできない出来事。そういうことを繰り返しながらワインを作り、自分の立ち位置を見つめる2人。1人で背負いこむ姉と1人ではまだまだな弟。でも近くに誰かがいるという救い。苦しくなる時、逃げ出したくなる時にそういう存在がいることの心強さ。たくさんの工程を経て熟成して作られるワインのように、たくさんの人と出逢い、感情を知ってその人の味が作られ年々深くなっていく。新しいことを始めるワクワクと恐怖。でもその先にあると信じるもの。さまざまな想いが溢れ作られるワインはとても魅力的に思える一冊。2人のおじいちゃんが仕掛けるしょうもないイタズラとそのときのおじいちゃんの嬉しそうな顔が好き。
Posted by ブクログ
ワイン好きなので、ワイナリーが舞台というだけでとても楽しく、興味深く読んだ。葡萄の棚が続く丘を思い浮かべるとそれだけで気持ちが清々する。
親子や兄弟間の思いやり合い・葛藤などは、どこの家庭でもあるような問題ではあるけれど、家族経営の会社などはそういう問題がより濃く出るのかもしれない。
とにかく、できることや、やらなければならないことをひたすら続けること。進むこと。そういうことが大切なのかなと思う。
「嫌なことからも面倒なことからも、逃げ続けることはできません。受け止めるしかない。怖がって目逸らしたらあかん。逸らしてたら身体のどこにぶつかってくるかわからん。大怪我するからな。しっかり目開けてみろ。よう見て、しっかり受けとめて、いろんな角度から観察してみなさい。正体がわかったら、あとは叩き潰すなり、よそに放り投げるなり、煮て食うなり焼いて食うなり、好きにしなさい。
(略)
ふたりでも受け止められへん場合は、今日のことを思い出しなさい。そこにいる人たちのことを。お前たちのためにどれだけの人が集まってくれたか。どれだけの人が力を貸してくれたか。ひとりっきりでもないし、ふたりっきりでもありません。お前たちは。」333〜334頁
それともう2つ…共感したり、心に残ったりしたところ:
1.歩くんが日野さんに果敢に交渉にいくところ(217頁辺り)。日本は仕事の仕方が属人的すぎると私もよく感じる。「他の人が真似できない至高の技を持つ職人」が尊敬されるのはわかるけれど… 特に企業は組織で動いている以上属人的すぎるのは良くないと思うのだけれど、意外とまだそういう仕組みで動いている会社が多いように思う。
2.あずみちゃんと彼女の母親との関係についての歩くんの考え方「自分の母親にこういう問題点がある、と把握することは、自分の母親を否定することとはちがう。それは、わけて考えた方がいい。」(265頁)
上から目線の言い方になってしまうかもしれないけれど、日本人って「こうと決めた以上は全てを呑み込んで突き進むべき」みたいな潔癖な考え方をする人が多いような気がする。もう少し割り切って柔軟に考えてもいいんじゃないかと思う。
寺地さんとは同年代。田辺聖子さんが好きなのも同じ。読んでいて違和感やストレスを感じないので、たいへん読みやすい。