あらすじ
「喋々喃々」=男女が楽しげに小声で語り合うさま。東京・谷中の小さなアンティークきもの店を営む栞。ある日店に父親に似た声をした男性客が訪れる――少しずつふくらむ恋心や家族との葛藤が、季節の移ろいやおいしいものの描写を交え丁寧に描かれる。
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Posted by ブクログ
物語の中に、四季や日本文化を感じられる。
文章がきれいで、サクサク読むのはもったいなくて、じっくり読みたくなる本だった。
恋愛も周囲の人たちとの関係も大人っぽくて、おそらく私より若い主人公なのに、生きる世界の違いを感じた。
Posted by ブクログ
やっぱり小川糸さんの本は優しくて暖かい。
どの物語も主人公に深い闇の部分があるけど、それでも文章のやわらかさや心情の表現が私たち読み手をほっこりとした気持ちにさせてくれる。
今回は不倫のお話だったけど、不安になったりその不安を超えるほど好きという感情が溢れて制御できてない感じが、なんだかすごく人間臭くてリアルでよかった。
Posted by ブクログ
読み終わった感は、「よかった、、、」
私は考え過ぎる。未来のこと。他人のこと。正しい、正しくない。
そしていつも身動きができなくなる。後悔する。羨む。
そんな私を真っ白にさせてくれるような本だった。
今その瞬間を生きること。人生はその繰り返し。
悔しいこともあるだろう。大恥もかくだろう。でもそれが生きてるってことじゃないか?
私にとっての正しいは、他人にとって正しくない。でも私にとっての正しくないは、他人にとって正しい。正しい、正しくないって、何?
他人に何を言われても、私の価値はいつも同じ。だから自分に嘘をつかない。
何億人という人、その1人1人が、大変に生きてる。仕事のあの人も。スーパーのあの人も。あなたも私も、お疲れ様。
一期一会。いいなと思った人、いつまでもいるわけじゃない。おいしいものを一緒に食べたい。話したい。一緒に何かしたい。
世界は人だけじゃない。でも、人がいたから今この生活ができてる。物や伝統の意味。人は何を願ってきたのか?
Posted by ブクログ
舞台とは全く違う地域に住んでいる私ですが、読み終わる頃にはまるでそこに住んでいたかのように感じられる作品です。季節の描写がとても美しい。小川糸さんの作品といったら食事の描写と思ってまして、主人公が季節にぴったりな料理を恋人とお店で食べる描写は羨ましく、とても素敵でした。
全てが素敵で気持ちがいいといったらそうでもないです。家庭持ちなら私の感想を見てよくそんなことが言えると言いたくなるかもしれない。
世間では許されない関係を肯定するつもりはないが、この世界観で主人公とキリンさんの2人はとても美しい。映像化はされてないが頭の中にくっきりと残っています。
私はこの作品が大好きです。
Posted by ブクログ
読むのは2回目と知りながら読んだ。たたずまいのキチンとした暮らしをする主人公の、止められない恋心がひしひしと迫ってくる。苦しさも、キラキラした喜びも。何回でも読みたい。
Posted by ブクログ
不倫話は苦手分野なのですが
こんなに優しい温かい話にできるのは
本当にすごいなあと感じました
恋愛の奥ゆかしさと純粋さが
芯から染み渡るようなお話です
四季折々の日本の文化や食べ物
着物を通して四季の移り変わりを感じられる
日本人にとって忘れてはならないものを
記していただいた作品だと思いました
最後は詳しく言及されていないですが
私の希望としては、何にも咎められることなく
2人が幸せに過ごせる結末だといいなと
強く思いました
Posted by ブクログ
お正月から大晦日までの季節に、
一つの純愛と季節の食事や文化を大切にしている生き方が背筋をしゃんとさせる。
生活のなかの小さな音、空気、とても綺麗でたまらない
少しずつ大切に読めました。
心が豊かになった〜〜
舞台になった谷根千もまたふらっと遊びにいこう
Posted by ブクログ
小川糸さんの作品は登場人物の生活を覗き見るような感じで粛々と進んでいくものが多い気がする。
このお話しの中心の一つでもある和服などもイメージがもくもくと湧いてくる。
舞台でもある根津あたりに行ってみたくなった。
Posted by ブクログ
テーマが不倫・純愛のため、受け入れられない人はいると思います。
ただ、この作品は、人が人を愛する純粋な気持ちがクローズアップされているので、ドロドロした感じは一切ありません。
それどころか、読み終わった後に二人の幸せを願わずにはいられませんでした。
障害は多いとは思いますが、それを乗り越えてこその幸せもあると思います。
もちろん不倫はダメなので、全てを清算してからの幸せですけどね。
小川さんの作品は、やっぱり季節や食べ物、人の心情の表現が、優しくて素敵です。
長編ではありますが、疲れることなく一気に読めました。
Posted by ブクログ
世界観を掴むのにかなり時間がかかりましたが、掴んでしまえば割とのほほんとしていて、久々に穏やかな気持ちで本を読めました。栞ちゃんしたらぜーんぜんのほほんとしていない物語、というのは承知ですが……。
大雑把にいうと不倫話なわけですし、読んでいる間も「でも春一郎さんこれ不倫してるってことだもんな……」というのは抜けませんでしたが、それでも世の燃え上がるようなどろっどろの不倫を描くわけでなく、純度高めな恋愛話として描かれているのが印象的でした。
Posted by ブクログ
春一郎さんと栞、二人の食事の場面が美味しそうだった。春一郎さん妻子持ち?なのに栞に優しすぎ。栞は自分の気持ちに嘘をついて辛いしかわいそうになった。でも再会した二人に新たな進展がありそうな終わり方だったのが良かった!
Posted by ブクログ
アンティーク着物店を営む主人公とその家族やお店に訪れる人たちとの日々のあたたかいやりとりや恋愛模様が東京の下町を舞台にして描かれていました。
落ち着いた丁寧な生活とおいしいものたち、
日本の四季の美しい描写、
ご近所さんとの何気ない日常のやりとりが
今回はアンティーク着物店を中心にして物語は進んでいきました。
ここにも、何とも愛しにくいパンクな態度のお母さんが登場するのがなんか泣けました。
最後のページに地図が載っていて、物語にでてきたお店や主人公が待ち合わせした場所がかかれていて、実際に巡ってみたくなりました
Posted by ブクログ
どんなに綺麗に描かれても不倫ってだけでどうしても嫌悪感を抱いてしまうのだけど、なんだかんだ最後まで一気に読んでしまった。
とにかく日々の描写が美しい。
でも春一郎さんみたいな優しいと見せかけた狡い男には痛い目をみてほしかった。
Posted by ブクログ
谷中界隈に行きたくなる。
とても透き通っている主人公なのだけど、春一郎さんとの関係も、その気持ちもわかるのだけども、、、
んー、なんだかもやもやが残る話。
Posted by ブクログ
あなたは、季節の移ろいを何に感じるでしょうか?
私たちは四季が存在する国に暮らしています。”春はあけぼの。やうやう白くなりゆく山ぎは、すこしあかりて…”と平安の世にも歌われる季節の美しさは、四季を当たり前に感じられる私たち日本人だからこそのものだと思います。
とは言え、昨今の異常気象がそんなこの国のありようを変化させていく気配を見せています。四季がない日本、それは過去の日本人のこころに繋がれなくなってしまう未来を暗示しているようにも感じます。四季を愛でられなくなる日常、それはあまりにも味気ない毎日なのではないかと思います。
さてここに、12の章に日本の四季の移り変わりを色濃く感じさせる物語があります。『東京の下町の風情を残す谷中という町で、アンティークのきものを売って暮らしている』という主人公の一年が描かれるこの作品。そんな一年の始まりに出会った一人の男性への思いが描かれるこの作品。そしてそれは、四季の移り変わりとともに、主人公の感情の変化を映し取っていく物語です。
『何か、お探しですか?』と、『きものの入っている棚の前で立ち止まり、遠慮がちに数箇所、指先できものの生地に触れた』男性に声をかけたのは主人公の横山栞(よこやま しおり)。『えーっと、きものを探してまして』、『男物は、置いてありますか?』と訊く男性に『男性用のおきものでしたら、あちらです』と案内する栞。『東京の下町の風情を残す谷中という町で、アンティークのきものを売って暮らしている』という栞は、『三軒長屋で、一階は店舗、二階は住居として使っている』店に『ひめまつ屋』という名前をつけました。『縁もゆかりもない土地にとつぜん店を構えて、ゼロからのスタートだった』という栞ですが、『親切な町の人』たちにも支えられながら今日までやってきました。『実は、初釜に着て行くきものを探してまして』と言う男性に、『丹後ちりめん』の『状態のよいの』を見つけた栞は、男性に羽織らせてあげます。『とってもお似合いですね。素敵です』、『着たことがないので、ちょっと照れますね』と会話する中に男性の『携帯電話がブルブル震え』ます。一旦外に出た男性は『緊急で仕事を確認しないといけなくなっ』た旨説明します。それに、『もしよかったら、ここの机使ってください』と勧める栞に、机にノートパソコンを広げて向きあう男性。『一時間ほどして仕事を終えた男性に『これね、五智果っていう、近所の和菓子屋さんのお菓子なんですよ』と勧める栞は一緒の時間を過ごします。そして、『なんとか間に合うよう、直しに出してみますね』と伝え男性を見送りました。『キノシタハルイチロウさん』という名を『心に刻』んだ栞は、『「木ノ下春一郎」と今度は漢字で書いて記憶』します。『左手の薬指に結婚指輪をはめている人だった』という木ノ下。場面は変わり、『初釜があるという日の前日』に『きものを取りに来た』木ノ下を駅まで送ることになった栞は、『夕暮れの空が広がる』街を一緒に歩きます。『いつもきものなんですか?』と問われ、『きものを着ていると、それだけで守られている感じがするんですよね』と返す栞。そんな『きもの』に興味を抱く木ノ下に、『アンティークきもの』の仕入れなどについて会話を弾ませる栞。そして、『目の前に延びる跨線橋をまっすぐに進』んだ栞が、『跨線橋の中ほどで』、『いつものように過ぎ行く電車を見下ろ』すと、『待ってください』と、『すごい勢いで駆け寄って来』た木ノ下に『後ろから左腕を掴まれ』ます。『僕、高い所が駄目で』という木ノ下に向き合う栞は、『力強く摑まれている手の上にそっと自分の右手を重ね合わせ』、『手と手を繫』ぎます。『目をつぶって歩いてください。私が向こうまでご案内します』と言う栞は『目をぎゅっと閉じ』た木ノ下を率いて橋を渡り終え『もう目を開けて平気ですよ』と告げます。それに『助かりました。お恥ずかしい姿をお見せしちゃって…』と『こういう場所がダメ』な理由を説明する木ノ下は『ありがとうございました』と言うと『何度も振り返ってお辞儀をしながら、人ごみの中に消えて行』きました。『たくさんの人が行き交うのに、木ノ下さんのいる場所だけが、ぽっかりと陽だまりのように浮かび上がっていた』と感じる栞。そんな栞が、木ノ下との時間を大切に思う一年が描かれていきます。
“東京・谷中でアンティークきもの店を営む栞。ある日店に父親に似た声をした男性客が訪れる ー 少しずつふくらむ恋心や家族との葛藤が、季節の移ろいやおいしいものの描写を交え丁寧に描かれる”と内容紹介にうたわれるこの作品。「喋々喃々」という書名がなんて読むの?とまず疑問から始まるこの作品は”ちょうちょうなんなん”と読み、その意味は”男女が楽しげに小声で語り合うさま”を指すのだそうです。2009年2月に発表されたこの作品は小川糸さんの二作目の小説ですが、読み始めてその先に代表作「ツバキ文具店」にも繋がっていくなんとも味わいのある表現の連続に驚きました。小川糸さんの小説はほぼコンプリートした私ですがもっと早くに読んでおいても良かったなとも感じました。
では、この作品の味わい深さを二つの方向から見てみたいと思います。まずは春夏秋冬の表現です。この作品は12の章から構成されていますが、それは〈新春〉、〈梅〉、〈花見〉、〈鳥待ち〉、〈五月雨〉、〈風待ち〉、〈文月〉、〈秋風〉、〈菊〉、〈小春〉、〈雪待ち〉、〈春待ち〉と一月から十二月までの季節の移ろいと重なります。数多の小説の中にはこの作品同様に一年を12章で描いたものもありますが、この作品の季節の表現は純和風、現代社会というより失われつつある、”古き良き時代”の日本を遠い目で見たくなるような表現がなされていくのが特徴です。まずは、四つの季節を抜き出して見てみましょう。一月、〈新春〉からスタートします。
『セリ、ナズナ、ゴギョウ、ハコベラ、ホトケノザ、スズナ、スズシロ。真っ白い粥に細かく刻んだそれらを放つと、そこだけ春になった』。
『仕事始めの朝、ストーブで七草粥を炊く』という作品冒頭の描写がこれです。如何にも日本の新春!という雰囲気感がいきなり醸し出されます。なかでも『そこだけ春になった』という表現は絶妙です。次は日本の春と言えばこれしかありませんね。四月、〈鳥待ち〉に進みます。
『桜の開花宣言が発表されると、まるで空気に紅をさすみたいに、町全体が少しずつ淡いピンク色に染まっていく』。
異常気象の中で桜は三月のものになりつつありますが、日本の春と言えばこれです。『空気に紅をさす』とはよく言ったものだと思います。この感覚日本以外では通用しないくらいにザ・日本です。そして、七月はそのまま〈文月〉です。
『もうすぐ七夕がやって来る。毎年、色紙で吹き流しや提灯、網飾りなどを作り、店の前に飾っている』。
これも日本ならではですね。七夕飾りを知らないという方はいないでしょう。作品には『店先に短冊とマジックペンを置いておくと、近所の子ども達が願い事を書いてぶら下げていく』とも記されています。最後に、十月、〈小春〉です。
『この週末、三崎坂沿いにある大円寺では、恒例の菊まつりが開かれている。夜にはよみせ通りを中心にパレードが行われ、宝船を象った山車の上では和太鼓が演奏される』。
秋といえば『菊』ですね。『和太鼓が演奏される』というのは栞が住む谷中で近年に復活した『谷中菊まつり』のことを指します。物語では、『ひめまつ屋を閉めてから』、まつりへと駆けつけ『菊酒をちびちびと飲みながら、秋の夜長にうっとりする』という栞が描かれます。季節の移ろいを感じながら読み進めることのできるこの作品、四季の移り変わりの中にそれぞれに良い味を感じました。
そしてもう一つは『きもの』です。この作品では主人公の栞が『アンティークきもの』を取り扱う店を営んでいます。『きもの』に囲まれた生活をしているだけでなく、普段の生活にも『きもの』を着る様子が描かれます。少し見てみましょう。木ノ下と出かけるに際して『湯島天神の梅』を見に行くのに『どのきものを着て行こうかと』散々に迷う栞の選択がこれです。
『落ち着いたグレーのお召に、いろいろな花の模様が刺繡された黒い綸子の帯を選ぶ。梅が焼きもちを焼くといけないので、半襟にだけさりげなく桜を取り入れてみる』。
『梅が焼きもちを焼くといけない』とは上手く言ったものですが、その裏側にはこんな理由があるようです。
『きものの世界では何でも季節を先取りするから、例えば梅の季節に梅の柄を合わせるのは無粋とされる。本物の梅の美しさには、どう背伸びしたって敵わない』。
『きもの』の世界の奥深さを感じます。何も考えずに『梅』に合わせてといった考え方をしないのが『きもの』の世界。他にも『グレーのお召に、柔らかい水玉模様の帯を締めている』、『白っぽい紬のきものに、川遊びをしている様子が描かれた古い帯を合わせている』…といったように季節とお出かけ先に合わせて身なりをしつらえていく栞の姿がこの作品には自然に描かれていきます。季節の表現に、『きもの』にと、とても日本を感じるこの作品の魅力を改めて認識しました。
そんなこの作品は、『えーっと、きものを探してまして』と『ひめまつ屋』を訪れた木ノ下と栞の関係が描かれていく物語です。如何にも日本を感じさせる物語は細やかな箇所にも配慮がなされています。それが、木ノ下の素性を『左手の薬指に結婚指輪をはめている人だった』という一文で表してしまうところにもあります。店にたまたま訪れた客である木ノ下との出会いの先に思いを深めていく栞の心の内はこんな風に柔らかく描写されます。
・『木ノ下さんと会うことを想像するだけで、胸にたくさんの花の蕾が詰め込まれたみたいになり、呼吸が苦しくなってしまう。落ち着いて深呼吸をしないと、酸素不足で息が詰まりそうだった』。
・『いいのかな、と頭では思っても、体は木ノ下さんのいる方へ駆け出してしまう。磁石に衣を着せたみたいに、私の心は木ノ下さんを求めてまっすぐに進む』。
どうでしょう。あまりに初々しい表現の数々に読者の方が照れてしまいそうです。『胸にたくさんの花の蕾が詰め込まれた』や『磁石に衣を着せた』といった巧みな比喩表現にも心惹かれますが、兎にも角にも栞のいじらしいまでの思いが自然と伝わってくる表現の数々は読者の感情移入を自然に誘います。
『私は、最後のドミノがコトンと音を鳴らして伏せるのと同時に、勇気を振り絞って言った。「栞って呼び捨てにしてください」』
そんな風に二人の関係性は一つずつ壁を乗り越えてどんどん深まっていきます。しかし、そんな意地らしい描写の一方で、『左手の薬指に結婚指輪をはめている人だった』という木ノ下の属性が読者にどこまでも引っ掛かりを与えます。言ってみればこれは不倫ということになるわけですから当然とも言えます。不倫の相手方が物語の主人公であり、視点の主、読者の感情移入先となるというのがこの作品です。この作品が不思議なのは、そんな栞が主人公であるにも関わらず、そこに穢れた雰囲気感が全く浮かび上がってこないことです。それは恐らくは木ノ下の背後に全く家族の存在が感じられないことが原因なのだと思いますが、ここまでそれを徹底して描ききる小川さんの描写に驚きます。物語はそんな二人の行く末を季節の移ろいの中にどこまでも、どこまでも、やわらかく、やさしく、うつくしいまでに描いていきます。そして、その先に待つ物語の結末。大きな事件が起こるでもなく、あくまで淡々とした栞の日常が描かれていくこの作品は、そんな世界観自体を楽しむ物語なのだと思いました。
『春一郎さんに会えない時間は、いくら伸ばしても永遠に切れないゴムみたいで、やたらと長く感じる』。
谷中で『アンティークきもの』を取り扱う『ひめまつ屋』を営む主人公の栞。この作品では、店の客として偶然に出会った木ノ下に思いを深めていく栞の一年が描かれていました。日本を感じさせる季節の描写に酔わせてくれるこの作品。谷中の情緒豊かな街並みと美味しい食の風景にも酔うこの作品。
“古き良き時代”を感じさせる物語の中に、あくまで美しい世界観を紡いでいく小川さんの魔法のような筆致に酔う、そんな作品でした。
Posted by ブクログ
土地勘があるので、四季折々の風景が想い出され私も春一郎さんやイッセイさんの様な素敵な方と街歩きをしている錯覚に落ち入りました。とても温かく優しい文章に包まれ微睡みたくなるような一冊でした。
Posted by ブクログ
いつも通り、美味しい食べ物と丁寧な暮らしが描かれた小川糸さんの本。
偶然、物語同様に丁寧で素敵な小川さんの暮らしぶりを載せた雑誌を読んだので、妙に納得というか、物語の中の主人公が料理する事や季節の行事を大切に過ごす事などが、上っ面だけでなく小川さんが過ごす日常のエッセイのように感じた。
そんな清潔感があり、静謐な物語を読み進めながら、最後はどこに終着するのだろうと思っていた。
栞と春一郎さんとの関係は、側から見たら世間的には許されない「不倫」なのだろうから。
どんなに栞がその立場を理解して慎ましく行動していても、奥さんと子供側からしたら綺麗事では済まされない。
…とは常識的には思うけれど、私はなぜか肯定してしまった。現実にもいるんだろうな、なぜか真面目に惹かれ合ってしまう、離れたくても離れられない運命みたいな。
「本当に好き」な人とどのタイミングで出逢えるか教えてくれたらいいのにね。
ただ春一郎側からの気持ちは綴られていないので、本当のところはわからないよなーと意地悪な気持ちで読んでいた私もいた。(栞は彼からしたら都合良いよなと)
いつも誰かに尽くしているような栞。
父だったり、妹達だったり、好きな人だったり。
でも、それは着物という自分の好きな事を仕事にしていたり、好きな土地に生活しているからこそなのだと思う。
それらが成り立っていなければ、他の人に献身的にはなれないのかもしれない。
自分が好きな事を選択できているからこその行動かと考えると、案外わがままに生きているのかもしれない。
最後、大晦日に訪れた春一郎。
薬指の変化。ボストンバッグ。
幸せになれると思って良いのだろうか。
それが束の間だとしても、彼女は既に覚悟してるのだろうけれど。
※旅館の食事がめっちゃ食べたい!
Posted by ブクログ
小川糸さんの、生活や季節の描写はすごく丁寧で美しいので大好きです。ツバキ文具店と重なり合うものを感じますが、不倫という設定が、やはりちょっと受け入れられられないので、感情移入がしにくかったです。
Posted by ブクログ
ー自分のくらしが、すごく愛おしくなる。
〈あらすじ〉
寺町でアンティーク着物店を営む栞。ある日、父の声に似た男性客がやってきた。少しずつ加速する恋心、そして共に囲む食卓。日々の暮らしの中に積もる小さな感情を大切にしたくなる。
〈感想〉
1行目を読み始めた瞬間、ああ好きだなと思いました。
この世界観、生活のなかの小さな音、空気、思考、感情、小さく雪のように積もってきて、綺麗でたまらないです。
少しずつ大切に読みたい本です。
栞がご近所さんにも、家族にもなんだかんだと愛されているのがすごく伝わります。
ですが、、、この恋のかたちはなぜ、、、、。
お互いにはじめから分かっていて、でも止められないということなんでしょうが、、、。
ちょっと私には理解できませんでした、、笑
でも、この世界観だけでも味わうことができて、それはとても贅沢な気持ちになりました。
大人の恋
食べ物が四季折々美味しそうに描写されています。人を純粋に愛する姿に感激しました。どうか幸せな未来が2人に訪れますようにと心から祈りたい気持ちになりました。
Posted by ブクログ
谷中、湯島の街歩きをしたくなる作品!
小川さんならではの、食事の描写が丁寧に描かれていて、物語に四季を感じ、めくるたびに温度を感じるよう。
ジェントルマン兼男前なイッセイさん素敵です。
春一郎さんはいい人だけど、
本当に善い人なのか‥甘い人だな!(個人の意見)
Posted by ブクログ
蓮見まどか
息子夫婦と同居しているが、お嫁さんとの折り合いが悪いらしい。
横山栞
谷中でアンティークきもの店「ひめまつ屋」を営む。三軒長屋で、一階は店舗、二階は住居。
花子
栞の妹。まどかと気が合う。外国から日本にやってきた観光客相手の商売をしている。
福
栞が飼う赤い金魚。
金太郎
栞が飼う黒い金魚。
木ノ下春一郎
着物を買いに来た。
楽子
栞の下の妹。種違い。ラッコ。
鈴木良子
栞たちの母。
栞の父
実家のある北陸の山奥で、ほぼ自給自足に近い生活を営んでいる。
岡田雪道
フォトジャーナリストの卵。栞の元カレ。
小春
木ノ下の娘。
坊や
まどかのひとり息子。
イメルダ夫人
近所の寺の住職夫人。
鈴乃
父の再婚相手。
イッセイ
早乙女一成。近くのお屋敷に住む老紳士。
小町
野良猫。
弥生
イッセイが持っている写真の女性。初恋の人。
岡田聡美
雪道の妻。
Posted by ブクログ
主人公・栞のささやかな日記を読んでいる気分になる物語。この恋愛の形はダメでしょ?と思いながら読み進めていくと、最後にイッセイさんが全てを持っていってスッキリした。
Posted by ブクログ
感想
主人公はどこが影がありつつも何気ない日常にも心を豊かにすることで様々なことを感じ、ゆったり生きる。
そのような雰囲気を栞から感じた。
春一郎は既婚者で不倫なの?そこがずっと明らかにならないからモヤモヤ。読み飛ばしたかもしれないけど。妻子いる割にそっちをほったらかしてデートに行く心境が理解できん。
両方相手出来るということは起用なのだろう。
あらすじ
横山栞は谷中でアンティーク着物店を営んでいる。離婚した両親と花子、楽子の妹とは別にお店の2階で一人暮らしている。
ある日、父親に似た木ノ下という男性が店に訪れ、交際が始まる。その他に多くの着物を安く売ってくれた老人のイッセイさん、妹の花子との距離感、突然知らされた元彼の死、イッセイさんが遠くに引っ越すことでの別れ、春一郎との別れと再会。
Posted by ブクログ
小川糸さんは今回で2冊目、やさしい物語の展開は前作同様。
栞さんと春一郎さんの関係はいつになったら一歩踏み出せるのだろうと思いながら、ふわふわいらいらしながら読み進めた。
2人が初めて宿に泊まる夕食の献立を栞さん解説の心のつぶやきが、次の展開へ進むのかな?と足踏みしそうなところがおもしろい。
人生の先輩イッセイさんは栞さんにとっては大きな存在、生きてるもん同士が出会えただけで奇跡、このことばは2人のこれからの人生を運命づけるだけでなく、我々にも勇気を与えてくれることばだった。
Posted by ブクログ
谷中にあるアンティーク着物のお店、ひめまつ屋。
その周辺の優しい人々と素敵なお店。丁寧に生活している主人公栞。春一郎は栞さんの美しさと儚さと自立している所に付け入っているし、栞さんは心の隙間に入り込んだ春一郎を好きになってしまう。でも、不倫は不倫。不毛の恋。
Posted by ブクログ
主人公の丁寧な生活が素敵で世界観good!
谷根千に住みたい〜
爽やかで純愛な不倫物語という言葉だけ見ると矛盾している変わった雰囲気の物語でした!不倫相手の家族がどうなってるかみたいなノイズを気にしなければ爽やかで心温まる作品でした
Posted by ブクログ
日常が丁寧に紡がれてる。
日常を言語化する教科書みたいな本だった。
心の内で瓦礫のように無秩序に折り重なる感情と感情の間から、光を求めて地上に顔を出す花のように、私も明るい方を目指して生きていきたい。
どうして、こう言葉を操れるのか。
舞台となる谷根千の古き良き空気感と、着物ショップを経営する栞(おしりちゃんとラッコちゃんから呼ばれるのが可愛かった)が日々を通して、図らずも不倫をしてしまいその葛藤みたいなのも描かれてる。
けど、ドロドロと薄暗いものではなくて、季節の移ろいや美味しいものがほくほくと描かれてる。
登場するお店は実在するのかな。
巡礼したいな。