あらすじ
地球温暖化で強靭化する台風など異常気象現象が日本でも増えている今、生活や財産、生命を守るために重要である天気予報の重要性も高まっています。従来の天気図からわかる気象情報から、最新のコンピューターによる数理予報の技術まで、気象予報の話を中心に進めながら、気象現象の原理に迫ります。
本書では、社会活動および産業にとって必要かつ不可欠の情報となっている天気予報が、日々、テレビ、新聞、ネットなどのメディアを通じて報道・提供されているものの、実際の天気予報がどのような手段や手続きによって、作成され提供されているかについては意外に知られていないことから、その部分に踏み込んでわかりやすく解説します。さらに本書は、天気予測技術全般について、図やイラスト、写真を豊富に使って、理解しやすい工夫をしています。読者にとっては、天気予報を含む「気象予測技術」の全体像の話を読みながら、気象のあらゆる現象の原理への理解も深まることにつながります。また、適切な防災活動につながることも期待されます。著者の経験やエピソードも織り交ぜられ、気象のさまざまなことが理解できる1冊です。
前半では主に、広くなじみがある天気図により、気象のしくみを解説します。天気図の解析により予報官が予報する時代はほぼ終わりましたが、一般向けには気圧配置型による解説などまだまだ天気図を使った技術が使われています。
第1章は地球温暖化により強靭化した台風について、最近の例について詳しく解説し、第2章では、日本の天気予報の歴史を追います。平安時代の「野分」、鎌倉時代の「颱風」といった、気象レーダーも気象衛星も天気図もない時代の、台風による災害の実態にふれていきます。また、明治、昭和の頃の天気図や世界初の天気図なども紹介します。第3章では、アメダスなど、現在のさまざまな気象観測システムを、第4章では、統計的手法などの予報のさまざまな手法、予報技術や情報の出し方を取り上げます。第5章では、特徴的な天気図を例に気象現象を解説していきます。「移動性高気圧」「寒冷前線の通過」「西高東低」「帯状高気圧」……。聞き慣れているけど深くは理解していない言葉の意味が、わかるようになると思います。
後半では、現在天気予報の中心となっている、コンピューターによる「数値予報」について解説していきます。
第6章で数値予報とはなにかを物理法則を交えて、第7章では数値予報から利用しやすい言葉に置き換える「ガイダンス」について、第8章では最近用いられている手法「アンサンブル」について解説します。
感情タグBEST3
Posted by ブクログ
同著者『図解・気象学入門―原理からわかる雲・雨・気温・風・天気図』の姉妹本に相当し,こちらは天気予報への応用に軸を置いている。面白いのは後半の数値予報で,いわゆる数値計算についての平易な解説が含まれる。
Posted by ブクログ
現実の地球の一期一会の現象を相手にする気象学、そして猛烈な勢いで新しい技術に合わせて変化している領域であるから、見通しよく整理された体系をシロウト相手に説明するのはとても難しいはず。それなのに、こんなに切れ味よく綺麗に、しかもコンパクトに満遍なくまとまっているとは。「一般気象学」とこの本さえ読めば、気象について一般人が知るべきことは、ほぼすべてアタマに入りそう。
Posted by ブクログ
近年よく発生する大規模な豪雨や台風のような身近な災害の話から始まり、気象観測や天気予報の歴史(それこそ文字通り先人たちの血の滲むような努力があった…)、従来の観測値や天気図ベースの予報、数値予報の基礎、天気予報の新しい手法という流れで、一冊を読み通すことで日本の天気予報のこれまでとこれからを一望できる。
また、数値予報の基礎の部分では、流体力学の数式をかなり噛み砕いて説明してくれるので、気象学を少し詳しく学びたいときに従来の教科書で引っかかりがちな部分をもう少し詳しく知りたいときにも役立ちそう。
天気図の読み方など従来の手法の予報については一般の文献も多いが、数値予報については用語や概念が難しいこともありなかなか専門外の文献が少なかったように思うが、この本は最近の天気予報がどういうふうに行われているかが一般の人にもわかりやすくまとまっている良い本だと思う。
気象の本は読めば読むほど、天気を予報することの難しさを実感するのが常だが、この本もやはりそうだった。これだけ多くの解析・予報のための手法が考案されても、やはりぴったり当たる予報を行うことは難しく、これまでのデータや、経験に基づく勘も重要な要素。天気の難しさと面白さはこういうところにあると思う。
Posted by ブクログ
図解、入門って文字があるけど、そこに期待するとちょっとハードルが高いかも。「天気予報の仕組みと使い方」の授業の参考のために読んでいた本だけど、気象の本はそれまでも読んでいたので割とすんなり理解できた印象です。初期値敏感性によるカオスに関しても授業は大変わかりやすい説明だったなあって改めて感心。
とはいえ、この本はとてもいい本です。姉妹本「図解・気象学入門」もあるそうだけど、タイトルから気象予報士の学科一般と学科専門の試験に対応した内容になっているのだと思います。気象予報士試験対策なら他の専門本が手っ取り早い気もするけど、一般向けの知識としての天気予報としては入門どころか十分って感じでした。
Posted by ブクログ
現在の天気予報で肝になっている数値予報のことを、最小限の数式を使いながら素人にも解るように説明しているところが他の一般向けの天気本との違いを感じる。
Posted by ブクログ
強力と恐れられたのろのろ気まぐれ台風10号も過ぎ去った。台風の中心よりも周辺部の湿った空気による線状降水帯による大雨の被害の方が大きかったのか。天気予報は未知なるものを予測する点でロマンがある。予報は科学であるから測定からの推測が基本。いかに測定するか,いかに測定されたデータから推測するか,なるべく難しい概念を使わずに丁寧に説明する。ちょっと勉強するといろいろな天気図があることに驚く。天気図は平面だが大気は垂直方向を持つ。立体的なイメージを描くのがなかなか難しい。天気と心理学で話ができるようになりたい。
Posted by ブクログ
天気予報の仕組みや手法について、素人にも極力わかるような形でまとめられていました
我々一般人に馴染みのあるアメダスやひまわりの役割から、雨雲レーダーの解析手法、天気予報として国民に届けられる形にするまでのさまざまな予報手法など、興味深い内容でした
最近は「数値予報」を起点に、まずは地球をある大きさに格子状に分解して、さまざまなパラメータを与えながら、そこに実測値も加味しながら解析していくという話(ここは晴れ、ここは曇り、というような現象を把握するところからではなくて、まずは数字のみで予想)はとても意外でした
スーパーコンピュータを使わないと、到底処理できないような、膨大な計算を、ずーっとやっていることがわかりました