【感想・ネタバレ】国宝 上 青春篇のレビュー

あらすじ

俺たちは踊れる。だからもっと美しい世界に立たせてくれ! 極道と梨園。生い立ちも才能も違う若き二人の役者が、芸の道に青春を捧げていく。芸術選奨文部科学大臣賞、中央公論文芸賞をダブル受賞、作家生活20周年の節目を飾る芸道小説の金字塔。

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Posted by ブクログ

ネタバレ

映画を見てから間を空けずに小説を読み始めたことで、両者の違いを意識しながら楽しむことができた。これまで「小説→映画」は経験があったが、「映画→小説」は初めてであり、3時間の映像作品に対して、どの部分が採用され、どのように改変されているのかを追う読み方は非常に新鮮だった。

その上で、最終的には小説の方がより深く心に残った。音や映像に頼らない分、登場人物の内面が徹底して描き込まれており、その繊細さに強く惹かれた。本作においても、映画では捉えきれなかった感情の揺れや背景が、小説では鮮明に浮かび上がってくると感じた。

本作は慣れ親しみのない文体で書かれており、読み進めるのに時間を要したが、その分、日本舞踊の世界観に深く没入することができた。読み終えた後も余韻が長く続いた。情景が鮮やかに立ち上がる筆致は圧巻である。

物語の中心にあるのは、芸に生きる者の誇り、情熱、そして孤独である。登場人物はいずれも魅力的だが、とりわけ喜久雄は印象深い。私生活と舞台の境界が曖昧になる中で葛藤を抱えながらも、なお芸に身を捧げ続ける姿に、強く心を引きつけられた。

血縁や世襲、時代の潮流といった要素が、喜久雄と俊ぼんの栄枯盛衰を目まぐるしく展開し、文量の多さを感じさせないほど物語に引き込まれた。

特に最後の場面は印象的であった。喜久雄が追い求めていた境地に辿り着いた描写は、人ならざる領域への昇華とも感じられ、理想的な結末として強く心に残った。

これまで日本舞踊にはあまり関心がなかったが、本作を通じて興味が湧き、一度歌舞伎をじっくり観てみたいと思った。

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2026年03月22日

Posted by ブクログ

ネタバレ

会社の同僚たちが次から次へと映画『国宝』を観に行きました。映画を観て小説を読んでも小説を読んでから映画を観ても良いよと言われたのですが、映画を観る前に小説を読みます。
読みながら喜久雄のイメージは横浜流星だと思ったのですが違いましたね(笑)。読んでから映画のキャストを見ました。

語り口調で話が進むのも俯瞰的で良いです。
喜久雄はいい人に恵まれましたね。
いつでも喜久雄の味方になってくれる幼馴染の徳次、愛情深い父の後妻のマツ、喜久雄を目の敵にしているように見えるけど実は…な体育教師の尾崎、そして、喜久雄を引き取って稽古をつけてくれた歌舞伎役者の半二郎。半二郎の息子の俊介も喜久雄をライバルとして受け入れてくれました。

実子の俊介ではなく喜久雄に半二郎を譲った花井白虎(旧半二郎)。それを知って俊介は失踪します。
しかし喜久雄も順風満帆というわけにはいきませんでした。白虎が病死し、元々梨園出身ではない喜久雄には後ろ盾がありません。喜久雄の後ろ盾を引き受けたのは姉川鶴若。彼ではなく別の人だったら喜久雄の役者人生も違うものになっていたかもしれません。なにしろ、それ以降たいした役ももらえず鳴かず飛ばず状態でした。
そんな時、失踪していた俊介が復活します。しかも憧れだった万菊と共に舞台に立つという、喜久雄にとっては嬉しいけれど悔しさもあり…。
上巻最後の「ここから這い上がってやる」にぐっときました。
下巻が楽しみです。

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2026年03月21日

Posted by ブクログ

ネタバレ

心情描写と情景描写が一体になって流れていって、美しいなぁ。特に好きだったのは幸子の気持ちと松の枝を切る鋏の音が重なるシーン(p278)。俊ぼんの見つかり方は原作の方が好き。あと、万菊の「木を見るようで森を見せる指導法」いいな。私も職場の後輩にしてあげられるようになりたい。

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2026年03月15日

Posted by ブクログ

ネタバレ

映画『国宝』が大変よかったので、読書好きとしては原作を読まずして語らいでかと思い当然読み始めた。
映画はところどころ端折ってたけど、それでもだいぶ原作に沿って流れててくれたんだなと。
原作のほうは歌舞伎の舞台の描写はいまのとこほぼない。から映画で観たあの美しい舞台演出を頭に描きながら読めたのでそれも映画を先にしてよかったなと思った。

そしてなによりも徳ちゃん…
原作のもう大きな違いは徳ちゃんの存在だよ…
映画の喜久雄は、(まだ上巻では出てないけど)「ほかになにもいらないから芸を上手くしてください」と悪魔にお願いして、家族も捨てて人間国宝になって、ああ芸を極めるのってなんて孤独なんだろう、と思ったけど、喜久雄は産まれたときからすでに唯一無二の存在がいたから、徳ちゃんがいたから全てを捨てていけたんだなとわかった。
そりゃあ徳ちゃんいたらじゅうぶんだよ…つらいだろうけど、それでも喜久雄が孤独じゃなくてよかったと安心した上巻だった。

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2026年02月24日

Posted by ブクログ

ネタバレ

己ひとつで成り上がれ。

任侠の家に生まれた喜久雄は、抗争で父を失い、縁のあった歌舞伎の大名跡のところで部屋子になる。そこには跡継ぎを約束されていた俊介がいた。競い合って仲良く成長していく2人だが、半二郎の降板に代役として喜久雄が指名されたことから、俊介が出奔し——。

持たざる者と奪われた者。語りが話に引き込む。映画は観ていないけど、映像として映えそうな作品ではある。帰ってきた俊介は、万菊が言ったように恨みを抱きながらそれでも舞台に立たざるを得ないのだろうか。喜久雄はどこまで自分を抑え込みながら爆発を待つのだろうか。最初の頃にあった、復讐をしないと言われながら、自分の中では機会をうかがっていた喜久雄を思う。いざ襲撃したものの失敗し、その結果まったく意図せざる方に道が開かれた喜久雄。下巻にもそのような道があるのではないか。

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2026年04月02日

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