あらすじ
俺たちは踊れる。だからもっと美しい世界に立たせてくれ! 極道と梨園。生い立ちも才能も違う若き二人の役者が、芸の道に青春を捧げていく。芸術選奨文部科学大臣賞、中央公論文芸賞をダブル受賞、作家生活20周年の節目を飾る芸道小説の金字塔。
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Posted by ブクログ
映画を見た。美しい映像に食い入るように見た。映像は一個の芸術作品で説得力に満ちていた。それでも熱がひけてくると、登場人物の行動にハテナが多くつき、それであればと原作小説を読むことにした。
この小説にはハテナはない。ガラスケースに閉じ込められた美術品、あるいは絵はがきのようなポートレートではなくて、においのする人間が生きている。この話は「ミミズク」たちと「山」たちの生き様かもしれないと思った。価値観も立場も違う皆それぞれに、幸福と不幸がある。何が正義でどれが悪なのか、一様に決められないのが人の生なのかと思わされる話だった。
喜久雄の歩む道は険しいけれど、小説は孤独でなくて救われた。
下巻も楽しみだ。
Posted by ブクログ
2025年に大ヒットした映画『国宝』を観る前に、原作を読んでおこうと上下巻の文庫を手に取った。歌舞伎についての知識はほとんどなかったが、その不安は読み始めてすぐに消える。語りかけるような地の文と巧みな描写が、読者を自然と物語の世界へ導いてくれるからだ。
物語は長崎・丸山町から始まり、歌舞伎という芸の世界と、そこに生きる人間たちの業を鮮烈に描き出していく。喜久雄という才能が見いだされる瞬間は、まさに圧巻。芸に選ばれてしまった人間の運命、その残酷さと同時に宿る美しさが、胸に深く刻まれる。
映画版も素晴らしい完成度だったが、原作を読むことで、徳次や弁天、そして綾乃といった人物たちの存在がいかに物語の核を成していたかがよくわかる。舞台に立つ者だけでなく、その周囲で支え続けた人々の覚悟まで描かれてこそ、『国宝』は完成する。
そして――綾乃。
父を憎み、引きこもり、春江に半ば強引に外へ引きずり出され、それでも自分の足で生きていった彼女。
彼女があの言葉を喜久雄に投げかけるからこそ、あのラストは成立する。
あれは、原作を読んでこそ辿り着ける場所なのだと思う。
Posted by ブクログ
上下巻まとめて
最初はやくざの抗争の血生臭い描写が続くのですが、
このバックグラウンドが後に生きてくるので
ここはどうしても必要なシーン。
その後苦労に苦労を重ね、
人間国宝にまで上り詰めるのですが、
なんともせつなく悲しくなります。
映画の中で「あなたがここにたどり着くのに
どれだけの人を犠牲にしたと思てるん?」ってセリフがあるのですが、
喜久雄の人生はまさにそういう人生で、
それは彼の望んだ人生だったのだろうけど、
「あなたは幸せですか?」とつい尋ねたくなります。
血筋がものをいう歌舞伎の世界で、
喜久雄がどれだけ過酷な目にあってきたのか
読者は見せられているのですから。
才能と血筋、どちらを持って生まれてきても
どちらも等しく修羅の道すぎる。
ここまで苦しまないと達者になれないものなのか。
喜久雄を取り巻く人間関係、
それぞれの人物がとてもよく描かれていて、
読み応えありすぎなのですが、
最後が本当に悲しく・・・
色んな感情が渦をまいてなんと言えばいいのか
わからない。
本を読んでから映画を見たのですが、
順番的には私はその方がおすすめです。
そして映画のラストの方が好きですね。
まだ救われる感じがします。