【感想・ネタバレ】イギリス1960年代 ビートルズからサッチャーへのレビュー

あらすじ

第2次世界大戦後のベビーブームを背景に、若者文化が花開いた1960年代。中心にはビートルズが存在し、彼らの音楽・言動は世界に大きな衝撃を与えた。他方、サッチャー流の新自由主義も実はこの時代に胚胎した。今なお影響を与え続ける若者文化と新自由主義の象徴は、なぜイギリスで生まれたか――。本書は、ファッション、アートなどの百花繚乱、激動の社会とその反動を紹介し、1960s Britainの全貌を描く。

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Posted by ブクログ

2章冒頭での著者のビートルズへの『信仰告白』にクスリとしながらも、『許容の60年代があった故に80年代のサッチャリズムを生み出した』という著者の主張が丁寧に紐解かれていく構成でイギリスの現代史への洞察がより深まった気がする。
特に『許容への批判』のモラリズムが、サッチャーのへの追い風になったという点は、ある意味納得がいくし、ここ最近の太平洋を挟んだ国がチラついて特に興味深かった。

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2025年04月19日

Posted by ブクログ

1960年代を舞台にビートルズのブレイクがマーガレット・サッチャーの登場の下地をつくったという、一瞬、エッ?な論考です。しかし、このロジックは一度、体験したことがあるような気がします。それはミチコ・カクタニの「真実の終わり」で語られていたポストモダンの多元化した文化を許容する社会の実現がトランプ主義を生んだ、という論です。本書をそのイギリス版として受け取りました。第二次世界大戦後のベビーブーマーを主役とした豊かな社会がスウィンギングロンドンというポップカルチャーの時代を作り出し、そのシンボルであるビートルズ革命によって社会より個人を大切にする個人主義の時代を生み出し、それを許容する社会と、その自由に反対するモラリズムの追い風に乗ってサッチャーが台頭し、新自由主義というサッチャリズムが生まれた、というもの。風が吹けば桶屋が儲かる的ですが、「真実の終わり」と同様に、非常なる説得力を感じました。それはリベラリズムの衰退という現在進行形の問題にも繋がると思います。1960年代が1980年代を生み、その流れがBREIXTに繋がり、世界の未来を見えない者にしている…という大きな問題意識も刺激しますが、もはや古典となったビートルズ、もしくはブリティッシュインベージョンのカルチャーガイドとしても、実は楽しい本でした。日本の60年代文化もレトロとしてだけではなく現在の序章としての考察も可能だと思いました。

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2021年08月08日

Posted by ブクログ

イギリス・アイルランド史の専門家による1960年代論。前半ではビートルズを中心とする文化革命とこれらに寛容な「許容する社会」、後半では「許容」に対する反発として台頭したモラリズムが紹介される。

個人的には、『チャタレイ夫人の恋人』からロックまで新たな動きを何でもかんでも繰り返し批判し、「モラリズムおばさん」として名をはせたメアリ・ホワイトハウスの活動がもっとも興味を惹かれた。そして、ホワイトハウスに代表されるモラリズムの支持も得て誕生したのが、サッチャー政権という流れになる(結局、伝統的モラルへの回帰よりも新自由主義的経済改革を優先するサッチャーは、モラリストの期待を裏切ったのであるが)。

では、ホワイトハウスやサッチャーが女性活動家・政治家として台頭できたのは、なぜだろうか。それは、彼女たちをも1960年代イギリスが「許容」したからだと筆者は指摘する。「許容する社会」がビートルズのみならず、それへの反動やサッチャリズムの土壌にもなったという、歴史の顛末である。

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2021年05月31日

Posted by ブクログ

1960年代の英国史。ビートルズが活躍し若者文化が花開いた1960年代から、1970年代のサッチャリズムに移行していった過程を描写している。
著者の仮説は以下の3点:
①大衆消費を基盤とする1960年代の文化革命の経験が、サッチャリズムの描くポピュラー・キャピタリズムの夢に惹かれる個人主義的な国民を形成した。
②「許容する社会」の広がりが、政治の世界でのサッチャーの栄達を可能にする条件を整えた。
③「許容」を批判するモラリズムの台頭が、サッチャーへの追い風となった。
特に、第2章はビートルズ論となっていて面白い。

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2021年08月21日

Posted by ブクログ

イギリスは1960年代物質的豊かさが大衆にまで一通り行き渡った事もあり、文化革命とも呼びうる動きが起きた。その象徴はビートルズであり、007であり、ヴィダル・サスーンであった。

一方では大衆文化の拡大は個人主義的思考、そしてその思考を許容する社会を生み出し、それまでのイギリスでは生まれるべくもなかった女性首相サッチャーがやがて誕生する土台となった。

というのが一言あらすじになると思うのだが、他の方も書かれる通り、この本の中で最もインパクトがあったのは「モラリズムのクルセイダー」メアリ・ホワイトハウス。同時代のイギリスに住んでいたら一も二もなく毛嫌いしていたはずだが、このおばちゃんの言動はとにかくパワフルであり、とにかく異彩を放っている。ホワイトハウスを取り扱った第5章・第6章だけでも一読の価値はあるはず。

パルネット ベルマージュ堺店にて購入。

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2021年06月20日

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