【感想・ネタバレ】偶然の聖地のレビュー

あらすじ

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地図になく、検索でも見つからないイシュクト山。
時空がかかった疾患により説明不能なバグが相次ぐ世界で、
「偶然の聖地」を目指す理由(わけ)ありの4組の旅人たち。
秋のあとに訪れる短い春「旅春」、世界を修復(デバック)する「世界医」。
国、ジェンダー、S N S――ボーダーなき時代に鬼才・宮内悠介が描く物語という旅。

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Posted by ブクログ

ネタバレ

岸本佐知子さんがアトロクで推薦図書として挙げていた。
大森望、武田砂鉄が帯文。

宮内悠介は「たべるのがおそい vol4」に掲載された「ディレイ・エフェクト」があまり好きでなかったのだが、他の著作があまりにも面白そうなのでいずれ読もうとぼちぼち買い集めており、再挑戦するなら本作と決めていたのだ。
果的には正解で、一気読みだった。
ルネ・ドーマル「類推の山」を最初は連想したが、ちょっと違うみたい。
むしろ、夢枕獏「神々の山嶺」のように、気象条件が奇跡的に整った瞬間のみに現れる聖域のような……あれ、「神々の山嶺」にそんな箇所あったっけ。
まあともかく下敷きにしたり参照したりネタとして取り込んだりした作品は多いのだろう、作者にしかわからないレベルでも。
自分はバックパッカーとは程遠いインドア派だし、プログラミングには疎い者だが、ざっくり世界5分前仮説やシミュレーテッド・リアリティについて把握しておけば問題なく読める。
視覚的には大友克洋「童夢」のごとき超能力戦闘を想像してもいいだろう。
本文も、注釈も、実に楽しそうに書いているところが、愉しめた。

以下のメモに書き足していきながら、いずれ再読したい。



◇登場人物
怜威
ジョン
ロニー
泰志
レタ
フアナ
ルディガー
バーニー

●第一部
■1.イシュクト山 008
■2.ティト・アルリスビエタ 014
■3.黒い礫 020
■4.カラコルム・ハイウェイ 027
■5.川下り 036
■6.世界医 042
■7.エウロパの鱒釣り 047
■8.確率的な攻略 053
■9.緑の感謝祭 058
■10.幻の鳥 063
■11.レタとフアナ 068
■12.ワームホールのある密室 074
■13.ユーチューバー探偵・勇一 080
■14.このたびの解体子(デストラクタ)葬につきまして 085
■15.宇宙エレベーターを奏でる巨人 090
■16.プログラマ、点を動かす 096
■17.刑事ルディガーの乱心 106
■18.精神の氷河期において 115
■19.腐らなかった死体 122
■20.航路 130
■21.常春のABC 138
■22.アナーキー・イン・ザ・PK 144
■23.刑事ルディガーの無謬 150
■24.コンクリ車いっぱいのレモンティー 158
■25.ラーワルピンディ特別区 165

●第二部 (複素数的な? 第一部と対応)
■i.ティト・アルリスビエタの場合 176
■2i.ロニー・”シングルトン”・ルルフェの場合 181
■3i.レタの場合 187
■4i.刑事ルディガーの回転 194
■5i.桃源郷を目指して 202
■6i.フンザにて 211
■7i.メタフィクションにおけるダイヤモンド継承 217
■8i.メタフィクションにおけるコンポジット・パターン 229
■9i.収束条件 241
■10i.氷河を渡りに 248
■11i.死は天帝に捧げる 255
■12i.氷河にて 263
■13i.ふたたび氷河にて 269
■14i.偶像を直す 275
■15i.思い出の列車 281
■16i.イシュクト郷 291
■17i.つながらない迷路 299
■18i.物語の争奪戦 305
■19i.永遠の墓標 311
■20i.巡礼の宿 320
■21i.ロニー・”シングルトン”の二択 326
■22i.邂逅 335
■23i.最後の一撃 341
■24i.素子の中の失楽 348
■25i.そして、それから 356

◇偶然にまかせて(初出 単行本カバーにデザイン使用)

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2024年01月14日

Posted by ブクログ

ネタバレ

秋のあとに訪れる短い春「旅春」、このような事象を「時空の側がかかった病=バグ」とし、それを直すこと(デバッグ)ができる「世界医」という存在がある、という世界観。地図にも検索結果にも出てこないイシュクト山を目指す、旅とデバッグのお話。

SF小説と注釈エッセイ。私自身もPG/SE系の仕事なので用語やあるあるの理解に問題なく、エッセイも好きなのですごく楽しめた。こんな書き方もあるのか、と目から鱗。

どうしても技法というか上下注釈のスタイルに気が行ってしまうけど、小説の内容自体もしっかりと面白い。中盤あたりから「あれ?これは?」と気づき始め、終盤のタネ明かしやそれぞれの収束はカオスだったが興奮を憶えた。

アトロク(2021-11-01)、岸本佐知子さんの推薦図書。

以下、ネタバレ有りで雑感。



プログラミングやライフハック系のリテラシーが高いとより楽しめる内容だけど、なくても呪文詠唱だと思えば大丈夫。
「世界医」という設定に、『世界の終りとハードボイルド・ワンダーランド』の「計算士・記号士」の設定が頭の中でつながってしまい。
「解体子葬(デストラクタそう)」という造語がなんか好き。PCのデータを消す、とかそういう処理が含まれそう。
ジョンが実は野良世界医という設定すごく好き。
「両性具有」というワードで、ドラマスペシャル版のリングを思い出した(貞子が両性具有者)。
怜威を男性か女性か決めていなかった、というあたりでこの設定もあったんだろうか。
「カナダの国旗」も回収されている。
すべては世界医の手中なのだ。

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2022年06月10日

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