地域活性化伝道師である木下斉氏と建築家の広瀬郁氏の共著。
これまでの著書に加え、建築的な要素が入り、違う印象の著書になりましたが、事例も紹介され、読みやすい構成でした。
バリューネットワークの逆転現象を示し、現在のまちは、生きるか死ぬかのデッドライン上にあり、行動が求められており、そのための実戦的ポ
...続きを読むイントが示されています。
いろいろな指摘がありましたが、
・組合や商工会議所、あるいは行政がまだしっかりと力を持っているまちでは、若い人の活動がネグレクトされやすい。時間資産を持ち、ガッツもセンスもある人が溶け込みにくい状況
いわゆるこれが抵抗戦力となり、まちが変われない状況にあるという指摘は、歴史のあるまちであるほど、動けないようになっています。
これが本当にやる気ある者の意欲を削がないようにすることが重要。
・まちのなかのどのエリアに絞って死守するのかという文字どおりのデッドラインを見極めなければならない。そうやって、限られた範囲に限られた資源を集中し、変化を生み出すしかない
中心市街地の概念は時間とともに変わるかもしれない。また、全体を活性化させようとして中途半端な結果に終わることを危惧している。著者は、まちを変えていくための最初のステップとして、ここを強調しています。苦渋の決断かもしれませんが、確実に成果を出すことから始めなければなりません。
そのためのポイントとして以下を挙げています。
・覚悟を持って絞り込め
・あくまでも民間の主導で決めよ
・メインストリートにこだわるな
・成果にしたがって連鎖・拡大を目指せ
どうしても全体最適を求めてしまいがちですが、まずは小さいところから成功事例をつくり、その成果を拡大していく、ということ。この時代、大型の開発ばかりできるわけではないため、心にとどめておく必要があります。
<この本から得られた気づきとアクション>
・著者の言うバリューネットワークの逆転現象により、今後のまちづくりの方向性が変わってきていることは理解できた。
・ただ、それをどこから対応していくか明確な答えが見つからない
・リノベーションの成功例などを見ると、不動産オーナーの役割が非常に大きいと感じるが、その一歩を踏み出すための何かが必要
・本書にも成功事例が多く紹介されているが、これらの成功例を各地につくり、明らかにしていくことが、意識を変えることにつながるのではないか。
・また、そのような意識のある人を見つけ、支えていくことが今後求められる。これは1人の力ではなく、まち全体で共有すべき課題である。
<目次>
CHAPTER 1
お金とお客は「正直」だ まちの姿にはワケがある
1-1 都市の中心部と郊外 君はどう感じるか?
1-2 まちの「表の顔」から 個性が消えていった…
1-3 ひっそりと守られた まちの裏側の「趣き」
1-4 転換期の幕開けが来た まちの流れは変わる!
CHAPTER 2
まちはなぜ大きくなった? 統計の「数字」から遡る
2-1 新しい時代の価値観は 新しいゴールを求める
2-2 数字の動きから把握する まちの拡大・縮小の原理
2-3-1 製造力の拡大から転換し まちの維持が課題になる
2-3-2 終戦~1950年代
2-3-3 1960~1970年代
2-3-4 1980~1990年代
2-3-5 2000年代~現在
2-4 これからの「つくる」は「 量の供給」とは違う
CHAPTER 3
まちの「仕組み」を まずは頭に入れよう
3-1 プレイヤーのつながりを見渡し まちを理解する
3-2 お金の「整理の方法」から まち全体をイメージする
3-3 経営の視点を持ち込み「 血行」の改善を図る
3-4-1 売る⇔買う
3-4-2 仕入れる/ つくる
3-4-3 貸す~借りる
3-4-4 建てる
3-5 そこに「集まる」ことで 固有の魅力が生まれる
■CHAPTER 4
全てがひっくり返った 発想を逆転させよう
4-1 「いい時代」が過去になり 常識がガラッと変わる
4-2 供給者優位が終わり 全て消費者の主導に
4-3 関係の逆転を前提に まちをつくり変える
[逆転時代のモデル]
4-4 新たな挑戦者のために 安くても儲かる構造に
4-4-1 市・屋台
4-4-2 DIY・セルフビルド
4-5 複数の収入源を確保 相乗効果を持たせる
4-5-1 ネット販売
4-5-2 コンバージョン(用途転用)
4-6 集まる強みを生かして コストの構造を見直す
4-6-1 シェア
4-6-2 コラボレーション
4-7 複数の役割を兼ね 粗利を大きくする
4-7-1 製造小売
■CHAPTER 5
日本の各地で胎動が それぞれの「守り方」
5-1 まち間の競争を常に意識し 一体になって守りを固める
5-2-1 枚方宿くらわんか五六市、鍵屋別館(大阪・枚方市)
5-2-2 北の屋台(北海道・帯広市)
5-2-3 北浜alley、N.Y. GALLERY(香川・高松市)
5-2-4 co-lab(東京・渋谷ほか)
5-2-5 メルカート三番街/ポポラート三番街(福岡・北九州市)
キープレイヤーに聞く 嶋田洋平さん/企画・設計者
5-2-6 米子市中心市街地活性化(鳥取・米子市)
キープレイヤーに聞く 杉谷第士郎さん/タウンマネージャー
■CHAPTER 6
すぐに実行に移そう 変革を導くステップ
6-1 無理をせずに利益を生む それが力を取り戻す源泉
6-2 まちを事業体に見立て それぞれの役割を再考
6-3 資産活用や費用削減 基本に忠実に進める
[エリアを守り、まちを変革する7つのステップ]
6-4-1 ステップ1:まずは守り抜く エリアを決めろ
6-4-2 ステップ2:まちに残る資源を 手元にかき集めろ
6-4-3 ステップ3:まち会社をつくって すぐに行動開始せよ
6-4-4 ステップ4:機敏に動けるように 独自の作戦を立てろ
6-4-5 ステップ5:スピードを緩めずに 成果の連鎖を起こせ
6-4-6 ステップ6:成功には安住せずに 新たな策を繰り出せ
6-4-7 ステップ7:手を離せるくらいに 変革を軌道に乗せろ
6-5 まちの変革に向かい 現場が直面する課題