加藤幹郎のレビュー一覧
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「日本語で書かれた初めての包括的な映画館(観客)論」(あとがきより)。
映画館の文化史論であり、と同時に観客の文化史論。映画館における観客の構成、態度、考え方について、興味深く論じられている。映画好きで、かつ映画館好きの私にとっては、読書中幸福感を得ることができた。
本書はアメリカ篇と日本篇の2部に分かれる。
アメリカ篇では、移民が映画を通じていかに同化されていったか、観客がいかに静粛性を尊重するようになったか、また観客が徐々に均質化されていった過程も詳細に説明される。初期のニッケルオデオン(常設映画館)で、観客はフィルムの入れ替え時間に合唱するというエピソードは楽しい。
日本篇では、弁 -
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Posted by ブクログ
ハリウッドにあっても、映画は自由に作られていたわけではない、ということを押さえておく必要があるだろう。強制力を伴った自主倫理規定(ヘイズ・コード)により、シナリオは検閲され、公序良俗に反する内容は排除された。
さらに第二次大戦が始まり、一部の映画人は軍に身を置き、プロパガンダ映画を作ることになる。その時、動員体制のためにあえて無視していた国内問題が意図せず顕になる。人種問題のことである。
戦争中、男性客も海外市場も失った映画業界は、国内の女性客向けの作品を量産した。しかし、戦後まもない頃、家庭を顧みず社会的成功を追求した女性の挫折を描く作品が登場する。男性の労働社会への、女性の家庭への回帰 -
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Posted by ブクログ
ネタバレ[ 内容 ]
映画はいったいどこで見るべきものなのだろうか。
ホームヴィデオの普及以降一般的になった、個人的な鑑賞は、果たして映画の本来的な姿から遠ざかってしまったものなのだろうか。
本書は、黎明期から今日までの一一〇年間の上映形態を入念にたどりながら、映画の見かたが、じつは本来、きわめて多様なものだったことを明らかにする。
作品論、監督論、俳優論からは到達し得ない映画の本質に迫る試みである。
[ 目次 ]
はじめに パノラマ館を見る―絵画、幻燈、写真、映画、ヴィデオ・ゲーム 理論的予備考察
第1部 アメリカ篇(映画を見ることの多様性 一九〇五年から三〇年代までの映画館
オルターナティヴ映画 -