【感想・ネタバレ】映画 視線のポリティクス ――古典的ハリウッド映画の戦いのレビュー

あらすじ

スタジオ・システムという強力な支配形態のもとにおかれた、古典的ハリウッド映画産業。利潤追求を至上命令とする製作会社によって俳優・監督・脚本家他あらゆる関係者が管理されるなか、激動期のアメリカで、いかにして映画は製作されたのか。監督と撮影所の対立、陸軍による検閲、自主検閲的倫理規定ヘイズ・コード、第二次世界大戦のプロパガンダ映画、それに携わった黒人映画作家……。複雑な力学が働く映画の生成過程に、文書資料や関係者インタビューなど一次資料を用いて実証的に迫る。映画学(フィルム・スタディーズ)という研究領域を切り拓いた画期的作品。 解説 板倉史明

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Posted by ブクログ

ハリウッドにあっても、映画は自由に作られていたわけではない、ということを押さえておく必要があるだろう。強制力を伴った自主倫理規定(ヘイズ・コード)により、シナリオは検閲され、公序良俗に反する内容は排除された。

さらに第二次大戦が始まり、一部の映画人は軍に身を置き、プロパガンダ映画を作ることになる。その時、動員体制のためにあえて無視していた国内問題が意図せず顕になる。人種問題のことである。

戦争中、男性客も海外市場も失った映画業界は、国内の女性客向けの作品を量産した。しかし、戦後まもない頃、家庭を顧みず社会的成功を追求した女性の挫折を描く作品が登場する。男性の労働社会への、女性の家庭への回帰をいち早く取り入れようとしたのである。

映画の製作には、このような政治力学が働いていることを一次資料によって立証してゆく好著である。

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2025年08月17日

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