書いてある内容はそれなりに面白いが、あまりの読みにくさに閉口。
「だ、である」文がひたすら一本調子で続き、私に語りかけられている感じがしない。例えるなら、大学の階段教室でノートをボツボツと読み上げる講義。
ただしこの老先生、授業の後で研究室を訪れて一人で話を聞くと心に響く。「身体」ということばの"身
...続きを読む"が示している範囲と"体"が示している範囲との違いって何だろう、とか。
なので、読んでいるときには「自分しか生徒がいない広い教室の一番前か二番目の列に座って、聞き取りにくい先生のことばに耳を傾ける」自分をイメージすると(しないと)読み進められた。
とは言うものの、主張に納得感なるほど感が薄いのでこれまた読みにくい。
例えば、盲目の少年が笑っている写真を元に、面白いという感情と笑う動作は学習されたものではなく生得的であるという。これはOKな例。でも、日本語のからだ言葉を元に、ある動作が生得的であるというのはNGだと思う。特定の文化に特有の身体症状ということもあるのに、考慮されているように読めない。
過去の論文審査などで指摘されたからなのか、時々「これは科学的な手続きに従って検証された」という断わりが登場するのがかえって痛々しい。
内容は悪くないけど、容物が悪い。それを受け入れられる人だけどうぞ。