高安秀樹のレビュー一覧
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為替市場における裁定機会の存在。ミクロ経済学とマクロ経済学をつなげる物理学の繰り込み。経済学が科学になりきれないのは素直に観測事実を認める体質が欠けているから、という著者の本音と思しき記述があった。エコノフィジックスもカオス、フラクタル、遺伝的アルゴリズム等あって面白そう。小さな誤差を増幅するメカニズムがカオス現象につながるところからフラクタルとの関連性への理解がしやすかった。売買の過程で生じる変化はお金の観点で不連続変化なので、解析や予測が難しい。べき分布とフラクタルの関係。アトラクタも出てきた。根が物理の人が書いているので、個人的には分かりやすくとても面白かった。
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ネタバレ古典的な経済学に対する批判の一つとして、線形理論に留まっている、というものがある。つまり、通貨量を増やせば通貨安に動くなど、単純な関係性しか理論に織り込まれていないという批判だ。これに対する回答の一つが、経済学に非線形性を導入する経済物理学だろう。
本書では、日本の経済物理学の最前線を走る著者が、世界の経済物理学の歴史を語っている。まだまだ日本は世界レベルに追い付いていないようなので、がんばって追いつき追いぬいて欲しい。
経済物理学の誕生に至る著者の活躍の話から、経済物理学という分野、特に著者の周辺で行われている研究を紹介している啓蒙書。相場の変動幅が正規分布ではなくべき分布に従うと仮 -
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ネタバレ[ 内容 ]
混迷を極める世界の中で、私たちはどこへ進んでいくのか。
経済物理学はカオスやフラクタルといった物理学の手法と概念を活用して、データに基づいて実証的に現実の経済現象に立ち向かう、まったく新しい科学の分野である。
まだ誕生して10年にも満たないほどの若い研究分野だが、これまでの経済学の常識を覆す発見や斬新なアイディアが次から次へと報告されている。
複雑で不安定なお金の世界にも、ものの世界と同じような自然法則が成立している。
―エコノフィジックスという新しい地図を手に入れ、これから進むべき未来のお金の世界をいっしょに探検してみよう。
[ 目次 ]
1章 エコノフィジックスの誕生
2章 -
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★べき分布からフラクタルへ★多量のデータを解析すれば、金融商品の価格変動の分布は、正規分布よりすそ野が広いべき分布になるとのこと。これは理論ではなく観測の結果。だからこそ予想以上の危機が頻発する。べき分布を基にしたブラックショールズ式がなぜ生まれないのかと不思議に思うが、データを増やすほど平均や分散が逆に拡散してしまう(とんでもない値が混じってしまう)のがべき分布の特徴だけに、数学的に扱いが難しいようだ。
文末に記してある研究の価値評価の考え方は興味深い。研究開発にどれだけカネとヒトを費やすかには、研究開発の工程をシナリオごとに考えて中止時期も考慮したうえで全体の価値を判断する方法(リアルオ -
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物理の手法を用いて、現実の経済現象(主に金融)を分析しています、というお話。『カオス』や『フラクタル』、『エントロピー』と言った言葉がぽつぽつ出てくるあたり、「『複雑系』とは何か」(講談社現代新書)と重なる部分もあるけど、対象が経済だけあって、こっちの方が入りやすい(あちらは人工生命とかが話の中心)。
従来の経済学が見落としているモノ、また経済物理学は金融工学とは違う、といった件が興味深かった(自分なりの解釈では、金融工学は「市場のゆらぎ」を過小評価し過ぎている)。
しかし何より注視すべきなのは、その「市場のゆらぎ」という言葉であると思う。
「市場のゆらぎ」という考え?が、本書全編にわたって -
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前半部では経済学に物理学の概念を持ち込んだエコノフィジクスという領域において,新たな知見が得られた事例を紹介する。例えばくりこみというものの見方。ある種の市場価格の時系列データがスケール変換に対して不変であることを言っている。粗視化は物理学の物の見方の一つである。たとえば物性物理学においては準粒子描像など,それによって系の普遍性が見えてくる。
ではエコノフィジクスではどういう相互作用が働き,そのような見方が有効になるのだろう?要するにべき乗則の起源は何だろう。このあたり,多くの説明的試みがされたであろうことは想像に難くない。個人的にはそのあたりの精密な説明が紹介されているともっと嬉しかった。
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経済に物理学の理論を適用して、経済を説明しようという試みのようだが、コアの部分が良く理解できない。市場の動向、株価や通貨の取引については、理論的説明ができるようだ。現代のインターネットを利用した取引には、物理学の理論と相性が良いのかもしれない。
6章 お金の特性で、お金の説明から始まり、現代の電子取引の解説は分かりやすかった。
<石のお金の偽造は難しい。電子化されているお金の、億(という単位)の金額は何かを買うためのものではない。>
7章 企業通貨システムも現代ネット環境があるから成り立つと思われる事柄が説明されている。
<ポイント・マイレッジ⇒ロックイン効果。複合電子通貨のメリット・デメ -
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ネタバレ科学的な思考を持った人には、経済物理学って普通のアプローチじゃないのか???
部分に分解したり、単純化したり、それをまた積み上げたり。
それって普通の科学的手法でしょう?
ではいわゆる普通の経済学っていったい何をしているの?
エコノフィジックスって新しい分野か?
物理学って名札をつけた人が、経済について論じたらそれがエコノフィジックス?
経済学の名札をつけた人が近い手法をとったらそれは何?
いろんな現象解析の道具が経済現象にも適用できるということは分かった。
そして、その結果が有益なことも。
経済現象にべき乗則がでるのは面白いと思う。
しかし、法則が明らかになれば、それによって法則の方が変