飯野友幸のレビュー一覧
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18世紀末、若きフォアトップマン、ビリー・バッドは、商船ライツ・オブ・マン号から、英国軍艦ベリポテント豪に強制徴用された。強制徴用とは、対ナポレオン戦争の時に、絶対的に水夫が不足していたイギリスが、商船や酒場から、拉致するようにして水夫を集めた、かなり無茶なやり方だった。人材不足が極まった時は、囚人を水夫に採用することもあったそうだ。本意で集められたわけではないため、水夫の反乱も起こっている。文中でもノア湾での反乱について言及されている。つまり、強制徴用した船の船長や、もとからいた乗組員には、強制徴用された水夫達に対して、もとから不信感があった。
その事を前提にすると、ビリーの行為に対す -
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メルヴィル 「 ビリーバッド 」著者の遺作 中編小説
キリスト教道徳の寓話にも読めるし、共同体の中で 秩序と苦悩を描いた小説にも読める。著者の人生の総決算としての思想哲学 にも感じる。
著者が描きたかったのは 多様で複雑で曖昧な現実の世界。そんな世界で どのように秩序を守るのかを 伝えたかった と捉えた
船中という人種や身分が多様な共同体が舞台。一神教的な 善と悪の二項対立では 共同体の秩序は保たれない。善の象徴である主人公のビリーバッド、知性の象徴であるヴィア艦長。ヴィア艦長の苦悩と共同体の秩序を保つ姿が印象的
キリスト教道徳の寓話
*狡知に対して 経験、才覚に欠け〜なりふり構わず -
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ネタバレ【本の内容】
[ 目次 ]
自己なるものをおれは歌う
おれにはアメリカの歌声が聴こえる
おれ自身の歌(抄)
おれは電熱の肉体を歌う(抄)
おれはルイジアナで一本の樫の木が生えているのを見た
オープンロードの歌(抄)
揺れやまぬゆりかごから
鷹の睦みあい
農家の図
ランナー
浅瀬をわたる騎兵隊
灰色にかすむ払暁の野営の光景
リラの花が先ごろ戸口に咲いて(抄)
おお船長!わが船長!
ふらりと出歩く子がいた
結局、わたしは
インドへの道(抄)
音も立てずじっとしている一匹の蜘蛛
さらば、わがうちなる空想の人よ!
Leaves of Grass(英文原典)
[ POP ]
[ おすすめ度 ] -
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どこかでオススメとして紹介されていた本。
ハーマン・メルヴィルははじめて読んだ。
作品もモビーディックしか知らないし、なんか怖そう&暗そうな作品としか知らなかった…。
本書も不穏な終わり方をするらしいことははじめからチラチラと提示されている。
ストーリーは短いし、実際かなり薄い本なのだけど、前半は作者自身が言うように、舞台装置の説明以外のことでも寄り道が多くて、なかなかストーリーが動き出さないのでちょっと退屈でした。
そのぶん、中盤でストーリーは突然トップギアに入り、そのままブンブンと突き進んで終了。
え、えー。不穏は不穏だけどそういう方向なんだなあ…。
登場人物三人がオセロそのまん -
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なんとなく、なんとなくだけどニーチェのツァラトゥストラを思い出した。翻訳のべらぼう口調からくるものはかなりあると思うけど、精神よりも肉体を、歴史よりも現在を、伝統よりも命を重んじる思想はニーチェと通じるでしょう。ホイットマンの詩作のうちで取り上げられているものはかなり限られており、さらに全体のうちの半分は英語原詩。文学は学問よりも芸術、その中で小説には幅があるけども、詩と比べると理性的だろう。詩は情感的なだけに、意味と響きのバランスが重要だろう。そういうことを考えると、翻訳はナンセンスな気がする。事実読みながら理性がぐるぐる巡った。違うよな、と思いながらも、原詩をそのまま味わえないアイロニー。