中沢康彦のレビュー一覧
-
Posted by ブクログ
『星野リゾート事件簿』って、名前はすごそうだけど、中身はわりと泥くさい話ばっかり。売上落ちたとか、現場グダグダとか、人が辞めるとか、「それ、うちもあるわ…」ってなるやつ。
で、星野リゾートが何してるかというと、誰かを怒らない。「あの人が悪い」で終わらせない。代わりに、「そう動いちゃう仕組みだったよね?」って考える。人って基本サボるし、忘れるし、勘違いもする。だから気合に頼らない。仕組みでなんとかする。
ルールは細かいし、数字もちゃんと見る。一見ドライだけど、むしろそのほうが現場は安心する。「何やればいいか分からない」が一番しんどいから。ちゃんと決まってるほうが、人は普通に頑張れる。
この本で言ってるのは、「正論を言う人が偉いわけじゃない」ってこと。実際に回らなきゃ意味がない。うまくいかなかったら、精神論じゃなくて、仕組みを疑う。それだけ。
経営の本だけど、会社の話に限らない。家族でも、町内会でも一緒。問題が起きたとき、「誰のせい?」じゃなくて、「どうなってたんだっけ?」って考えられるかどうか。その視点をくれる本。 -
Posted by ブクログ
経営戦略の古典を、経営者が実際の経営に落とし込んできた事例という、意外にもあまり無かったコンセプトの本。
コトラーやポーターなどの巨匠の理論を、愚直に星野リゾートの経営に落とし込み、粘り強く取り組んできた星野社長の信念が窺われる。それは、「書かれている内容の一部を実行するだけでは意味がない」という言葉に表れている。
星野リゾートが運営する各宿泊施設が、どのような市場・競合環境にあり、どのような戦略を選び、どのように社員を巻き込んで実行してきたかが分かり、とても面白く学びになった。
最後の内村鑑三の「成功の秘訣」も胸に響いたし、今後の人生の肝にしていきたい。 -
Posted by ブクログ
先日、北海道のトマムで初めて星野リゾートに宿泊しました。どの様な考えの元設計や運営をしているのか気になり、星野リゾート関連の本を初めて読みました。
職種は違いますが、参考に出来る事も多くありました。その中でも印象に残った事が三つ。
一つ目、美味しさ保証。
アルツ磐梯スキー場のカレーにて、味を追求し美味しく無かったら全額返金の美味しさ保証を実行。
従業員からは美味しくても返金要求が止まらないと予想し反発があったが、いざやって見るとその様な事はなかった。美味しさを追求する為に味を変え、一つのご指摘から即調査・行動をする。従業員の意識が上がったとの事だった。
従業員の意識が全てだと感じた。実際にプロジェクトを押し切り実行させ納得させる。どんな職種でも当てはまるし、それが出来ないと品質と従業員の意識は上がらないと勉強になりました。
二つ目、経営ビジョンの共有。
会社はどうなりたいのか?目標は何か?それを行う為に何をするのか?の共有は非常に大事だと感じた。あたり前かもしれないが、会社、部門、で明確になっていない。トップや部門長にはそれを明確に共有する。それが出来てくると意思疎通が向上し、さらに成長出来ると感じた。
三つ目、トップダウンではなく自分の判断で行動してもらう。
会社のビジョンを明確にして、それに対して自覚と責任を持って仕事をしてもらう。それが出来てればトップダウンは必要ない。しかし正直難しい部分も多いと感じる。一番はそれらを踏まえた環境作りから始める必要があると感じた。 -
Posted by ブクログ
非常に読みやすくてよかった。
なぜこれほど星野リゾートが成長できるかわかった。
つまり、これだけセオリーを大事にして、着実に実践する人もいない。
まずそもそも解決策のセオリーの前に課題発見が必要。
課題をきちっととらえる能力が突出しているのだろう。
その上で、それにあったセオリーをつまみ食いではなく全てのプロセスを愚直に実行すると。
これが異常に難しい。全てやるには社員の理解・オペレーションの整備・実行のフォロー・PDCAなどやるにあたっての障壁は鬼のようにある。
それをきちっと整理して実行する飛び抜けた能力・パッション・柔軟性がある人だと思った。
この本で紹介されていた書籍は全て読んでみたい。
マーケティング周りと人材開発まわりのバランスも良く好感。 -
Posted by ブクログ
星野佳路解説より
大きく変わったことの1つは、代表を務める私の施設運営へのかかわり方だ。「事件簿」のころ、私は全ての施設の運営により深くかかわっていた。運営を開始するときにはコンセプト委員会を立ち上げ、定期的に現場の会議にも参加し、課題もつぶさに見ていた。 しかし、社内体制が整備されてきたことによって、最近では私が施設の運営に直接かかわるケースは少なくなっている。今ではそれを経営委員会にあたる「赤岩会議」のメンバーが機能別に担って いる。運営施設数が増加し、社員数が増え、事業規模が拡大していることに合わせて、星野リゾートのマネジメント手法も、当然ながら変わっていかなければならない。
振り返れば、各施設の詳細な運営にかかわっていたときにも、私は「自分が現場を訪問してできることは限られる」と思ってきた。現場で何かに気づいたとしても、いつもいるわけではないから起きている事象はたまたまのことかもしれない。にもかかわらず、それをとらえて意見を述べたり指示を出したりするとしても、正しい方向とは限らない。現場を一番よく知るのはやはり、毎日そこで働いているスタッフであり、日々運営を担当しているチームが自ら解決策を考えることを意識していた。サービスの質を向上させ継続するには、現場のチームメンバーが目標とする最終像に共感し、自ら考え、発想し、行動するしか方法はなく、経営の仕事はそういうチーム活動をサポートする環境を整えることだ。
これは米国の経営学者、ケン・ブランチャードのエンパワーメント理論において、重要な要素として取り上げられている。そのプロセスにおいて起こるべくして起こっていることが「事件」なのである。
ドラッカーと「事件」
「事件簿」が世の中に出てから12年が経過し、組織や経営体制が進化してきたにもかかわらず、星野リゾート内には、相変わらず事件が日常的に起こっている。
「なぜ事件がなくならないのか」「多くの事件が日々発生することは問題ではないのか」と思う人がいるかも知れない。しかし、リゾートや温泉旅館で発生しているさまざまな事象に、現場チームが果敢にチャレンジすれば、当然いろいろな事件は起こるのであり、事件を起こさない経営をしようとは思っていない。おそらくどんな会社でも、 最前線の現場ではさまざまな事件は起こっているはずだ。起きている事件を組織の成長のチャンスとして捉えることが重要だ。
米国の経営学者、ピーター・ドラッカーは著書『イノベーションと企業家精神』において、イノベーションが起きる7つの機会について記している。
7つのうち1番目が「予期せぬ成功と失敗を利用する」ことだ。 星野リゾートで起こっている事件とは「予期せぬ失敗」であり、つまりそれはイノベーションにつながる可能性のある機会といえる。
実際、事件に向き合う社員のチームがたどりついた解決策が星野リゾート全体で採用されたケースは多々存在し、それがサービスの差異化につながっている。つまり継続的に発生する事件は、 現場チームに大胆な発想と行動を強制的に促し、それが星野リゾートの組織にとって重要な イノベーションにつながってきたのである。こうした経験を経て、私にとって「予期せぬ失敗」 が7つのなかで一番好きなチャンスとなった。
事件の共有は組織を強くする
事件を組織の中でイノベーションの機会ととらえ、組織の成長と進化につなげて行くための前提条件がフラットな組織文化だ。
星野リゾートの接客現場では、小さな事件は毎日無数に起き、直面しているスタッフが知恵を 悪戦苦闘している。事件が起きるのはサービスの最前線なので、違った内容が起きることも多々あるが、似たような事は沢山起きているはずだ。いずれにしても、それらを可能な限り共有することは、以下の2つの理由で重要であると考える。
①似た事象の解決策を共有することで、会社全体の基準として育ち、それが組織を強くする。
②特異な事象であっても共有することで、そのときにチームが何を発想してどう行動し、どんな結果が得られたのか、という経験を伝える。これによって、組織が効果的なプロセスについて学習する。
つまり、これは事件と向き合った人ひとりのスタッフの経験を、会社のナレッジとして蓄積していくということでもある。 そしてそのなかにダイヤモンドの原石のような大きなイノベー ションが隠れていると考えている。大事なのは、事件とは避けようとすべきことでなく、 活用すべき体験である、ということだ。そのためには、事件が起きた原因を個人の評価につなげようとする仕組みや組織文化はマイナスになる。 そういう文化のなかでは、我々は事件を起こさ ないようにするし、万一起きたときにも表面化させないようにするだろう。それではダイヤモンドの原石を見つけることはできない。
フラットな組織文化が事件を支える
フラットな組織文化というと、「会社の組織構造のレイヤーが浅く平らである」ととらえる人が多いが、ここでいうフラットはそれとは違い、組織文化のことを指しており、組織内の人間関係がフラットであることを意味している。組織図上のピラミッド構造がどんなにレイヤーがあっても、そのなかの人間関係がフラットということは可能だ。
フラットな組織文化の構成員は、それぞれの役割と権限が明確になっているが、それ以外においてはフラットな関係であり、言いたいことを、言いたい人に、言いたいときに言えるような人間関係が維持されている状態を指す。私は現場チームが事件に遭遇したときに正しい経営判断にたどりつくためには、チーム内で正しい議論ができる環境が必要であると考えており、そのためには普段からフラットな人間関係が不可欠なのである。
そして、それは日々起こる事件をチームで解決していくために必要な環境でもある。フラットな組織文化が定着しているチームでは、スタッフは議論をするときにお互いに遠慮しない。それは私も同じであり、フラットな組織文化の一員として議論するときに「温かく見守る」「任せてみる」といった気持ちはさらさらなく、言いたいことを言いたいときに主張している。正しい議論においては、「誰が言っているのか」が重視されるのではなく、「何が正解に近いのか」が重視され、そこにチームの結論が自然に帰結していく組織を目指している。
私はまだまだスタッフとの議論には負けないと自負している。それは権限に裏打ちされたポジ ションがあるからでなく、単に論理性と説得力で負けないと思っているのである。しかし近年、 議論しているなかで私にはない発想を目の当たりにする機会が増えていることも感じていて、そういう主張に自然に結論が帰結していくことを体験するときに、この組織の進化を感じ、誇りに思うことが増えてきた。
そういう体験の中で気づくことは、私が重視しているのは結論ではなく、結論にいたるまでのプロセスであるということだ。自律的なチームのなかで、正しく十分な情報に基づき熟慮し、提供するサービスに対して情熱を持ち、論理的に発想する正しい議論が行われているのであれば、 私は結論に実はあまりこだわっていない。 逆に、それらのどれかが欠けていて、かつ発想の論拠が、短期的な成果または過去に誰かが設定した予算などが強く影響しているときに、プロセスの 脆弱(ぜいじゃく)性を強く感じるのである。
議論を重視するからといって、結論は多数決で決めるということはない。 意思決定をする役割を担っているのは、施設の場合ならば総支配人である。 総支配人は必要な意思決定をタイムリーに行う権限と責任がある。
フラットな組織文化における総支配人には、もう2つ大きな役割がある。1つは正しい議論を確保するためにスタッフに経営情報を共有することだ。情報量に差があると、対等な議論にはならない。もう1つはチーム内の議論をファシリテーションをしていくことである。これらはフラットな組織文化を重視する組織のリーダーには重要な能力になってきている。