中谷宇吉郎のレビュー一覧

  • 科学以前の心

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    雪の研究で著名な中谷先生の随筆を福岡先生がチョイスしたアンソロジー。科学の心を平易な言葉で伝えようとしたもので、主観をできるだけ廃したかに見える文章が、実は雄弁であることに気づきます。いい本でした。

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    2015年06月06日
  • 雪

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    実際は学問的な難しいところもありながらも,うつくしく,誰でもわかるように説明する能力はすばらしいものである.この本は実際の研究のほんの一部であるだろう.さらに,あたかも簡単なように書いてあるが,さまざまな工夫や困難のもとになしえた結果であることは少し考えれば想像できる.ともかく,研究をこのような形で発表できる高い技術に感激する.

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    2015年03月24日
  • 科学の方法

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    数学について以下のようなことが書いてあります。
    「数学は人間が考えたものだから人間が全然知らなかったことは出てこない。それでも数学はいわば人類の頭脳が作ったものであるため個人の限界を離れてこの頭脳で問題を考えることができる。」
    科学は人間が考えやすいように自然を捕らえた姿で、科学に用いられる数学も考えやすいように使っている、ということです。
    この主張は科学の限界を明快かつ分かりやすく伝えています。
    講義の速記を元に手を加えたとありますが、よって同じ話が何度も繰り返し登場します。それがうるさくなく効果的に用いられています。面白い本でした。

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    2014年04月05日
  • 科学の方法

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    中谷宇吉郎と言えば『雪』が有名だけど、もしかしたらそれ以上に面白いと思える科学論入門書。中谷さんは科学を人間と自然との共同作業だと考えており、自然科学といえども自然の全てを知るべき学問ではないとその限界をきちんと見定めた上で、解ける問題をいかに観測し、理論化していくかについて話を進めていく。中でも数学についてが興味深く、「数学は人類の共有資産であり、個人の頭脳では到達し得られない所まで人間の思考を導いてくれるもの」という視点は目から鱗だった。こんなにも科学を人間的に感じられた経験は、他にないと言っていい。

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    2013年12月20日
  • 雪

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    「雪の結晶は、天から送られた手紙である」という趣深い一文で有名な本作だが、同時にこれほどまでに科学的誠実さに溢れた本が他にあるだろうか。降り積もる雪のひと欠片を丁寧に観測し、吹きすさぶ冬景色の中、時には氷点下の実験室で根気強く分析を続けていく。やがてその研究は雪の結晶の多様性を明らかにし、世界初の人工雪の作成という偉業に結び付いた。エッセイ風に書かれた文章は理性的でありながらも簡潔な説明の中から気品の良さが滲み出ており、本人曰く「茶漬けのような味」の内容は滑らかに入ってくる。自然科学入門として最良の一冊。

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    2013年12月11日
  • 科学以前の心

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    雪の研究に生涯をささげ、世界で初めて人工雪の生成に成功した中谷宇吉郎の随筆を、生物学者・福岡伸一がセレクトしたもの。編者の言葉として、「精密な知性とみずみずしい感性が織りなす珠玉のエッセイ」という表現があるが、まさにその通りだと思う。特に個人的に心を揺さぶられるのが、子供の頃のエピソードを綴った数々。なぜかキラキラと輝くようなまぶしさというか、ジンワリ湧き出るようななつかしさというか、不思議な温かさを感じるのは、やはり筆者の人間性のなせる技なのだろうか。時代の細やかな描写もさることながら、科学、気象、文化、コンピュータ、原子力に至るまで幅広いテーマが収められており、中でも原子の力が原爆という形

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    2013年08月23日
  • 科学の方法

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    ネタバレ

    「科学的である」とはどういうことか、についてのエッセイ。

    かなり古い本のため、現在分かっていることとどれくらい合っているのか
    分からないが、現代物理学の基礎になった重大な発見の周辺の
    エピソードは、有名な内容だが、何度読んでも面白い。

    本書の大まかなメッセージは、
    科学は再現可能であることが必要である、ということで、
    再現が難しい事象については適用しにくい。
    統計手法によって、全体としての再現性は得られたが、
    一つひとつの挙動については今の科学では解明できそうもない。
    だが過去にも科学者は制約の中でさまざまな発見をして
    知識を深めており、まだまだ未解明で残された領域についても
    少しずつ知識

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    2013年07月02日
  • 科学の方法

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    ネタバレ

    頂いた本。
    科学とは自然世界の切り取り方の一つにすぎず、多くの仮定の上に成立した「非現実的」な概念であることや、科学の役目・限界について再認識することができた。
    古い本だが、今日の科学に対しても、振舞い方は不変だと思う。

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    2012年04月14日
  • 雪

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    「千夜千冊」の一冊目に上がっている『雪』。昭和13年に中谷宇吉郎博士によって書かれた作品です。(ちなみに、世界で初めて人工雪の実験に成功した方だとか)

    内容は雪の研究の歴史、日常から見た雪(主に災害について)、雪の結晶について、そして初期の人工雪を作る過程。中でも人工雪を研究する箇所については、工夫のほどが分かりやすく書かれているので、臨場感も味わえます。

    寒いから雪が降るというだけではなく、空で何かが起こっている結果として雪が降ってくる。雪の結晶はその何かを知るための暗号。
    文学的ではなく、科学的に冬を味わうのもいいかもしれない、と思う一冊でした。

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    2012年01月10日
  • 科学の方法

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    科学の限界について成り立ちや定義から解説する本。これは面白いです。例えば統計を取る必要性、誤差が存在することの気持ち悪さ。そういった今まで自分の中に溜まっていた科学に関する疑念や不安感をわかりやすい形にして説明されていました。科学は絶対的な存在ではなく、あくまで人間が自然を分析することで考えられた正しいであろうものを集めて、都合のいいものを使っているという説は新鮮でした。知識量は高校の授業+α位なので大学生にオススメ。ただこの本が出版されたのは約50年前。誰か現在の科学に沿った改訂版を書いてくれないかな。

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    2011年12月14日
  • 科学の方法

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    [ 内容 ]
    人工頭脳,原子力の開発、人工衛星など自然科学の発展はめざましい。
    しかし同時にその将来のありかたについて論議がまき起っている。
    著者は、自然科学の本質と方法を分析し、今日の科学によって解ける問題と解けない問題とを明らかにし、自然の深さと科学の限界を知ってこそ次の新しい分野を開拓できると説く。
    深い思索の明晰な展開。

    [ 目次 ]


    [ POP ]


    [ おすすめ度 ]

    ☆☆☆☆☆☆☆ おすすめ度
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    ☆☆☆☆☆☆☆ 読後の個人的な満足度
    共感度(空振り三振・一部・参った!)

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    2011年05月14日
  • 雪

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    この本の読みやすさの1つは中谷博士の実験がある意味でとても原始的な方法によっていることにもあるような気がします。  とかく最先端の理系の研究を表した書物は「専門家でなければ理解できない複雑な理論や関数」に溢れ、実験装置も高額で技術の粋を極め(≒ 素人にはその装置の構造そのものが理解できない)、実験手法も素人には複雑怪奇に過ぎて完璧にお手上げ状態・・・・となってしまうものが多いのに対し、昭和10年代という時代・・・・ということもあるのでしょうけれど、中谷博士のこの研究はある意味で素人にもイメージしやすいものだと思うんですよね。  考えの進め方(≒ 理論構築)に関しても難しい部分を廃して書かれてい

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    2010年10月02日
  • 雪

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    「この本は雪の結晶について私が北海道で行った研究の過程およびその結果をなるべくわかりやすく書いたものである。...ただ、自然の色々な現象について正当な理解を持ちたいと思っておられる人々に、すこしでも自然現象に対する興味を喚起する機縁になれば有難いと思って書いたものである。」このまえがきの通り、雪の研究の歴史、雪の種類、雪の生成過程、雪を作る実験について、専門的な内容を、やさしい言葉で書いてある。彼の研究の恩恵を私たちは今も受けているのだろう。

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    2009年10月07日
  • 雪

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    雪博士・中谷宇吉郎先生の雪に対する熱き想いが綴られた一冊。中谷先生の文体はお人柄がでていてとてもわかりやすいです。

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    2009年10月04日
  • 雪

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    不思議から科学へ。これを読むと科学の研究とは、なんて楽しそうなんだろうと思う。特にパイオニアの研究は面白いだろう。雪についての基本的な知識も得られる。

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    2009年10月07日
  • 科学と人生

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    人口雪を完成させた筆者。
    はじめの、政治にとって必要なことは科学技術ではなく科学者にとって必要な論理的な考え方でる。
    いうのが印象深かった。

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    2025年11月17日
  • 科学以前の心

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    積読解消。前半は雪の結晶を天皇陛下がご覧になるという行幸について。戦争の前中後で中谷博士の周りで起きたことなどを肩肘張らずに書いている。どうして雪の研究をするにいたったか,旧制高校からの遍歴も興味深い。完全なエリート的人生でないところにも人間味を感じやすいのか。いわゆる神秘的なことに対する考えも興味深かった。科学者であるけれど,不可知として切り捨てるのではなく,その不可知な部分にある神秘を面白がっているように思える。科学の言葉を持たなかった時代も「行」として科学的概念や方法を生み出していたことも面白い。

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    2025年05月28日
  • 中谷宇吉郎 雪を作る話

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    雪博士こと、中谷宇吉郎のエッセイ。

    1936年に大学の低温実験室にて人工雪の製作に世界で初めて成功。1940年代に北大に低温科学研究所が設立されることが決まり、1943年に主任研究員に。その頃の事が書かれていて、中谷は、実験室の中と外の温度差が身体的にキツくて、若い学生に任せたみたいな記載があったから、老年の話かと思ったが、まだ40代。今と年齢の感覚が随分違う。

    師匠であった寺田寅彦との思い出も綴られる。そうだ、寺田寅彦から中谷宇吉郎に辿り着いたのだった。「雪は天から送られた手紙」。なんだか詩集のようだ。そして、雪の降る北海道で研究や作業に没頭する、その静かな情景や日常には憧れるものがある

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    2024年06月08日
  • 雪と人生

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     雪の研究で有名な著者はまた、恩師寺田寅彦と同じく随筆の書き手としても名高い。

     自分の生まれ故郷での想い出を語った、子供時代に上がることを許されて垣間見た「御殿の生活」や、同じく懐かしさに溢れた「真夏の日本海」。
     雪の人工結晶を作る工夫や苦労、楽しさを語る「雪を作る話」、「雪雑記」、静養先の伊豆海岸であがる雑魚を油絵で描き、その色や光の具合いを精密に捉えた「雑魚図譜」。

     戦前の樺太への旅を書いた「ツンドラへの旅」では、カラフトにおいて、岩波新書をモデルにした樺太叢書というものが刊行されていたことを知った。
     また、「天地創造の話」は、昭和19年夏の昭和新山隆起の観測記録である。

     

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    2022年03月29日
  • 科学と人生

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     角川ソフィア文庫では、『雪と人生』に続く、中谷宇吉郎2冊目の著作。
     標題作の「科学と人生」。敗戦後、科学による国家の再建ということが良く言われたが、それが皮相的なものとならないよう、大事なことは科学的なものの見方、考え方であるとして、具体的な例に拠りながらその大切さを説いていく。

     そのほか、戦前、天皇の行幸時に、人口雪の結晶を天覧に供したことや、戦後御進講をしたことなどの思い出「雪今昔物語」、師である寺田寅彦への敬愛の念がまざまざと感じられる「寺田研究室の思い出」、幸田露伴が科学に大変な興味関心を持っていたことを記した「露伴先生と科学」など、エピソードとしても興味深い。

     終戦の年、

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    2022年03月14日