中谷宇吉郎のレビュー一覧
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この間、長野県へ行く仕事があり、そこで見た雪の結晶に驚かされた。
きれい、を通り越した不思議な精緻さに感動することが出来たのは、以前から中谷宇吉郎に触れていたこともある。なので、この随筆を読むのが、なんだか嬉しかった。
「自分の眼で一片の雪の結晶を見つめ、自然の持っている美しさと調和とに眼を開くことの方が、ずっと科学的である。非科学の代表は、自分のすぐ眼の前にある自然の巧みを見ないで、むやみと名前や理論などだけを言葉でおぼえることである。」
「科学の発達は、原子爆弾や水素爆弾を作る。それで何百万人とかいう無辜の人間が殺されるようなことが、もし将来この地球上に起ったと仮定した場合、それは政治の責任で、科学の責任ではないという人もあろう。しかし私は、それは科学の責任だと思う。作らなければ、決して使えないからである。」
雪に関する話も面白く、幻想的ですらあるが、二部にある「天地創造の話」「立春の卵」「線香花火」「琵琶湖の水」も、面白い。
普段、なんとなく、大雑把に考えているところを、それは突き詰めると嘘だよ、と切られてしまう鋭さがあるからだ。
また、そこには多分に寺田寅彦の姿も見える。
この時代の科学者たちが見つめた眼は、今も受け継がれているのだろうか。
そうである一方、科学的に考えないものごとの良さも語れるのだから、この人の随筆は、やはり味わうべき名作であると言える。 -
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寺田寅彦について、雪の結晶の中谷宇吉郎が書いた追想録。
この二人の名前が挙がって、買わないわけがない。
寺田寅彦にしても、なんで物理学者がこんなに上手い随筆を書くんだろうと思っていた。
そこに関する答えがあった。
個人の教養が深まるにつれ、随筆が文学のあるかなり重要な領域を占めるようになる。
そこでは文学の意味を「人生の記録と予言」という観点から見るため、主観的真実の記録たる随筆にスポットが当たることになる。
この目的は、結局科学の目指す所と同一だという所に行き着くわけだ。
なるほど、ただひたすら、なるほど、である。
線香花火の火花や、霜柱、風紋、墨。
寺田物理学の「物の理」の触れんとする感性が、なんだか愛おしい。
物理をする者は、「物の理」を学んでいる気持ちを失ってはならない。
これを寺田寅彦が言うから、またやっぱりなるほど、と思ってしまう。
姿勢があっての言葉は、重みが生きている。
(2015.04.03再読)
気になった言葉を引用羅列。
p154「今一つには現在の物理学には、物性の研究に大きい欠けた部門がある。……ところが化粧品の場合と限らず、日常の吾々の生活に密接な関係のあるものは、中間的性質に支配されるものが多い」
p176「オリジナリティというものは、何も無いところから出るものじゃなくて、出来るだけ沢山の人のやったことを利用して、初めて出せるものだからね。」 -
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数学について以下のようなことが書いてあります。
「数学は人間が考えたものだから人間が全然知らなかったことは出てこない。それでも数学はいわば人類の頭脳が作ったものであるため個人の限界を離れてこの頭脳で問題を考えることができる。」
科学は人間が考えやすいように自然を捕らえた姿で、科学に用いられる数学も考えやすいように使っている、ということです。
この主張は科学の限界を明快かつ分かりやすく伝えています。
講義の速記を元に手を加えたとありますが、よって同じ話が何度も繰り返し登場します。それがうるさくなく効果的に用いられています。面白い本でした。 -
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雪の研究に生涯をささげ、世界で初めて人工雪の生成に成功した中谷宇吉郎の随筆を、生物学者・福岡伸一がセレクトしたもの。編者の言葉として、「精密な知性とみずみずしい感性が織りなす珠玉のエッセイ」という表現があるが、まさにその通りだと思う。特に個人的に心を揺さぶられるのが、子供の頃のエピソードを綴った数々。なぜかキラキラと輝くようなまぶしさというか、ジンワリ湧き出るようななつかしさというか、不思議な温かさを感じるのは、やはり筆者の人間性のなせる技なのだろうか。時代の細やかな描写もさることながら、科学、気象、文化、コンピュータ、原子力に至るまで幅広いテーマが収められており、中でも原子の力が原爆という形で実用化されたことの意味を重くとらえた宇吉郎が、「原子力の開放が、人類の文化の滅亡をきたすか、地上に天国を築くか、(中略)それを決定するものは科学ではなく人間性である。」(昭和25年1月「未来の足音」より)と言っているのは、時代を考えると心に響く。しかも、この問題について、人類の半数を占め、子供を味方に持つ女性たちの任務は重いとさえ言っている。
人間だけにとって都合の良い便利さを求めてきた時代の曲がり角に立つ今、本来あるべき方向に向かって舵を切るには何が必要かを見つけるヒントを数多く与えてくれる随筆集といえる。 -
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ネタバレ「科学的である」とはどういうことか、についてのエッセイ。
かなり古い本のため、現在分かっていることとどれくらい合っているのか
分からないが、現代物理学の基礎になった重大な発見の周辺の
エピソードは、有名な内容だが、何度読んでも面白い。
本書の大まかなメッセージは、
科学は再現可能であることが必要である、ということで、
再現が難しい事象については適用しにくい。
統計手法によって、全体としての再現性は得られたが、
一つひとつの挙動については今の科学では解明できそうもない。
だが過去にも科学者は制約の中でさまざまな発見をして
知識を深めており、まだまだ未解明で残された領域についても
少しずつ知識を深めていくに違いない。
…という内容。
エッセイなので、科学の方法について厳密に論証しているわけでもなく、
また著者自身も特にこれだという考えがなさそうである。
だがそれが逆に、自分でニュートラルに考えることができてよかった。 -
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「千夜千冊」の一冊目に上がっている『雪』。昭和13年に中谷宇吉郎博士によって書かれた作品です。(ちなみに、世界で初めて人工雪の実験に成功した方だとか)
内容は雪の研究の歴史、日常から見た雪(主に災害について)、雪の結晶について、そして初期の人工雪を作る過程。中でも人工雪を研究する箇所については、工夫のほどが分かりやすく書かれているので、臨場感も味わえます。
寒いから雪が降るというだけではなく、空で何かが起こっている結果として雪が降ってくる。雪の結晶はその何かを知るための暗号。
文学的ではなく、科学的に冬を味わうのもいいかもしれない、と思う一冊でした。 -
Posted by ブクログ
[ 内容 ]
人工頭脳,原子力の開発、人工衛星など自然科学の発展はめざましい。
しかし同時にその将来のありかたについて論議がまき起っている。
著者は、自然科学の本質と方法を分析し、今日の科学によって解ける問題と解けない問題とを明らかにし、自然の深さと科学の限界を知ってこそ次の新しい分野を開拓できると説く。
深い思索の明晰な展開。
[ 目次 ]
[ POP ]
[ おすすめ度 ]
☆☆☆☆☆☆☆ おすすめ度
☆☆☆☆☆☆☆ 文章
☆☆☆☆☆☆☆ ストーリー
☆☆☆☆☆☆☆ メッセージ性
☆☆☆☆☆☆☆ 冒険性
☆☆☆☆☆☆☆ 読後の個人的な満足度
共感度(空振り三振・一部・参った!)
読書の速度(時間がかかった・普通・一気に読んだ)
[ 関連図書 ]
[ 参考となる書評 ] -
Posted by ブクログ
この本の読みやすさの1つは中谷博士の実験がある意味でとても原始的な方法によっていることにもあるような気がします。 とかく最先端の理系の研究を表した書物は「専門家でなければ理解できない複雑な理論や関数」に溢れ、実験装置も高額で技術の粋を極め(≒ 素人にはその装置の構造そのものが理解できない)、実験手法も素人には複雑怪奇に過ぎて完璧にお手上げ状態・・・・となってしまうものが多いのに対し、昭和10年代という時代・・・・ということもあるのでしょうけれど、中谷博士のこの研究はある意味で素人にもイメージしやすいものだと思うんですよね。 考えの進め方(≒ 理論構築)に関しても難しい部分を廃して書かれているということもあるのでしょうけれど、あまり俗世からかけ離れすぎた理屈ではないがために「なるほど、なるほど。 ふんふん♪ へぇ~、そうか! そういう風に考えていくんだ!」とスンナリついていける気にさせてくれちゃっているところがあるように思います。
中谷博士がヨーロッパ留学を終え、現在の北大の助教授として赴任される際に、恩師である寺田博士に
「君、新しい所へ行っても、研究費が足りないから研究ができないということと、雑用が多くて仕事ができないということは決して言わないようにしたまえ。」
と諭され、それまで研究されていたテーマを北大で引き続き追求するのが環境的に困難だったので、ある意味手慰みに始めたのがこの「雪の研究」だったという経緯があるらしいのですが、まさにその研究者にとってはある種のマイナス面だったところが、かえってこの本にとっつきやすさを与えているのは面白いことだなぁ・・・・と思うんですよね。 まあ、往々にしてどんな分野でもそのパイオニアの考えることは案外親しみやすい発想から出ているものだとは思うんですけど・・・・・。
(全文はブログにて)