林芙美子のレビュー一覧

  • 掌の読書会 柚木麻子と読む 林芙美子
    「柚木麻子と読む」とあるので、一作ごとに解説が入るのかと思ったら、そういう形式ではなかった。
    柚木麻子・編の林芙美子の短編集である。
    こういう作品集は、編者が原作者のどういった部分を好んでいるかで、色合いが変わってくることもある。
    やはり「柚木麻子と読む」で良いのだろう。

    「はじめに」で、林芙美子...続きを読む
  • トランク 林芙美子大陸小説集
    人生煮詰まると、フッと今いるところから飛び立ちたくなる。
    でもおいそれと、そうも行かない。
    そこをためらわず飛び立ってしまうのが林芙美子だ。
    ただし、芙美子の時代は船旅。
    日数がかかる分だけ出会いもあり、旅情もある。

    この本は、芙美子の小説の中から、大陸に渡った人たちを描いた作品を選び出したもの。...続きを読む
  • 清貧の書/屋根裏の椅子
     林芙美子氏というと、森光子さんの放浪記の舞台のでんぐり返りというイメージしかなく、これまで避けてきた私が、この本で4冊目。良くも悪くも流行作家と呼ばれてきたであろう氏のことが少しずつ分かってきたような気がする。
     この短編集では、主人公や彼女を取り巻く人々の生き様や生活状況(広くは社会の状況-貧困...続きを読む
  • 掌の読書会 柚木麻子と読む 林芙美子
    柚木麻子さんの選書ということで手に取った。
    林芙美子さんの本は初読み。
    大正~昭和の女性が主人公の短編集。
    女性のたくましさや潔さが感じられるものが多く、面白かった。
    時代が違っていても、思っていることは案外似ていたりするのかも。
  • 放浪記
    NHK百分で名著での紹介に触発され、放浪記を読み進めております(名前は良く知っていましたが、読んだことが無く)。炭鉱の多い西日本各地(門司、下関、戸畑、若松、佐世保、直方等)を転々とする小さな林芙美子(1903年生まれ)と松本清張(1909年生まれ)の小倉での苦しい暮らしが重なります。あの、海が見え...続きを読む
  • 放浪記
    これも、ヤマザキマリさんの本棚にあったので読みました。
    明治36年に生まれ昭和26年まで生きた林芙美子の三部からなる日記と詩です。


    (P530より)
    死んじまいなよ。何で生きてるんだよ。
    何年生きたって同じことだよ。お前はどうだ?
    生きていたい。死にたくはござらぬぞ…。
    少しは色気も吸いたいし、...続きを読む
  • 貧乏こんちくしょう 林芙美子作品集
     林芙美子の短編小説と若干の詩を集めたアンソロジー。
    「風琴と魚の町」と「清貧の書」は1931(昭和6)年、「晩菊」が1948(昭和23)年、「骨」「牛肉」「下町」は1949(昭和24)年の作。他の作品はデータが無く、分からない。
     巻頭の「風琴と魚の町」は、確か『放浪記』(1930)の中でも言及の...続きを読む
  • 放浪記
    林芙美子の一歳年上で貧困と不幸を絵に描いたような中で生き延び23歳で獄中自殺した金子文子「何が私をこうさせたか」とどうしても比較してしまう。林芙美子の貧乏は確かにそうなのだが、根底が明るい。夢を持てる適度な貧乏なのだろう。大正から昭和の初め、社会に貧富の差意識が生まれた時代。虐待や搾取を受け続けた金...続きを読む
  • 放浪記
    前半、貧しい暮らしぶりを読むにつれ、しみったれた話だなやだやだと思っていたが、次第に引き込まれる。

    すさまじく金がなく寒いひもじいひもじいたべたい苦しい、という暮らしの中での、彼女の生きる力、伸びたい力の強さ、感性の鋭さとみずみずしさにおどろく。

    作家になりたい、書きたくて書きたくてたまらない、...続きを読む
  • 放浪記
    続けて読んだ林芙美子『放浪記』とリリー・フランキー『東京タワー』

     書かれたのは1930年と2005年、時代は半世紀以上はなれているけれどもなんと似ていることだろう!醸すもの雰囲気のことであって個性はちがうのだけども。

     作者の生い立ち、経験を文学に昇華している
     日記風
     尋常な家庭、両親では...続きを読む
  • 放浪記
     故 森光子さんが2000回以上も公演を行った舞台の原作。たまたま実家の本棚で見つけ、読んでみたいと積読したまま約20年も経ってしまった。
     一頁目「放浪記以前」という章。
     「私は宿命的に放浪者である。私は古里というものを持たない。・・・故郷に入れられなかった両親を持つ私は、したがって旅が古里であ...続きを読む
  • 放浪記
    大正時代、極貧状態にあった女性の日記。金、飯、男、家族、周囲の人間の話と、詩が主。半ば呪いめいた愚痴と、その日に何かあったかを書き連ねた内容。3つの本をまとめた内容になっているが、そのうち1巻目にあたる部分の内容は中々悲惨である。セルロイド工場で人形に永遠と色付けを行っている辺りは特に印象に残った。...続きを読む
  • 放浪記
    林芙美子の若いころの孤軍奮闘ぶりがすごいのだけど、更級日記の作者と正反対に実にさっぱりしていて男性的な文章が気持ちよし。
    お金がほしいのだけど、安定している月給取りの仕事はどうもダメみたいですぐに辞めてしまう林さん。
    カフェ勤めでもヒマだと店の隅っこで本を読みふける林さん。
    とっても母親思いの林さん...続きを読む
  • 放浪記
    およそ、林芙美子の、前半生の自伝のようなものであるということ。
    今回読んだものは、みすず書房の大人の本棚シリーズにまとめられたもの。
    森まゆみが、解説を書いていて、そちらを読むと、より、理解しやすく感じられました。
    少しは、創作部分もあるらしいのですが、およそ、彼女の日記に近いとのこと。

    ...続きを読む
  • 放浪記
    林芙美子の極貧時代を綴った日記。
    書き出しはあまりにも印象的だが、全編通して力強くしなやかな文章が続く。
    間に挟まれる詩もたくましい。
    (2013.1)
  • 放浪記
    「下駄で歩いた巴里」を読んだとき、林芙美子って貧乏の印象しかなかったけど流行作家になって旅行してるじゃん、と思ったんだけど、これを読んだら、ああやっぱりすごく貧乏ですごく苦労したんだね、と申しわけない気分になった。こんなふうにずっと食べるにもことかくほど貧乏で孤独でみじめな気持ちだったのかなと思うと...続きを読む
  • めし
    主人公の夫婦がいた天神ノ森
     
     しっとりと雨を含んだ木立ちの緑と、濡れた石畳、母親に手を引かれた幼女が歴史の散歩道の赤レンガを踏んで歩いていく。視界の奥に、カラフルなチンチン電車が横切った。
     阿倍野神社の西人口から、天神の森の住宅街を見下ろしながら、東京から移ってきた三千代と初之輔が住んだ家はど...続きを読む
  • 清貧の書/屋根裏の椅子
    主人公らとすれ違う人々の優しさは気まぐれなものだ。困難でも縋らずに独力で歩み、一時寄り添う。女性が堪えればその時は長く続く。
    明るい話ではないが、女性のひたむきさには惹かれる。
  • 放浪記
    読書会 課題図書
    あまりにも著名な「林芙美子」
    でも、じっくり読んだのは初めて
    イマサラですね

    三部の構成 重複するので???
    だったけれど、検閲とかいろいろな事情で
    後からつけられたとのこと

    『私は宿命的に放浪者である』
    極貧の中、それでも上を向き貪欲に本を読み、そして書いた彼女
    生活主義とい...続きを読む
  • 愉快なる地図 台湾・樺太・パリへ
    林芙美子の海外への旅、紀行文集成。その主な行程は以下のようなもの。
     1930年1月 台湾
     1930年8月 大連、ハルビン、杭州、蘇州
     1931年11月~1932年6月 シベリア鉄道を使い、パリ、ロンドンへ
     1934年5月 樺太
     1936年10月 北京

     最初の台湾行こそ準公的な団体行動で...続きを読む