竹田いさみのレビュー一覧
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ネタバレ【感想】
オーストラリアの成り立ちの歴史を俯瞰できる良書。これまで、オーストラリアは穏やかで、多文化を受け入れる寛容さを持った国としての印象があったが、そこに至るまでの紆余曲折があり、また今もって米中などの大国間との関係を模索しているということが、理解できた。ウクライナ戦争において、オーストラリア在住のウクライナ系移民・ロシア系移民に対して、首相が双方を慮った言動をしたという出来事については、オーストラリアらしく心温まるエピソードだと感じた。
【要約】
オーストラリアはもともとイギリスの植民地であるが、その関係性にはアメリカに対する植民地支配における反省が大いに生かされていると言う。まず、アメリカに対する苛烈な支配は独立運動へと繋がったが、オーストラリアに対しては一定程度の自治権を与えることで、良好な関係を築いてきた。よって、オーストラリアには独立記念日が存在しない。また、アメリカも多くの移民が共存している点では、オーストラリアと同様であるが、移民への英語教育が行き渡らないことにより貧民層を生み出し、治安の悪化へと繋がったとの見方がある。この反省を生かし、オーストラリアには移民への英語教育を徹底してきた背景がある。
●多文化国家
オーストラリアは、当初からヨーロッパ系の移民を中心に受け入れてきたものの、そのうち中国系の移民を受け入れることにより、オーストラリア人の雇用が脅かされるようになる。そのため、アジア系移民の定住を制限するため白豪主義を実践してきた。しかし、後年人口減少の解決策として、移民を積極的に受け入れるようになる。この時もやはりヨーロッパ系移民を念頭に置いていたが、審査基準としてのポイント制の導入により優秀なアジア系移民が流入するようになる。またベトナム戦争の難民に対しても、当初は限定的な受け入れであったものの、アジア諸国から非難を受け、多くを受け入れるよう方針の転換を迫られる。このように始まった多文化国家の萌芽であるが、その後オーストラリアは多文化国家を一つの自画像として、歩み始める。
●ミドルパワー
オーストラリアは、当初はボーア戦争や義和団事件に関与することにより、イギリスへの忠誠心を表してきたとも言えるが、後年その忠誠心に対し疑問が生じるようにもなる。
日露戦争が終わり、イギリスが太平洋からの軍備の撤退を表明したため、オーストラリアは自国の軍事力増強を迫られたのである。それは、一時期イギリスと決別し、アメリカとの同盟を重視する動きとしても現れる。
以前は、アメリカなどの大国と並んで世界におけるプレゼンスを発揮することを目指していたが、やがて大国が対応できないニッチな課題、例えばアジアや南太平洋諸国における、紛争の調停や安全保障においてプレゼンスを発揮する。
昨今は、基本的にアメリカとの同盟関係を重視してきているが、自国の利益を最優先とするトランプ政権の台頭により、ここもやはりオーストラリアの軍事力強化を促すこととなっている。
これは、主に積極的に海洋進出や軍事力拡大に進んでいる中国を意識してのことである。中国は、経済的には貿易国としてのパートナーシップを結んできた過去があり、対中・対米のバランス外交を実践してきたが、対応の転換を求められるつつある。 -
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オーストラリアの歴史がとても丁寧に読みやすく書かれており良かったです。
〇〇なのは、3つ理由がある。1に△△、2に□□、3に~といったように最初に要旨を簡潔にまとめて伝えてくれて、その後ひとつひとつ深堀りされていく構成が読みやすかったです。
コアラくらいしかオーストラリアの知識がない人間でしたので、白豪政策も初めて知りました。今のオーストラリアの様子からは想像もつかないものでしたので今更ながら大変驚きました。
先日ニュースサイトの出生率の話題についていた興味深いコメントを読んだとき、時代が変わっても世界が直面する問題は変わらないのかもと思わされました。
仏が出生率改善に成功したかのように日本では語られるけれど出生率を上げているのは移民で、白人系フランス人は安い賃金の移民に仕事を奪われ就職難なので白人系フランス人の出生率はあがっていないし生活は苦しいという。
白豪政策の始まりとなった、賃金の安い中国人に仕事を奪われる、というところと似ているなと気付きました。
広い土地がすごいと思っていましたが、砂漠が多く、雨が降る地域も限られ住める箇所は総面積に比べると大きくはないというのは衝撃でした。
言われてみればなるほど都市は沿岸部が多いなと気付きます。
首相や政党が変わるだけでガラリとオーストラリアの国としての意向が変わるのが興味深く傍から読む分には面白かったです。
こんな風に振り返るとわかりやすいですが、渦中だったら振り回されると思うのかな。
9.11で唯一首相がアメリカにいたというのは初めて知りました。戦争に参加するのは衝撃が大きいですが、現地にいたからこそ感じたことが行動の原理になっているのかもしれないと思わされます。
中国が輸出相手として大事な相手なのはわかるのですが、オーストラリアはエコを謳う国でありながら、環境破壊につながりそうな中国の経済活動に間接的にエネルギー輸出で関与していることにならないのか?と気になりました。
ワールドカップ予選でアジアにオーストラリアが含まれているのが見た目的に違和感で謎だったのですが歴史を思えば、アジアの一員なのかもと納得できました。
歴史知らないとですね。。 -
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著者は本書の狙いを「大国がデザインした海洋秩序や海洋政策を時系列で整理し把握すること」としており、海洋覇権国家の変遷がよくわかる秀逸な新書だと思う。特に第2章、第3章の米国が海洋覇権を掌握していく過程が興味深かった。また英国が海洋覇権制覇のために築き上げたものが英連邦の原点であることもわかった。そして日露戦争の背後に英国の戦略があったことを知り、現在ウクライナの背後で米英がロシアの弱体化を狙って画策していることと同じ図式にも思える。そして中国による傍若無人な海洋進出が既成事実化していくことに強い懸念を感じ、日本としてはシーパワー国家として、米国、英国、豪州などと協力して、自由で開かれた太平洋、インド洋の維持に向けての貢献を果たすべきであり、貿易国家としての責務があると考える。
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16世紀から18世紀にかけてのイギリスの歴史について書かれたもの。エリザベス女王がいかに海賊をうまく利用して大国を造っていったかがよくわかる。イギリスでは海賊にも英雄が数多く存在し、貴族にまで叙せられているのは驚きだ。印象的な記述を記す。
「フランシス・ドレーク:海賊の英雄」p8
「ジョン・ホーキンズ:女王陛下の海賊」p22
「爵位:Duke(公爵)、Marquis(侯爵)、Earl(伯爵)、Viscount(子爵)、Baron(男爵)ここまで世襲貴族、Baronet(准男爵)、Knight(騎士)」p24
「1582年英国情報関係費は、国家予算の15%」p66
「王室の資金源:1 海賊に盗ませた略奪品の転売、2 黒人奴隷の密輸、3 海外貿易(スパイス、コーヒー、紅茶)」p108
「ロイズでは客の要望に応える店員を朝から晩まで待機させたから、ウェイター、ウェイトレスとよばれた」p167
「エリザベス女王は、国民に密輸を固く禁じる一方で、自身は海賊と組んで奴隷の密輸を強力に推し進めた」p186
「イギリスは16世紀~18世紀の約270年間奴隷貿易を延々と行ってきた歴史をもつ」p195 -
Posted by ブクログ
16世紀のヨーロッパを支配していたのはスペインとポルトガルというカトリックの2大国であり、当時のイギリスは貧しい二流国だった。しかもプロテスタント国家であるイギリスは周囲のカトリック国家からの武力侵攻に怯えなければならない状況で、このまま戦争になればイギリスに勝ち目がないのは明らかだ。どうすれば手っ取り早く強い軍事力を持つ豊かな国になれるだろう。
富国強兵の方法を模索し続けたエリザベス一世が興味を持ったのが「海賊マネー」だ。早速有力な海賊を集めて海賊船団を編成させ、スペインやポルトガルの船を襲撃させた。襲撃した船から高価な商品を略奪して売却すれば現金が手に入るのだ。事実上女王主導の海賊行為だが、さすがに女王が表立つことはできない。そこで民間主導で海賊行為ごとに出資者を募り、秘密裏に女王も大口の出資者として参加するシンジケート方式がとられた。女王が海賊シンジケートの黒幕なのだ。利益が上がれば出資額に応じて分配される。女王の集金マシーンとして大活躍したフランシス・ドレークは世界各地で略奪の限りを尽くし、女王やイギリス国家に巨額な海賊マネーをもたらした。その額は国家予算の3倍にあたるという。
やがてスペインとの戦争が避けられないとなると、海賊たちは集金マシーンにとどまらず、戦闘マシーンとしての使命も背負う事になった。軍事力に劣るイギリスは優れたスパイ組織を作り情報戦を展開し、その情報をもとに海賊がゲリラ的に敵国の船を襲撃して勝利をおさめていった。スペインの無敵艦隊をも破った海賊たちは、イギリスの繁栄に莫大な貢献をしたのだ。エリザベス女王は他国の富を奪うため、そして大国スペインとの戦争に勝利するために海賊たちを大量に動員して活用した。更に海賊を国家の英雄に仕立て上げて人心を掌握したのだ。海賊ドレークは女王からナイトの称号を授かり、特権階級の一員となった。
17世紀に創設され大きな力を持つことになる東インド会社も、設立したのは海賊だった。もちろん主力は海賊船で、当初は略奪とスパイス貿易で富を得た。海賊でもあり貿易商人でもあるホーキンズによる奴隷の略奪と密売から始まった奴隷貿易も莫大な利益をあげた。
16世紀から18世紀にかけてのイギリスはまさに海賊国家であり、その後の繁栄の基を築いたのは海賊たちの略奪行為とそれを国家戦略としたエリザベス一世なのだ。
海賊は間違いなく犯罪者であり略奪は犯罪行為であるにもかかわらず、海賊には英雄とか冒険者などのポジティブなイメージがある。「パイレーツ・オブ・カリビアン」は大人気だが、それも当時のエリザベス一世の海賊ポジティブキャンペーンの影響なのかもしれない。国際政治学者の目から見た「海賊」という切り口で捉えたイギリス史は驚きがたくさんでとても興味深い。「イギリスは紳士の国」なんて誰が言ったのだろう? -
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先日読み終えたのは「世界史に消えた海賊」でした。
今回は「世界史をつくった海賊」。
結論から言えば、世界史、特にエリザベス女王治世下のイギリスにおいて海賊がとっても重要な役割を果たし、それがのちの大英帝国、産業革命、を作り上げたのだということを言っているのは同じ。
「消えた」方は海賊として名をはせた各人物を中心に取り上げているのに対して、この「つくった」方は主にホーキンス・ドレークを要素として取り上げて解説はしているものの、全体的には「毛織物に偏っていた英国の貿易がどのような海賊行為にして発展、変化し、さらには諸外国と外交をしていったのか(英国の、女王の政策としてどうであったのか)」という流れに沿って各章がまとめられていて、とても分かりやすく、そして専門的でもある。
コーヒー、スパイス、奴隷について各章でまとめており、世間一般で信じられている「通説」を否定している点について記述があり、刺激的。
とても面白かった。 -
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おれの期の遠航に便乗した竹田さんの本。日本にとっての海運の重要性、その脅威となる海賊がどこでどの程度起きているのか、ロイズの世界リスク一覧を紹介したり、東南アジアや西アフリカ、インド洋で違う海賊の出自や手口を紹介。インドネシアの海上警察がしょぼいけどマレーシアやベトナムが力入れてる話とか、ソマリア海賊はプントランドのクランが罰金徴収のために作ったコーストガードの成れの果てではとゆう説得力のある説も面白い。ソマリアへの物資の拠点になっているドバイ、もともと密輸を手掛けてた海賊、各国の取り組みと、根絶のためにソマリア本土にマグロなんかの水産業や通商、天然ガスの開発をしたらって提案、天然ガス開発に関するところで民間企業が民間の警備会社を雇い、タンザニアの海軍や警察がそれと連携し海賊への発砲の責任は民間に及ばないようになるPPPという枠組みとか、海賊を知るのにいい本。研究者としてどうゆう視点を持つかとか、そんな意味でも勉強ちなります。
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海賊ブームもあり、海賊の資料本はたくさん世に出回っていますが、そのほとんどがチャールズ・ジョンソンの「イギリス海賊史」と、フィリップ・ゴスの「海賊の世界史」を下敷きにしたもので、あまり目新しいものはありません。
そんな中、この「世界史をつくった海賊」は海賊と世界経済の関係から切り込んでいます。
ジリ貧国家イングランドが海賊を使って大英帝国に成り上がるまでの道のりをドラマティックに描いています。
海賊が国家を救った〈アルマダ海戦〉から始まり、スパイス、コーヒー、紅茶、奴隷などの密貿易、コーヒーハウスから世界初の保険会社が誕生した経緯まで、実に興味深いお話が満載されています。 -
Posted by ブクログ
船乗りになりたかったな~職選び間違えたかしら、とか最近思ってるのだけどwオモシロイ本でした。イギリスが資源がないなか、大国にのし上がって行くために海賊をどのように利用したのかがよくわかる。イギリスの諜報活動というのはこのときから盛んなのね。007とかが出てくる背景が理解できた。最近、佐藤優とかがインテリジェンスについて色んな本を書いてるけど、この時代から既に高度な活動が行われてたのね、と感心。歴史の授業では東インド会社がインド支配のために作られたみたいな語られ方がされるけど、ホントは純粋に利益を得るための海賊集団だったのね、ということが分かる。オモシロイ。