竹田いさみのレビュー一覧
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いつも行っている本屋で一番目立つところに「物語」シリーズ特集が並べられていました。
「物語」シリーズ、こんな面白そうなシリーズを今まで知らなかったなんて、これから読み進めたいと思います。まずは今の自身の業務で最も関わりのある国、オーストラリアから読むこととしました。
オーストラリアと言えば、かつては白豪主義を政策に掲げていた白人国家というイメージでしたが、最近はアジア系移民を寛容に受け入れ多民族国家となっているようです。白豪主義も、日本は白人国家ではありませんが、移民に職を奪われる恐怖から移民を排斥しようし、似たようなことをやってしまうかもしれません。白豪主義を掲げるに至るまでの経緯を知ることで、単に悪名高い白豪主義という理解から一歩深めることができました。
ミドルパワー戦略という言葉はこの本で初めて知りました。オーストラリアといえば、世界に影響力を与える準大国というイメージでしたが、言われて見れば国家面積が広いといってもほぼ砂漠、人口も3,000万人程度、豊かな国でありますが、人口が少ないこともありGDPは世界第13位。数字では大国と呼べないのかもしれませんが、存在感は大きく感じます。それはアメリカやイギリスのような大国が手を出さないような国際問題を、積極的に解決しようとすることで存在感を発揮しているようです。さながらニッチな領域を開拓するベンチャー企業のように。
多民族国家となったオーストラリアが今後どのような国になっていくのか興味深いです。 -
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ネタバレタイトルどおり、海上覇権を英・米が握ってきた歴史を時系列でおさらい。米が捕鯨から世界に乗り出すようになった事情、英から米へ覇権が移っていく過程などが、時系列でよく整理され、一般読者向きで、とてもわかりやすかった。
後半は、海洋ルール形成の顛末、国際ルールに挑戦する中国がやっていること、日本の海保の事情などと現在へつながってくる。
本書を読んで、
過去の流れからポイントをつかみ、現状ニュースで良く見る中国発の海上でのせめぎあいの背景を理解できる基礎知識を得られてよかった。
印象的だった点:
海洋ルールとは、歴史的に強国が決めたことが国際ルールになってきたことを改めて実感した。
結構、強国が自国に有利なことを手前勝手に決めてきたわけで、それを神聖なものと有難がるのは、あくまで国際的に支持されている状況と、その違反を防止する力がある、という条件を備えていなくてはいけない。
驚いたのは、国連の海洋条約をアメリカが批准していないこと! 理由は強国が途上国の深海資源を開発して何が悪い という、手前勝手なもの。
すると、中国が手前勝手な法律を制定し、国際社会に通告してきても、中国側に立ってみれば妥当ということになるではないか。だってアメリカだって勝手なこと言ってんじゃん……強国がルールを作れるんだよねえ、となる。
中国のやってることを、日本人は国際ルールに照らせば明らかにおかしい、と嘲笑う論調を良く見かけるけど、正しい主張がまっすぐ通るわけではない。
中国のやり方は力押しだけでなく、イメージ戦略やそのうち国際社会に黙認させてしまう既成事実つくりなど高度になっている。
最後の章は、海上ルールの順守は海軍によって担保されてきたが、現在は日本の海保が強化されているように、軍と別の組織が担うのが主流になっているとのこと。海保の手に負えない場合は海自に出動要請という流れらしい。
このあたり、微妙だと思った。海保はあくまでも軍隊ではないので、海自がどの時点で出動してくるのかなど難しいものがある。 -
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国際政治の専門家による、海洋における覇権争いの話。スペイン・ポルトガルの大航海時代から、大英帝国、米国へと海洋覇権が移っていくことを詳細に説明している。一部、電信など情報優位のことや石油利権など、海洋とは関係ないことも細かく書かれているが、海の覇権争いについては、わかりやすく納得できる内容であった。
「中国は、国連海洋法条約が作り上げた海洋秩序に挑戦した初めての国家となる」iv
「(米国の捕鯨)鯨油は時計、ミシン、タイプライター、各種機械の潤滑油としても重宝がられ、それ以前に普及していた蜜蝋、植物性油脂、動物の獣脂を原料としていた蝋燭(キャンドル)の灯火は、瞬く間に姿を消した。今から見れば考えられなしことだが、クジラは照明用のオイルのほか、その骨は女性用のコルセットに、そしてヒゲは歯ブラシなどにも利用でき、それ以外としては汚れを落とす洗濯用石鹸として活用されたため、クジラを解体しても廃棄する部分がないほど、クジラ一頭の有用性は極めて高いものであった。鯨製品、鯨油なしの生活が考えられないほど、クジラは生活の必需品になっていた」p55
「動物愛護や海洋環境の観点から、現在のアメリカは捕鯨反対の立場を取り、日本の捕鯨をいたく批判しているが、歴史を振り返るとアメリカこそが捕鯨の先駆者であり、クジラを乱獲して頭数を激減させたいわば当事者なのであった」p56
「ブルックス・ブラザーズの紳士服を、ルーズベルトを筆頭に歴代大統領はこぞって愛用した」p84
「(ルーズベルト)日露戦争の講和会議をポーツマスで開催し、この功績が認められて1906年に、アメリカ人として初のノーベル平和賞を受賞した」p88
「いまだにアメリカは、国連海洋法条約に調印していない。最大の理由は「深海底」とよばれる深い海底における資源開発のあり方をめぐって、反対の立場を示しているからだ」p172
「(米国)国連海洋法条約に加盟していないという事実は重く、アメリカが中国の海洋進出に対して「法の支配」を唱えても、アメリカ自身が国連海洋法条約による「法の支配」を受け入れていないため、中国から逆に批判される立場に追い込まれてしまった」p187
「「法の支配」としての国連海洋法条約を実効性のある海洋秩序として機能させてきたのは、なんといってもアメリカや西側同盟国の軍事力によって担保されているからである。アメリカの軍事力が世界中に展開されていることで、国連海洋法条約も尊重されてきたという現実を忘れてはならない」p183
「(戦後)覇権国家アメリカは、政治的な枠組みとしてトルーマン・ドクトリンを打ち出し、経済的な枠組みとしてマーシャル・プランを実施した」p188
「(2019年)海保の定員は、約1万4000人で、予算は約2500億円」p233 -
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海には公海と領海という区別があったり、領海や接続水域、排他的経済水域など様々な概念で区分されています。
本書はそのような海の秩序がどのような経緯で形成されてきたのかを分かりやすく解説しています。本書によれば海の秩序はその時代で最も大きな発言力を持った国の意向に沿って築かれてきたと言ってよく、その担い手は大航海時代のポルトガル・スペインに始まり、オランダ、イギリス、アメリカと引き継がれ、そして現在はアメリカによる秩序(パックス・アメリカーナ)に中国が挑んでいるという構図になっています。
これらの海洋覇権国家の栄枯盛衰の歴史を本書前半部で、後半は現在の海洋の区分がどのように形成されてきたのか、そしてそれに挑んでいる中国の動向、それに対峙する日本の現状という筋立てで構成されています。
オランダ、イギリス、アメリカが順にそれまでの覇権国家にとって代わって覇権を確立してゆく有様の記述は世界史を海洋を舞台に再構成するような切り口で、大変興味深く読めました。
日本の鎖国を打破したペリー提督はアメリカ西海岸から太平洋を横断したのではなく、大西洋からアフリカ喜望峰を経由してインド洋を過ぎるという西廻りで訪日したという事、第一次世界大戦でドイツが戦局打開を狙ってメキシコに参戦を促した電報がイギリス経由の海底ケーブルを経ていたので、その電報をイギリスが解読していたためにイギリスはアメリカへの参戦を促す決断ができた等々の事実が前半部では紹介されています。
後半部では中国の法律戦(自国に有利になる法解釈を押し付ける)の現状、日本の海上保安庁が海洋の法秩序を守るための組織として世界的にいかにレベルの高い組織であるかといった日本人でも以外と知らない事実なども紹介されています。海上保安庁は海難救助、航路の安全確保、密輸等の犯罪対応、など海に関わる本当に多くの役割を担っているのですね。
中公新書で、書名からちょっと硬い目の印象を受けますが、新聞やニュースに普通に接している程度の常識があれば、かなりの情報を売ることができる1冊だと思います。 -
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後進国だったイギリスは、エリザベス女王の公認の下で海賊を利用した略奪行為を進めて富を蓄えた。後に貿易立国に転換するものの、大英帝国を築くに至った礎は海賊行為だったことがよくわかる。
・1655年、イギリスがジャマイカを軍事領有してスペインのカリブ海支配が幕を閉じた。1670年のマドリード条約において、スペインはイギリス海賊の対策を条件にジャマイカを英領として認めた。
・1651年、イギリス本国と植民地の港からオランダを締め出すことを目的に、貿易をイギリス船または原産国の船舶に限定する航海法が成立した。これに反発して1652〜1672年の3回にわたる英蘭戦争が勃発したが、イギリスが勝利して貿易立国として発展することになり、海賊収入に依存する経済から脱却した。
・スペイン植民地の需要を狙って、イギリス海賊が奴隷の密輸を行ってきたが、イギリスがスペインから奴隷貿易の独占権を獲得したため、海賊に依存する必要はなくなった。1560年代から奴隷制を廃止する1833年までの270年間にわたって奴隷貿易を続けた。
・15世紀末の中国でスパイスを医薬品として消費されていることに目を付けたポルトガル商人がヨーロッパ大陸への貿易を開始した。「中世ヨーロッパ食の生活史」には、スパイスを食肉の保存用に利用した記述はほとんどなく、スパイスを購入することができた富裕層は、保存した食肉ではなく新鮮な肉を食べていた可能性が高い。
・コーヒーの原産地はエチオピアの高原地帯とされ、オスマン帝国がアラビア半島のモカ周辺からサヌアの山岳地帯で栽培するようになった。15世紀初頭、イエメンのスーフィー教団で夜間の修行のために飲用されるようになり、16世紀にカイロ、イスタンブールに広まった。 -
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16世紀ごろ欧州列強の中にあって、弱小国であった英国がどのように国力増強を財を形成していったかが、海賊行為を通じて理解ができる良書。
弱小国であったがゆえに大国であったポルトガルやスペインに正面から対抗するのではなく、エリザベス女王らの英国王達はゲリラ戦である海賊行為を通じて国力を増強。海賊行為にあたっては、周到な諜報(インテリジェンス)活動を行い常に自分たちが優位な局面に立つよう腐心していた点などは現代にも参考になる。
海賊またその後に成立する東インド会社を通じた海上貿易の歴史についても、理解が深まる。
当時主要な貿易品の一つであったスパイスは、一般的に肉などの保存料として使用されていたと教科書には記載されているが、実際には医薬用として用いられていたなど当時の様子を知るうえでのエピソードも面白い。