工藤庸子のレビュー一覧
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途中の注釈で、メリメが10代後半から魔術関係の本を読み漁ったと言われていることが捕捉されていて、なぜ「タマンゴ」ではアフリカの民俗的な話や魔術的な話が挿入され、「カルメン」では悪魔祓いにもハマったことがある考古学者を主人公にしているのかが分かる。ボヘミア人が占いをやるという話が出てくるのも、メリメの趣味嗜好が出ている気がした。
また、考古学者目線で、最初は物語の全貌が見えないものの、だんだん役者が揃い、昔何があったのかが明らかになっていくのは、まさしく「椿姫」にそっくりだ。
他にも類似のフィクションはあるものの、ここでヴェルディの「椿姫」を引き合いに出したのかと言えば、「カルメン」も「椿姫 -
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カルメンといえば魅惑的な女性の代名詞だが、実は原作もオペラも映画も見たことがなく、正しいあらすじを知らなかったのでこちらを読んだ。色々ある訳本の中から新訳を選んだのだが、とても読みやすくて、非常におすすめだった。
話はメリメと思われるフランス人考古学者が、コルドバ辺りのアンダルシアで、たまたまホセ・ナバーロという怪しい素性の男と知り合うことから始まる。ナバーロに貸を作る形になった作者は、罪を告白して死刑になろうという彼から最後に身の上話を聞くのだ。
話の筋は周知の通り、ロマ人のカルメンに惚れてしまったナバーロが、彼女と一緒にいたいばかりに軍の出世は愚か、罪を犯して、今で言うところの、密輸や -
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ネタバレフランスの女性参政権 -2007.04.18記
1789年の人権宣言をもって革命の先駆をなしたあのフランスにおいて、女性の参政権が認められたのは、第二次世界大戦の終結を目前にした1944年であったという、工藤庸子の「宗教vs.国家」書中の指摘には驚きを禁じ得ないと同時に、おのれの蒙昧を嘆かずにはいられない。
日本における女性参政権の施行が終戦直後の1945年なのだから、欧米の近代化に大きく立ち遅れた後進のわが国と同じ頃という、フランスにおけるこのアンバランスな立ち遅れはいったいなにに由来するのか。
女性参政権において、世界の先陣を切ったのはニュージーランドで1893年。1902年にはオ -
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フランスに旅行したとき、意外にも黒人が多かったことに驚いた。フランスの移民の歴史については大学のとき学んだけど、まさかこれほど多いとは、と思った。民族問題と関わってくるのが宗教、とりわけフランスでは政教分離というスタイルだ。黒人移民は主にイスラーム圏からなのだが、それを象徴する事件として、少し古いが15年ほど前にあった、学校にスカーフをして登校したイスラームの女の子が、宗教を教育の場に持ち込んだとして学校に入れないという事件があった。さらにはスカーフ禁止法という法律まで成立させる徹底ぶり。なぜフランスはこれほどまでに政教分離に固執するのか。そのためにフランスの政教分離の歴史をみていくというもの
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『失われた時を求めて』のプルーストと、『シェリ』や「クロディーヌ」シリーズのコレットという同時代の作家を取り上げ、世紀末から1920年代のパリの風俗が両者の作品世界に取り入れられる仕方を論じています。
著者は「エピローグ」で、この時代の女性の変化を「見られる女」から「見る女」への脱皮だと要約することは、「あまりにぬけおちるものが多すぎて、わたし自身はこのようなキャッチ・フレーズを好まない」と述べ、「むしろ女性をめぐるさまざまの状況や暗黙の諒解を、つぎつぎにつきくずしてゆく潜在的エネルギーが、この時代全体のなかに蓄積されていて、その時代環境が、たとえばコレットという傑出した作家を生み出す動機に -
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ネタバレ現在は当たり前となっている「政教分離」の原則がフランスにおいてどのように成立したのかを論じた本。内容は第三共和制(1871-1940)の時代のことが中心になっている。
フランスでは、ナポレオン3世の第二帝政期から政府とカトリック教会の対立が激化していた。第三共和制が成立すると、教会も市民社会の法律に従うべしという「反教権主義」が生まれ、フェリーなどの政治家は修道士を教育現場から排除するといった政策を採る。
「国家の宗教からの自由」と言うと聞こえがいいが、教会は学校・病院での慈善活動や地域住民の福祉に大きく関わっていた。第三共和制の時代には国家と宗教の関係を巡って多くの血が流れた。 -
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[ 内容 ]
権力をめぐって対峙するカトリック教会と“共和派”の狭間で、一般市民は、聖職者は、女性たちは何を考え、どう行動したか。
『レ・ミゼラブル』などの小説や歴史学文献を読み解きながら、市民社会の成熟してゆくさまを目に見える風景として描き出す。
[ 目次 ]
第1章 ヴィクトル・ユゴーを読みながら(文化遺産としての『レ・ミゼラブル』;ユゴーは神を信じていたか ほか)
第2章 制度と信仰(「市民」どあることの崇高な意味;ナポレオンの「コンコルダート」 ほか)
第3章 「共和政」を体現した男(第三共和政の成立;ジュール・フェリーと環境としての宗教 ほか)
第4章 カトリック教会は共和国の敵か