【感想・ネタバレ】カルメン/タマンゴのレビュー

あらすじ

純情で真面目な青年ドン・ホセは、カルメンの虜となり、嫉妬にからめとられていく。そして軍隊を抜け悪事に手を染めるうちに、カルメンの情夫を殺し……(「カルメン」)。黒人奴隷貿易を題材に、奴隷線を襲った反乱の惨劇を描いた「タマンゴ」。傑作中編2作を収録。

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Posted by ブクログ

途中の注釈で、メリメが10代後半から魔術関係の本を読み漁ったと言われていることが捕捉されていて、なぜ「タマンゴ」ではアフリカの民俗的な話や魔術的な話が挿入され、「カルメン」では悪魔祓いにもハマったことがある考古学者を主人公にしているのかが分かる。ボヘミア人が占いをやるという話が出てくるのも、メリメの趣味嗜好が出ている気がした。

また、考古学者目線で、最初は物語の全貌が見えないものの、だんだん役者が揃い、昔何があったのかが明らかになっていくのは、まさしく「椿姫」にそっくりだ。

他にも類似のフィクションはあるものの、ここでヴェルディの「椿姫」を引き合いに出したのかと言えば、「カルメン」も「椿姫」もオペラの題材になっている作品だからである。

私が普段思い浮かべる「一般的な恋愛」では、暴力を振るわないし、浮気女だと分かれば普通別れたくなるし、嘘でも好きな相手を「殺したくなった」とは言わない。なぜ上手くいかないと頭で分かっていながらも離れられないのか。それこそが魔性の女の特徴である。

来月にオペラのカルメンを観に行く予定のため、原作も見ておこうという動機だったが、メリメの作品である「タマンゴ」は私の好みど真ん中であり、不意な嬉しい出会いがあった。

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2025年01月23日

Posted by ブクログ

カルメンといえば魅惑的な女性の代名詞だが、実は原作もオペラも映画も見たことがなく、正しいあらすじを知らなかったのでこちらを読んだ。色々ある訳本の中から新訳を選んだのだが、とても読みやすくて、非常におすすめだった。

話はメリメと思われるフランス人考古学者が、コルドバ辺りのアンダルシアで、たまたまホセ・ナバーロという怪しい素性の男と知り合うことから始まる。ナバーロに貸を作る形になった作者は、罪を告白して死刑になろうという彼から最後に身の上話を聞くのだ。

話の筋は周知の通り、ロマ人のカルメンに惚れてしまったナバーロが、彼女と一緒にいたいばかりに軍の出世は愚か、罪を犯して、今で言うところの、密輸や強盗といった犯罪組織の仕事に手を染めて堕ちていく、というところ。だが、主眼は、靴下が穴だらけだったり、決して清潔ではないはずの描写のカルメンの、自由人たる魅力、彼女の周りに現れる男性の影に嫉妬を抑えられないナバーロの心情描写が巧みで、読み進める手が止まらなかった。

またメリメはロマ人の言語研究に後年ハマったそうなのだが、フランス語で書かれているであろう原文に、ロマ語のみならず、バスク語やスペイン語、ラテン語の知識も散りばめられている。フランスもバスクとロマという文化を共有している国であるだけに、スペイン内におけるロマ人やバスク人の立ち位置までも描かれていて面白い。

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2022年04月10日

Posted by ブクログ

カルメンもタマンゴも黒人やジプシーのようなヨーロッパの当時における被差別階級の登場人物を題材にしたものだけど、意図的に貶めるような表現は見当たらなくてむしろ学術的見解をそのまま記しているような感じがした。
目当てだったカルメンは、自由なカルメンに心を奪われた青年ドン・ホセの凋落を描いた作品ということは知っていたけれど、男の心を翻弄した末に自分は自分の心のまま死んでいったカルメンの誇りのようなものに感じ入ってしまった。誰のものにもならない女性は魅力的だと思います。舞台とか見に行く機会があればぜひ行ってみたい。

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2024年05月12日

Posted by ブクログ

戯曲でなんとなくしか知らなかったカルメン。
賢く、強く、美しくて、踊りがうまく、男を翻弄するカルメンが魅力的。ホセが、カルメンに惚れて、堅気の兵隊からロマのコミュニティに入っていくところも面白い。

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2021年12月29日

Posted by ブクログ

魔性の女「カルメン」に翻弄されたドン・ホセの語り、というスタイルの作品。恋愛小説の古典として、また奔放な女性の代名詞として知られる作品ですが、文体は硬派な印象ですし、「ジプシー」という階層(生き方)についての前提知識があるとより内容がわかりやすいかもしれません。

まじめだった青年が、一人の女の虜になり、嫉妬から殺人まで起こす様や、その挙句に愛する女本人を手に欠けるところなど、恋愛によって身を滅ぼすというストーリーの典型であるように思います。

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2021年11月11日

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