海老坂武のレビュー一覧
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サルトルの解説自体は素晴らしいのに特別編コラムで全部台無しだよ。「現代はサルトルを履き違えた活動家が跳梁跋扈してるよな」と思いながら読んでたら著者が見事にその落とし穴にハマっていたというどうしようもないオチが付いた。SEALDs礼賛とかアホかと。「3つの籠に5個の卵を詰め込むやつには、早めに風穴を開けるべし」サルトル自身が遺したこの言葉を著者には送りたい。
それはさておき、サルトルの哲学を理解するための入門書としては悪くないと思う。自らを社会に投げ込むことで知られる実存主義者がなぜできあがったのか、そのプロセスを丁寧に説明している。それだけに最後の蛇足が非常に残念。 -
Posted by ブクログ
本書は、かのサルトルが秘書のレヴィの問いに答えるかたちでまとめられた対談である。終盤、自分は長くてあと5年で死ぬだろうと語るサルトルだが、このわずか数カ月後に74歳で亡くなってしまう。身体の至るところにガタが来ていたという。日本ではサルトルの死とほぼ同時期に発表され、大きな反響を呼んだ。
ボーヴォワールはじめ、サルトルに近しい人たちは、この対談を読んだとき驚愕したという。そして強い怒りとともに、発表を控えるようにサルトルに進言した。その内容が、彼のこれまでの哲学からかけ離れたものだったからだ。彼らには、老いて思考力が衰えたサルトルを、40も年若のレヴィがうまく誘導して、自分に都合のいいように喋らせたと思えた。だが、サルトルは聞き入れず、発表にこだわった。
読んで感じるのは、レヴィの上から目線な態度と、詰問口調だ。かつてのサルトルなら、こうも言われたい放題にならなかったのではないかと思ってしまう。サルトルといえば、私の両親よりもさらに上の世代が同時代人となる。彼の実存主義は、現実世界に多大な影響を与えた。実は私も、若い頃にサルトルを読み耽った時期がある。「実存は本質に先立つ」や「アンガージュマン」という言葉は、若者の心をたぎらせるに十分な魅力があった。それだけにやはり本書を読むのは辛いものがあった。しかし、レヴィの詰問に押されがちながらも、ところどころにサルトルの強い意志と新しいサルトルが顔を見せる。訳者の海老坂氏の3本の解説がさすが秀逸。
行動する哲学者サルトルなら、ロシアの前身であるソ連に一時期接近していたサルトルが健在なら、今のウクライナ侵攻にどう発言するだろう。
……希望は、いつまでも負けてはいなかったんだね。……いつか勃発するかもしれない第三次世界大戦、地球というこの悲惨な集合体、こんなことで、絶望がわたしを誘惑しに戻ってくる。……だが、まさしくね、わたしはこれに抵抗し、自分ではわかっているのだが、希望のなかで死んでいくだろう。
対談の最後を希望という言葉で締めたサルトル。あと5年で何を書くつもりでいただろうか。 -
Posted by ブクログ
戦後を代表する知識人の一人である加藤周一の生涯と思想について、著者自身の観点から比較的自由に語っている本です。
加藤周一については、鷲巣力や成田龍一といった論者たちがその思想的経歴について立ち入った考察をおこなっていますが、本書はフランス文学を専攻し、加藤に近い立場から文学や思想、政治についての評論をおこなっている著者が、加藤の著作を読み解きながら、ときに疑問を提出しつつ、彼の思想にせまっていく試みだといえるように思います。
著者は、戦後の加藤が「エゴイズムを拡充した高次のヒューマニズム」を掲げ、「作家は自己の戦争体験から出発せよ」と主張した荒正人を批判していたことに着目して、「観念によって、思想によって〈戦中〉を耐えてきた加藤にとって、肉体-心理-エゴイズムの側面を強調する論法は受け入れられるものではなかった」と述べています。さらに著者は、こうした観点から加藤と、本居宣長へと回帰していった小林秀雄を対比する視点を提出しています。