小川隆のレビュー一覧

  • ブラッド・ミュージック

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    ネタバレ

    遺伝子工学で優れた能力を持つヴァージルは、自身の白血球をもとに、生体素子を作り上げ、研究所の人たちにバレないように持ちだした。彼が作り上げた細胞ヌーサイトは知能を持つ細胞であったが、この細胞が原因で、アメリカどころか人類を巻き込むほどの大災害が発生する。とくに終盤では、世界中の人々が犠牲になり、その影響で食糧不足、資源の枯渇など、人間の手によって人間同士を争うという、皮肉な結果を招いてしまった。科学技術の発展が、場合によって文明規模で衰退してしまうことが本作からうかがえる。

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    2025年07月26日
  • ブラッド・ミュージック

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    ネタバレ

    ヴァージルが主人公の間の展開は身震いする恐ろしさで、細胞が学習していくのが脅威だった。全て学習し尽くされたら乗っ取られるという恐怖に追い立てられる。
    パンデミック要素も、コロナ禍を経験している今は身に迫ってくる。ワクチンの注射だってそう。ウイルスはあっという間に国境を越えてしまうものだし、意志を持ったヌーサイトならより簡単に全てをやってのけられる。
    バーナードが他人の記憶を見て、ヌーサイトの思考宇宙を知るシーンが衝撃だった。壮大すぎて胸がザワザワする。全ての記憶が内包される一つの生命体のような、その混じり合った様々な経験や記憶が共有されてずっと続いていく事実が胸を締め付けて、わけもなく涙が出そ

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    2023年01月14日
  • シオンズ・フィクション イスラエルSF傑作選

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    イスラエルSF短編集。どの作品も面白かった。思ったより宗教色は薄め、それでもサイエンスよりはファンタジーよりのものが多い。 特によかったのは「完璧な娘」。触れると心が読める少女が遺体に触れ、その少女に共感してゆく。あとは「可能性世界」。未来を演算して書き換える。彼女を救える世界にすることで彼は死んでしまう、主人公だけが認識していて(気づいてしまい)、救えない分シュタゲよりラストは地獄感ある気もする。 「スロー族」、「アレクサンドリアを焼く」、あたりも面白かった。

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    2022年01月16日
  • シオンズ・フィクション イスラエルSF傑作選

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    読み応えあり過ぎで疲れるアンソロジー
    ジャンルなり、雰囲気で分けて数冊のシリーズで出してくれれば良かったな

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    2021年03月25日
  • ブラッド・ミュージック

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    こんなに映画を見るようにイメージが思い浮かんだ読書ははじめて.... 缶詰を開けるには缶切りが必要!

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    2021年02月14日
  • シオンズ・フィクション イスラエルSF傑作選

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    イスラエルのSFシーンの中心人物2名によって、英語圏の読者向けに編まれたアンソロジー。ここでのSFは科学小説 Science fictionではなく思弁的小説 Speculative fictionを指しており、非リアリズム小説全般を覆う定義と考えると収録作の幅広さが納得できる。邦訳は英語からの重訳になるが、元々英語で書かれた作品も5作、ロシア語で書かれた作品が1作収録されている(ほかはヘブライ語)。巻末には編者による「イスラエルSFの歴史」も。


    以下、特に気に入った作品について。

    ★ ガイ・ハソン「完璧な娘」(中村融 訳)
    テレパスの訓練教育を受けることになったアレグザンドラは、〈死体

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    2020年11月01日
  • シオンズ・フィクション イスラエルSF傑作選

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    ラヴィ・テイドハーを除けば、名前を聞いたことのある作家さえ一人もいないが、作品のレベルは概して高い。ユダヤ=イスラエル色を感じさせる作品も殆どないが、これは日本の現代SFを読んだ欧米人が、ゲイシャもハラキリも出てこないなんて言うようなもんだろうしね。個人的ベストは、そのユダヤ=イスラエル色を感じさせる例外の一本「信心者たち」や、終末世界を舞台にしながらテーマがサバイバルから、なんとも変なものに変わっていく「夜の似合う場所」。

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    2020年10月08日
  • ブラッド・ミュージック

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    ベアのまだ初々しさがある長編秀作
    表紙   6点上原 徹
    展開   8点1985年著作
    文章   8点
    内容 770点
    合計 792点

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    2016年03月02日
  • ブラッド・ミュージック

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    全然古臭くなくて面白かった。どきどきした。バイオテクノロジーで生まれた知性ある細胞群が、人体を、世界を侵食していく。
    初めは人体を自分のたちの住む世界としか考えていない彼らは、住処である人体を調べながら都合よく改変していく。このあたりはかなりグロテスクで怖く緊迫感がある。
    やがて人という存在を認識し、人とコミュニケーションを取り始める彼らだが、その辺りからストーリーは全く予想つかない領域に突入していく。人とは異なるミクロの世界を観測する彼らの影響力は凄まじく、人体のみならず世界法則にまで影響しはじめる。彼らは人を、世界をとう変えていってしまうのか。
    全く価値観の異なる知性体どうしの出会いと共生

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    2015年11月28日
  • ブラッド・ミュージック

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    バイオ工学がもたらす壊滅的な宇宙の崩壊!SFならではの壮大な展開

    人生の50冊 SF編 ベスト1

    ヒューゴー&ネビュラのダブルクラウンですが、
    今では知る人ぞ知る傑作で、
    SF史上初めてバイオハザードが取り上げられた作品です。
    「考える細胞」というワン・アイディアを良くぞここまで論理的に展開させた!
    とSFの持つ底力や可能性を実感しました。
    印象的なのは「考える細胞」が増殖して行く中で、
    彼らの「観察」や「思考」のエネルギーの総量が、
    不可避的に増大し、
    それによって世界が崩壊して行く過程が
    とてもSF的で、いっそ爽快なこと。
    そのあり得ない位の飛翔感こそ、SFの醍醐味なので

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    2013年11月01日
  • ブラッド・ミュージック

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    去年話題を呼んだ「ジェノサイド」など「人類という種」の未来を語る小説は今でこそ珍しく無くなったが、その元祖はといえばクラークの「幼年期の終わり」ということになるだろう。
    初めて読んだとき、あまりのスケールの大きさに僕らは驚愕したものだった。
    そして、その驚愕を全く新しい形で、よりリアルに、より実感を伴って上書きしたのが、「ブラッド・ミュージック」なのだ。
    だが、新しい驚愕は「幼年期の終わり」ほど能天気な希望に満ちてはいない。苦い味を伴った究極の問いを読者に投げかけてくる。「進化を受け入れるか、否か、あなたならどうする?」と。

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    2013年02月08日
  • ブラッド・ミュージック

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    そして人類は、ミクロの彼岸へと旅立つ。

    人類の変容を壮大なビジョンで描き切ったSF、という点で、クラーク「幼年期の終わり」と同一テーマに属する作品。

    ただし、圧倒的なスケール感で拡散しまくる「幼年期の終わり」に比べ、こちらで提示されるビジョンは徹底的に内向きかつグロテスク。最終章で示される「救い」の気色悪さは特筆モノ。
    人類にとってあまり嬉しくない結末である点はこちらも「幼年期の終わり」も一緒だけど、まだ「幼年期の終わり」の方が前向きなパワーがあると鴨は思いたいです。
    2作並べてオールタイム・ベスト級の作品ではないかと。

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    2012年04月23日
  • ブラッド・ミュージック

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    ヒューゴー・ネビュラ賞受賞の超名作。
    エヴァの元ネタとしても有名。人類補完はノーストリリアだけど
    群体から単体はこっち。
    何度読んでもおもしろい!

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    2011年01月31日
  • ブラッド・ミュージック

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    『幼年期の終わり』は文明的進化と書いたけど、この本では「生命体としての進化の行き先」について考えさせらた。(妄想的に)
    そしてタイトルのとおり、血液がキーポイント。いつだったか再読の際に「開け!進化のモード!」と叫びそうになった記憶がw

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    2010年11月30日
  • ブラッド・ミュージック

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    地元新聞の本紹介コラムにこの本を取り上げさせていただいた。もともとSF好きだけど、これでその嗜好を決定的なものにされたって感じ。

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    2010年05月22日
  • ブラッド・ミュージック

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    ある科学者が開発したウィルスに感染し、人類全体に広がってしまうが…そのウィルスが実は新たな進化の可能性を目指していた。
    これもカナリ面白いSFです!

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    2009年10月04日
  • ブラッド・ミュージック

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    三体を読んだ後のSFだったので、物足りなさを感じてしまうかと心配してたが心配無用だった。
    2025年に読んでも面白い!
    SFを書く作家さんの脳みそ、本当に凄すぎる。

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    2025年09月16日
  • ブラッド・ミュージック

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     ちょっと専門分野にふれるだけに、気になる部分もあったが、情報物理学なんて一筋縄ではいかないアイディアもあってよかった。
     当時はこの作品がサイバーパンクの文脈で語られてた理由がわからなかったけど、テクノロジーで人類そのものが変容していくという意味ではまあそうか。鏖戦とかまさしくそうだもんな。
     SF復帰第一作。再読もしたいけど。

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    2025年05月31日
  • ブラッド・ミュージック

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    1985年に発表された小説。企業に勤める遺伝子工学の天才が実験の中止を言い渡される。しかし、彼の研究はほぼ完成していた。実験結果をかんたんに持ち出せない中、彼は自らの体内に注射して持ち出すのだった。
    遺伝子操作で作られた細胞から、徐々に肉体が変化していく。人類の進化は、万人が望むような形ではないかもしれないという作品でありながら、こんな進化なら受け入れられると思う人もいるのだと思う。世界貿易センタービルのシーンがとても印象に残った。
    『夏への扉』と同様、繰り返し読みたくなる作品だった。

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    2020年10月14日
  • ブラッド・ミュージック

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    ネタバレ

    北アメリカで起きたかなり物質的な(後半は精神的な)人類補完計画。てか元ネタこれ説もみかけた。
    序盤にヴァージルを殺しちゃった理由がいまいちつかみかねる。あの時点ではヌーサイトの脅威がどの程度のものか判明していないので、もったいなくないか?と。むしろその未知への危機感からなのかな。
    ヌーサイトが敵対存在になっている感覚がとても抑えられていて、この手の話につきものなぞわぞわする恐怖感を楽しむわけでなく「なんか幸福そうだな…」と事の顛末を眺めてしまった。
    ラストは救いがあると感じるかそれは騙されてる終わったんだと感じるかは読み手次第なんだろーなと。
    タイトルがおっしゃれで好きだなー。

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    2019年06月29日