小川隆のレビュー一覧
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ネタバレヴァージルが主人公の間の展開は身震いする恐ろしさで、細胞が学習していくのが脅威だった。全て学習し尽くされたら乗っ取られるという恐怖に追い立てられる。
パンデミック要素も、コロナ禍を経験している今は身に迫ってくる。ワクチンの注射だってそう。ウイルスはあっという間に国境を越えてしまうものだし、意志を持ったヌーサイトならより簡単に全てをやってのけられる。
バーナードが他人の記憶を見て、ヌーサイトの思考宇宙を知るシーンが衝撃だった。壮大すぎて胸がザワザワする。全ての記憶が内包される一つの生命体のような、その混じり合った様々な経験や記憶が共有されてずっと続いていく事実が胸を締め付けて、わけもなく涙が出そ -
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イスラエルのSFシーンの中心人物2名によって、英語圏の読者向けに編まれたアンソロジー。ここでのSFは科学小説 Science fictionではなく思弁的小説 Speculative fictionを指しており、非リアリズム小説全般を覆う定義と考えると収録作の幅広さが納得できる。邦訳は英語からの重訳になるが、元々英語で書かれた作品も5作、ロシア語で書かれた作品が1作収録されている(ほかはヘブライ語)。巻末には編者による「イスラエルSFの歴史」も。
以下、特に気に入った作品について。
★ ガイ・ハソン「完璧な娘」(中村融 訳)
テレパスの訓練教育を受けることになったアレグザンドラは、〈死体 -
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全然古臭くなくて面白かった。どきどきした。バイオテクノロジーで生まれた知性ある細胞群が、人体を、世界を侵食していく。
初めは人体を自分のたちの住む世界としか考えていない彼らは、住処である人体を調べながら都合よく改変していく。このあたりはかなりグロテスクで怖く緊迫感がある。
やがて人という存在を認識し、人とコミュニケーションを取り始める彼らだが、その辺りからストーリーは全く予想つかない領域に突入していく。人とは異なるミクロの世界を観測する彼らの影響力は凄まじく、人体のみならず世界法則にまで影響しはじめる。彼らは人を、世界をとう変えていってしまうのか。
全く価値観の異なる知性体どうしの出会いと共生 -
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バイオ工学がもたらす壊滅的な宇宙の崩壊!SFならではの壮大な展開
人生の50冊 SF編 ベスト1
ヒューゴー&ネビュラのダブルクラウンですが、
今では知る人ぞ知る傑作で、
SF史上初めてバイオハザードが取り上げられた作品です。
「考える細胞」というワン・アイディアを良くぞここまで論理的に展開させた!
とSFの持つ底力や可能性を実感しました。
印象的なのは「考える細胞」が増殖して行く中で、
彼らの「観察」や「思考」のエネルギーの総量が、
不可避的に増大し、
それによって世界が崩壊して行く過程が
とてもSF的で、いっそ爽快なこと。
そのあり得ない位の飛翔感こそ、SFの醍醐味なので -
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ネタバレ北アメリカで起きたかなり物質的な(後半は精神的な)人類補完計画。てか元ネタこれ説もみかけた。
序盤にヴァージルを殺しちゃった理由がいまいちつかみかねる。あの時点ではヌーサイトの脅威がどの程度のものか判明していないので、もったいなくないか?と。むしろその未知への危機感からなのかな。
ヌーサイトが敵対存在になっている感覚がとても抑えられていて、この手の話につきものなぞわぞわする恐怖感を楽しむわけでなく「なんか幸福そうだな…」と事の顛末を眺めてしまった。
ラストは救いがあると感じるかそれは騙されてる終わったんだと感じるかは読み手次第なんだろーなと。
タイトルがおっしゃれで好きだなー。