菊池良和のレビュー一覧
-
Posted by ブクログ
映画『英国王のスピーチ』を見て関心をもった私のような門外漢にとっては、好適な入門書。吃音者をまねしたことで吃音症になるとか、左利きを矯正したために起こるとか、親の育て方に問題があるとかいった俗説を粉砕してくれる。代わりに、遺伝的要因の関与に言及している。
紹介してある治療法については、ある程度効果はあるものの、どれも決定的ではないように感じられた。模索中というのが現状か。
遺伝的要因についてもっと知りたいと思っていたら、日経サイエンス2022年1月号に、デンワース「吃音症はなぜ起こるのか」という記事を見つけた(訳の監修は菊池良和氏)。関連遺伝子の点から吃音症の神経科学的な説明を試みている。この -
Posted by ブクログ
ネタバレ小説じゃなくて、新書を読んで感動して泣いたのは初めてかもしれない。興味深く、心を揺さぶられながら、二時間ほどで一気読みしてしまった。
文学好きな人なら吃音になんとなく興味を持っている人は多いのではないかと思う。私はもちろん、村上春樹の「ノルウェーの森」に出てくる突撃隊で興味を持ち、小島信夫の吃音学院も読んだ。
この本、タイトルからして「吃音」には「世界」があると思わされて良い。著者ご本人の体験から始まって、吃音のある人がどのように苦労しているか、親がどんなに悩むものか共感できる。どんな言語でも世界中に1%程度吃音の人がいるというのも興味深いデータだ。原因や治療法など、これまでの国内外の研究や治 -
Posted by ブクログ
"日本人の吃音者のために書かれた最良の本"
【選書理由】
作家 重松清さん 絶賛!という帯に惹かれて。
【感想】
私が吃音に関する本を挙げるとするなら、
フレデリック.P.マレーの「吃音の克服」と、重松清の「きよしこ」である。
前者は言語聴覚士の書いた、後者は作家が実体験を元に書いた、
数少ない吃音に関する本である。
しかし、どちらも"分かち合える"本ではなかった。
「吃音の克服」はまず国が違うし、ちょっと小難しい。
「きよしこ」のような小説はストーリーを重視するため、
どうしても吃音者の内面・描写に物足りなさがあった。
でも、この本は吃音者の気持 -
Posted by ブクログ
相方が実は吃音に悩んでいたということを打ち明けてくれたことを契機に、
吃音について知りたいと思って読みました。
当方はどうやらASD(アスペルガー/近年判明)のようなのですが、
相方の吃音(打ち明けられた後も全く感じないけれど、本人は今でも少し喋りにくい語があるとのこと)もASD/ADHDのような発達障害と同様の生得由来の事象だということが分かり、
書籍の中で紹介されていた、吃音当事者の苦労や葛藤を垣間見ることができたのは、
人知れず抱えてきた苦悩を理解する一助になり有益だった。
お互いのニガテを補い合い理解し合い、支え合って生きていきたいとな改めて思いました。
-
Posted by ブクログ
吃音の生徒が自分の担当しているクラスにいるため、その子のことを知るきっかけに、読んでみました。
吃音のことを私自身、誤解していました。努力でなんとかできるものだとか、治すことのできるものだとか、いろいろな面で自分のイメージだけで判断していたのだなと思いました。
この本を読み、そういった誤解を解くきっかけを得られました。
吃音は今では発達障害支援法の対象にもなっているということも、全く意識になく…。
吃音を持つ人が抱える思いだけでなく、吃音だからと何かを諦めるしかないと思い込んでいる人がいることもしれました。
今担当している子は、吃音と向き合いながら、苦手なことは周囲からサポートしてもらってい -
Posted by ブクログ
吃音に悩みながらも社会福祉士にまでなった著者が、吃音に関する悩みや考え方、体験談を漫画にまとめた本。
そもそも吃音ってどういうものなのか、どういった場面で困るのかといったところも解説していてわかりやすい。途中途中では医師の解説も入っているので、吃音について知る時の入門書にも向いている。
漫画は著者の子供時代のエピソードから大学時代のバイトで吃音に悩んだこと、社会福祉士を志すようになったことが描かれている。からかわれたりした経験もあるようだが、著者自身が前向きなのと周囲の人間環境が比較的恵まれていたようで、読んでいて鬱屈とせずに済んだ。
著者は恵まれた環境で育ったと言っているが、それでも言 -
Posted by ブクログ
難発性の吃音もちです。
吃音でかかっている心療内科の先生に勧められて読みました。
この本の序盤の「作者の体験」の部分は、本当に共感しかありません。
今までずっと吃音が普通だったので「吃音じゃない人って、どうして吃音の人がこんなことするのかわからないんだ」とも、気づかされました。例えば、言いづらい言葉を避けるために、わざと言葉の順序を変える、などです。
それと、私は喋るときにとても労力がいるので「私ってダメな人間なんだな」と思うことがあったんですが、それも「吃音はみんな大変なんだな、私だけじゃない」と少し元気をもらえました。
なので、吃音で悩んでいる人は是非読んで欲しいです。
そして、身の回り -
Posted by ブクログ
吃音に悩んでいた筆者が医者になった経験と、吃音に対する真摯な想い、同じ仲間の悩みに対する想いがしっかりと書かれている。
吃音という症状に対して、吃音を持っている人たちがどのように向き合い苦労しているか、吃音がない身としてはあまり気にしたことがなかったが、この本を読むとその一端がうかがえる。
社会が、コミュニケーション力をより求めるようになっている現代社会において、言葉が出にくいという状況は不利な状況だ。私も少しまえにNHKのドキュメンタリーで吃音の方の就職活動を観て、本人たちにとって深い問題であることを初めて知った。
そんななか筆者は、「どもってもいいんだよ」というシンプルなメッセージが -
Posted by ブクログ
このシリーズの本は何冊か読んでいるが、やっぱり読みやすく実践的な内容。当事者やその家族、周囲の人が読んですぐ役立てられそうだ。
初めに思ったのが、監修者が耳鼻咽喉科の医師だということ。吃音というと精神科のイメージがあったので、少し違和感。読んでいくと、やっぱり精神科・心療内科も絡むことがわかった。ただ、本書ではどの診療科がいいかということは載っていない。子供の吃音を中心に扱っているせいか、3歳児検診や自治体の相談窓口が紹介されていた。
→気になるので、調べてみた。言語聴覚士は、大抵耳鼻咽喉科にいる。しかし、吃音はうつ病や社会不安障害を併発することも多く、精神科・心療内科の範疇でもある。本人の -
Posted by ブクログ
吃音のあるお医者さんが書いた吃音の本。
吃音を治したい一心で医学部を受験し、医者になり、
その後臨床から研究に身を移し、今も吃音治療の研究をしている
著者の、苦悩とその克服。吃音の悩みを抱える人々へのメッセージで
つづられた著書です。
「どもる」人がどれほどそのことゆえに悩むのか、
読んでいて気の毒になるほど、辛い思いをしていることが分かります。
「どもり」を隠す為に大変な努力をしたり、「どもり」ゆえに
強い疎外感を感じたり、周囲が知らないところで大変な苦労をしていることが分かります。
また、自助グループとして「言友会」があり、吃音で悩む人たちの
大きな心の支えとなっている