車田正美のレビュー一覧
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聖闘士星矢の外伝的な位置付けの漫画。全25巻。聖闘士星矢原作とは作者が異なる。絵の線は細めだが、聖衣の描写などはしっかりしている。舞台は聖闘士星矢原作の243年前、前回の聖戦(ハーデス戦)となる。主人公はやはりペガサスの聖闘士。
意表をついて、結構面白かったです。登場人物一人一人のバックグランドの作りこみ、性格の描写は明らかに原作以上。適当に出てきて適当に死んでいくキャラがあまり居なく、一つ一つ戦闘が濃い。原作では恨みでもあるのか?ばりに虐げられた蟹座の黄金聖闘士と魚座の黄金聖闘士は、本作ではかなり扱いが良い。昔この2つの星座だったことを残念に思ったことがある人は、胸のすく思いだろう。
「後悔するぞ、必ずな!」
「そうだろうな。選ぶってのはそれがつきものだから。」 -
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とりあえず,「聖域(サンクチュアリ)編」と呼ばれる部分を読破しました。単行本の第1巻~第13巻です。女神アテナを守るために戦う聖闘士(セイント)となった星矢たち孤児が,聖闘士の総本山である聖域にはびこる悪を一掃するため最強の黄金聖闘士と死闘を繰り広げるというお話。第1巻が発行されたのが1986年,第13巻は1988年で,今から20年も前の作品ですが,今読んでも面白い。複雑な伏線とか,入り組んだ謎とかは全然なく,ストレートに友情とか正義とか愛とかを謳う骨太のストーリーに安心感を覚えます。
黄道12星座をモチーフにした黄金聖闘士(ゴールドセイント)が登場し,小学生の頃は異様に盛り上がったのを覚えています。ペガサス座とか白鳥座とかはまったく人ごとですが,牡羊座とか牡牛座が出てくるとなれば話は別。誰もが自分の守護星座を持っている気がして,20年前の小学生はみんな黄金聖闘士になってました。牡牛座(タウラス)のアルデバランや獅子座(レオ)のアイオリア,蠍座(スコーピオン)のミロ,水瓶座(アクエリアス)のカミュなどは強くてかっこいいので喜ばれました。乙女座(バルゴ)のシャカにいたっては,みんな真似して目をつぶって歩くので危なくて仕方がなかったです。牡牛座(アリエス)のムウや射手座(サジタリアス)のアイオロス,天秤座(ライブラ)の老師はどんな戦い方をするのかわからず,その謎めいた感じがちょっと羨ましがられました。双子座(ジェミニ)のサガはとにかく悪くて強いので,ふたご座のヤツはみんな喜んで悪役をやってました。がっかりしたのが蟹座(キャンサー)のデスマスク。黄金聖闘士のくせに小悪党。最期は黄金聖衣そのものに愛想を尽かされ,龍星座(ドラゴン)の紫龍の手で黄泉比良坂にたたき落とされるという結末に,かに座の友だちは肩を落としていました。逆ギレ気味に「積尸気冥界波!」とか叫んでましたが。
ちなみに私はうお座の人なので,十二宮の最後を守るうお座の聖闘士の登場を待ちわびたわけなのですが,魚星座(ピスケス)のアフロディーテが初めて登場した時に「…えっ?」と絶句しました。これまで星矢たちと戦った黄金聖闘士は“もっとも神にちかい男”シャカだったり,“黄金聖闘士十二人の中でも最強”の手刀を持つシュラだったりしたわけですが,アフロディーテは「その美しさは88の聖闘士の中でも随一」という“天と地のはざまに輝きをほこる美の戦士”……バラの花くわえてるし。技はバラの技ばっかりで魚座らしいところはまるでなし。真似して遊びにくいじゃねーかこの聖闘士。俺もしし座とかが良かったなーなどと無体なことを言っていました。
正しく生きたいと思う心が強いあまりに相反する悪の心も強くなってしまい,善と悪の間で苦しんでいた双子座のサガがあわれです。最後,アテナの化身である沙織嬢にこれまでのことを詫び,自らの命を絶ってしまうところで思わず涙が。 -
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妻N子が『聖闘士星矢』全28巻を読み終わっていました。むうう~,時間のある主婦め~。まだ聖域編を読み終わったところの私は,あせらずポセイドン編(第14巻~第18巻)を読みました。
海皇ポセイドンが復活し,旧約聖書のように全世界を水没させて地上の生物を全滅させようとします。それをやめさせるために海底のポセイドン神殿に出向いたアテナの化身・沙織は,逆に神殿の巨大な大黒柱メイン・ブレドウィナに閉じ込められてしまいます。沙織の命と全世界を救うため,星矢たち青銅聖闘士がポセイドン神殿に乗り込み,7つの海を支える柱とメイン・ブレドウィナの破壊を目指して戦うというお話です。
聖域編が13巻分,ポセイドン編が5巻分,続くハーデス編が10巻分という分量なので,『聖闘士星矢』全編の中でも閑話休題的なにおいのするポセイドン編です。女神アテナのもとに聖闘士がいるように,海皇ポセイドンのもとには“海闘士(マリーナ)”がいるという設定にちょっと納得。着ている鎧も聖闘士の聖衣(クロス)に対して海闘士は“鱗衣(スケイル)”。なるほど。
全世界が水没の危機に瀕しているのだから,青銅聖闘士といわず黄金聖闘士を最初から派遣すれば良いのですが,教皇亡き後聖闘士を統括している五老峰の老師は,黄金聖闘士全員に聖域を動いてはならないと命令を下します。さらに,氷河が倒した海闘士クラーケンのアイザックの口から,ポセイドンを復活させて戦いをもくろんだ黒幕の存在を聞かされ,それが星矢たちもよく知る「あの人」だというので,一同と読者に戦慄が。この流れから言うとまさか老師が…?という空気になりますが,黒幕は老師ではありません。
なんでしょう,聖域編と比べてあまり爽快な感じがしません。青銅聖闘士たちが弱っちく感じられ,それに倒される海将軍(ジェネラル)たちはもっと弱い感じ。星矢があいかわらず誰と戦ってもボコボコにされる(そして何度でも立ち上がる)のはいいとしても,龍星座(ドラゴン)の紫龍はインド洋を守る海将軍クリュサオルのクリシュナの必殺技“黄金の槍”にグサグサにやられて視力まで失い,白鳥座(キグナス)の氷河は南氷洋を守る海将軍リュムナデスのカーサに心の弱点を突かれて殺されかけ,鳳凰星座(フェニックス)の一輝の登場でなんとか助かったものの今度は北氷洋の海将軍クラーケンのアイザックが友だちだったことでまたも泣きながら戦うはめになります。アンドロメダ座の瞬もあいかわらず「誰ひとり傷つけたくはないんだあーッ」と叫びながら海将軍セイレーンのソレントに必殺技ネビュラストームをたたきつけてますし,兄の一輝も瞬のピンチに合わせたかのような登場。
ここまで書いてわかったのですが,戦い方やキャラクターの動きがパターン化してきて,聖域編の単なる焼き直しに見えるんですね。同じことをやるならスケールを大きくしなければ面白くありませんが,聖域編では12宮を突破したのに対し,ポセイドン編では7つの柱。パターンが同じでスケールが小さくなっては,前作を上回る爽快感があるはずありません。黒幕の死に方まで聖域編と同じじゃあいけません。
そんな中で際立った活躍を見せていたのが,ムウの弟子の貴鬼。柱を破壊するのに必要な天秤座(ライブラ)の聖衣を持って,星矢たちが戦っている場を行ったり来たりします。途中,海将軍にとっつかまって聖衣を取り上げられそうになったりもしますが,けなげに戦って守り通そうとします。この貴鬼のがんばりに感動します。
それにしても,貴鬼の念動力は誰にも通用しないのね…。 -
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『聖闘士星矢』ハーデス編(第19巻~第28巻)を一生懸命読みました。いや,面白かった。『聖闘士星矢』のラストを飾るにふさわしい,壮大・壮絶な戦いでした。
243年前の戦いで封印された冥王ハーデスの軍勢が復活し,聖域にいる女神アテナの命を狙って攻撃を仕掛けてくるという始まり。ところがその先兵となったのは,聖域編で死んだ黄金聖闘士たち。生き残った黄金聖闘士と死んだ黄金聖闘士が本気でぶつかり合うという大激戦が,のっけから繰り広げられます。この戦いの中で,老師が若返って前教皇と戦ったり,乙女座(バルゴ)のシャカが,「阿頼耶識(あらやしき)」という謎の言葉を残して死んでしまったりします。そして,アテナの化身・沙織が自ら命を絶つという衝撃的な展開に。この辺は本当に面白い。
実は,死んだ黄金聖闘士たちはハーデス軍に寝返ったわけではなく,あることをアテナに伝えるために寝返ったふりをして束の間の命をもらったわけですが,それを知った星矢たち青銅聖闘士たちも,冥界に下ったアテナを追って地獄へ下っていきます。この地獄の設定が,少年漫画とは思えないほど格調が高いので驚きます。これ,ダンテの『神曲』ですね。地獄の門に「ここに入るもの一切の希望を捨てよ」と書いてあるところとか,アケローン河にカロンという渡し守がいるところとか,冥界が8つの獄(プリズン)・3つの谷(バレイ)・10の壕(マルボルジェ)・4つの圏(スフィアー)に分かれていて,その最深部にコキュートスという氷地獄があるところとか,まったく『神曲』そのものです。車田正美さん,「神仏は信じない」と言っていますがかなりの勉強家です。そこに神々の楽園エリシオンや,冥界三巨頭ラダマンティス,ミーノス,アイアコス,死と眠りを司る神タナトスとヒュプノスなどギリシア神話の要素をたくさん盛り込み,非常にファンタジックな地獄めぐりを描いています。ここら辺は何べん読んでも面白いですし,ギリシア神話やキリスト教の本を読んで知った名前に出くわし,「あ,ここから名前を取ったんだ」と知るのもまた楽しいです。
この冥界で,ハーデスを守る冥闘士(スペクター)と戦いながら奥へと進むうち,琴座(ライラ)の聖闘士オルフェが登場したり,アンドロメダ座の瞬がハーデスに肉体を乗っ取られたり,黄金聖闘士が全員復活したり,行方不明だった星矢の姉さんが唐突に現れたり,それこそドラマに次ぐドラマの連続。最終的に,神々しか通れないといわれる嘆きの壁に黄金聖闘士12人が力ずくで穴をあけ,そこを通ってエリシオンへたどりついた星矢たちは,アテナの血を受けた神聖衣(ゴッドクロス)の力でタナトスとヒュプノスを倒し,冥王ハーデスも倒して地上に平和を取り戻しましたとさ。めでたしめでたし。最後,星矢たちは地上に戻って来られたのかどうかわからないまま終わってしまいますが,その終わり方がまた余韻があっていい感じです。
さて,ハーデス編は大好きなのですが,読み終わって気にかかることが2つばかり。
星矢の姉さんは実は魔鈴さんだった,じゃだめだったのかな? 聖域編からずっと,魔鈴さんが星矢の姉さんなんじゃないかと話をずっと引っ張っておきながら,最終話直前になって唐突に出てくる本物の姉さん。しかも記憶喪失。魔鈴さんも生き別れになった弟を探しているという話だったのに,そっちは全然解決されないまま終わっちまいました。なんか魔鈴さんがかわいそうでしたよ。
それから,死んだ黄金聖闘士たちはハーデスに寝返ったふりをして戦っていましたが,蟹座(キャンサー)のデスマスクだけは本気でハーデス側に寝返っているような気がします。龍星座(ドラゴン)の紫龍と戦った時は黄金聖衣に見放され,復活して聖域を襲って来た時はノリピー語をしゃべる陳腐な小悪党になり,牡羊座(アリエス)のムウの必殺技“スターライトエクスティンクション”を受けて冥界に逆戻り。ラダマンティスに命乞いをした挙句,「またあの死の国へ戻るのはもうたくさんだあーッ」と叫びながら逃げ回り,ラダマンティスに死界への落とし穴にたたき落とされていました(このあたり,我が魚星座(ピスケス)のアフロディーテも一緒なのが悲しい)。いいところがまったくないのですが,最後の最後に他の11人の黄金聖闘士と一緒に復活してかっこよく微笑まれても……かに座の方には申し訳ないのですが,信用ならん。
それにしても,こういうパワーのある作品に近年お目にかかっていないような気がします。