言わずと知れた名作を。
中原淳一の挿絵が有名だけれど、こちら河出書房新社さんの新装版で。
矢絣のお召の着物に、海老茶の袴。女学校などを舞台に繰り広げられる、女の子たちのときめきに溢れる日常が、花の名を冠した作品で綴られる短編集。
憧れの上級生、可愛い下級生、聡明な級友。街で見かけた美しい奥様、地元
...続きを読むの海辺で出会った可憐な人。
でも彼女たちは決してふわふわした夢の時間を送っているわけではなく、しかと地に足をつけて生活している。彼女たちは理想を求め、常に世界と抗う。学び学び、追い求める。時に父母なき妹弟の姉として。病に伏した人の友として、姉として、子として、そして本人として。
「女子は結婚し家庭に入るもの」とされていた時代、男性がほとんど登場しないこの物語を読んだ女の子たちはどれほど勇気づけられただろう。女の子たちはただ庇護されるべき存在ではない。女の子たちはお互いを慈しみ、励ましあい、手を取り合い、自らの信念の元に生きていくことができるのだ。
初期〜中期のお話が好きだな。友情よりも少し強いけれど、愛情まではいかない繋がりが生まれ、育まれ、切なさのなかに消えてゆく。
特に好きなお話たち↓
❁*。上巻
・コスモス
・紅椿
・雛芥子
・三色菫(少し毛色が違うけどこれはこれで切ない)
・露草(このお別れが切な苦しすぎる)
・寒牡丹