波戸岡景太のレビュー一覧
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スーザン・ソンタグは、小説は読んでないが、翻訳された批評集は多分全部読んでいると思う。
ソンタグの言っていることは、時期によって論調が変わって、以前とは矛盾することを書いていたりするのだが、それも彼女が無理やりの自己一致の連続性を維持することよりも、自分の変化をそのまま表現する誠実さのようなものだと思っていた。
そんなことを思いながら、本書を読んでみた。
目から鱗がたくさん落ちた。
そう、ソンタグは、「カッコ良い」のだ。だから、つい読んでしまうのだ。そして、そのカッコよさは、時代が変化する中で、主流の言説がどのようなものかによって、それに抗う形でなされる批評は変わっていくのだ。その切り -
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ソンタグの写真についての考え方を知りたいというきっかけで手に取った。
ソンタグの生き方とその時々の思想を知るには有用な本だと思う。ただその思想を現代社会を批評する目的で援用できるかというと「?」と思ってしまった。マイナスの意味ではなく、彼女の思想を読めばなおさら。
故人を過去に閉じ込めたまま借り物にしてああだこうだと言うよりも、純粋にソンタグならこの状況を何というか知りたい、という感じ。
ただ写真のところはよく理解できなかった。写真=「他者のヴァルネラビリティへな関与をやめない暴力的なツール」とあるが、その当否は被写体と撮影者の関係性によるのでは?写真がそれを固定してしまうということならま -
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ライトノベルと称される文芸ジャンルの作品群のなかにえがかれた「現代」のとらえかたを、文学研究者である著者が読み解く試みがなされています。
「ラノベ的であることから限りなく遠い「大人」であろうとしていた」と述べる著者は、東浩紀の『ゲーム的リアリズムの誕生』(2007年、講談社現代新書)によって開かれたコンテンツの文化的読解に刺激を受けつつも、「ラノベ的世界」への「敷居を片足またいだ格好のままで」その作品を読みはじめたと語っています。東のコンテンツ批評が、思想の分野における業績を背景になされたものであるとするならば、本書は現代文学の研究による東の文化的読解に対するアンサーとみなすことができるよう -
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「本書の考える「現代」とは、あくまでも、誰かのノスタルジアの産物として観測可能な事象だ」(183頁)というスタンスのもと、第二次大戦以降の日本において、各世代の人々の内的な過去の嫌悪/美化のパターンを描こうとしている。特に、ポップ世代として村上龍や村上春樹を据えながら、その後の村上隆や穂村弘との、さらにその後のラノベ世代の感覚(自分や世界との向き合い方)の違いを、様々な作品を紹介しつつ説いていく。後の世代になるにつれ、内的な過去が依ってたつリアルが失われていく。それはよいことでもなければ、悪いことでもない。そんな感じだろうか。著者の論の運びは図式的なようで感覚的。視点は面白いが、読んで納得、と
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ラノベを通して現代日本を解釈しようとする哲学の書。
まかり間違ってもオタ向けでもなければ、一般人向けでもない。
やたらめったら内容は難しいが、ハルヒ世代の人間としてところどころに納得できる内容はある。
アメリカとの対比をもって解釈しようとする昭和世代に対し、
僕らにとってそれは所与のものであまり興味がない。
非リア充である僕らのぼっちこそがテーマだと言うのはひどくしっくり来る。
それ以前の部分の語りはいまいち分かりにくいが、
ただライトノベルの書き手とその読み手の間にある種の断絶があるかもしれないというのは、
ある種の恐怖も感じるところ。
言ってみれば自分もおっさんであり、若い世代との断絶 -
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本書は決して「ラノベ」論ではない。本書が語るのはあくまでも、書名のとおり「ラノベのなかの現代日本」なのである。ライトノベル中に散らばる「現代日本」を知るヒントを拾い上げ、現代文芸の流れの中に組み込もうとする意欲的な評論だ。
その結果見えてきたのは、従来の「オタク」とは違う「ぼっち」という生き方である。「リア充」を中心とした「大衆」を否定し、自らの世界に独りであろうとする存在である。詳細は本書にて確認をしてほしいが、ここで特に取り上げたいのは「ぼっち」の「物語の主人公になれない」という特徴である。「ヘタレ男子」をその源流とする「ぼっち」系主人公は、その「ヘタレ」さ故に「物語の主人公」とはな -
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ラノベ世代の若者が抱く上の世代との感覚的断絶感の正体を、それぞれの世代の作家が作品に描く「現代日本」を抽出して比較しようとするもの。断絶感の概形には納得するけど、文学批評研究を読み慣れてないからか不安が残る。という意味で星3つ。
こういう種類の本にありがちな「リア充」「DQN」みたいなワードに飛びつく、といった事が無かったので、そういう点では安心して読めた。そういうスラングはもはや大人の言葉とはかけ離れた世界のものである、という問題意識を始めに提示してくれているから。
この本は異世代との交流の薄い、交流を避ける人に読んで欲しいと思う。それでもなお異世代への不安が残るとすれば、なぜ不安なのかを突 -
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帰属感=ノスタルジア(四方田)
ラノベ・・・自らを偽物に貶める態度=読者の態度
ポップ・・・権威はコケにされ、ヒーローは大衆と愛を分かちあう。
⇔ラノベ(疎ましい)
ライト=成熟したポップの上に成り立つ、本命ありきの浮気相手
よりアメリカに近いのはどちらか
田舎に張り付いたアメリカ・・原風景
オタク文化の成熟⇒村上隆、平成日本における「絶望」=へたれた社会のポップ、表層的な軽さ=スーパーフラット
穂村弘・・「遅れ」、ポップな無意味
東浩紀・・オタク系文化の歴史とは、アメリカ文化をいかに「国産化」するか、その換骨奪胎の歴史だった
涼宮ハルヒの閉鎖空間=現代日本に辟易した若者たちに見出された、可能