松竹伸幸のレビュー一覧
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現在、一方では、尖閣を日米安保条約第五条(共同防衛)の適用地域とする一般的な日米合意がある。しかし、他方では、日米政府間の合意文書「日米同盟:未来のための変革と再編」(2005年10月29日)によると、"島しょ防衛は自衛隊の仕事"だと取り決められており、オスプレイどころか在日米軍そのものについても、尖閣防衛という事態において何らかの役割を果たすことなど想定されていない。それにもかかわらず、漠然として不安が日米安保を強化することへの支持を生み出している。(P.19)
日本の軍事戦略というのは、ただただアメリカ一国に依存するというだけのものでしかないというのが、この小泉発言が示したことであったといえよう。やはりそれは戦略の名に値しない。(P.70)
憲法九条の制約という言葉がよく使われるが、専守防衛という日本の考え方と国際法の間に、それほど乖離がないことは理解していただけたであろうか。これは武力を違法化しようというのが国際法と国際政治の流れなのであるから、いわば当然なのである。ということは、自衛権の要件を厳守することは、九条のある日本だけの制約ではないということだ。本来ならどの国も守るべきことを、九条があるが故に、日本が率先して守っているという程度のことでしかないのである。(P.91)
集団的自衛権の行使を求める人々は、心の底から、それが日本の防衛のために必要だと考えているようである。なぜなのだろうか。おそらく、イラクに自衛隊を派遣した小泉首相の論理と同じであろう。、アメリカが困ったときは助けておかなければ、いざというときに助けてくれないだろうというものだ。後方支援だけでは不十分だと叱られるので、戦闘行為にも参加して血を流しておくことによって、いざというときはアメリカも血を流してくれることを期待するというものだ。相手に好かれるためには従順になればいいのだという心理は、国際政治どころか、いまや恋愛小説の世界でも通用しないだろう。(P.108)
だから大事なことは、理論的にはもてる兵器であり、もてることを明らかにしつつも、「もっていない」ことを逆手にとった交渉と対話こそが、日本の本領を発揮すべき分野になると考える。すなわち、九条の軍事戦略を確立した日本は、他国に対してはも、同様の戦略を採用すべく働きかけるのである。九条の「制約」が世界的規模で軍備の規制に貢献したことはすでに紹介したが(第三章)、日本は九条の「優位性」
をフル活用し、自衛の範囲を超える軍備を持たないよう各国を説得するため、全力をあげるべきだろう。(P.134)
日米地位協定の規定によれば、このイタリアの実例と同じく、アメリカが裁判することになっている。そのこと自体は地位協定の定めなのだから、仕方がないかもしれない。ところが、この五万件の事故中、アメリカが裁判がおこなわれたのは1件にすぎないことが、外務省の資料で明らかになっている。(P.173)
これは、日本を防衛する場合も、抑止戦略で他国に打撃を与えるのではなく、自衛権の発動の範囲にとどめるべきだということだ。日本もアメリカも同じ自衛権を行使するといっても、ミサイル策源地(発射基地)攻撃など日本には軍事能力上できないこともあるので、それで分担することをアメリカに求める選択肢もある。(P.178) -
Posted by ブクログ
物騒なタイトルだが、「軍事力を強化して、日本も戦争の出来る国にしよう!」という本ではない。また、私自身も戦争には絶対反対の立場であるが、ここ数年で日本国内の空気がはっきりと変わってきたと感じている。
「戦争は嫌だけど、色々考えると、日本も軍事力を強化した方がいいんじゃないか?(軍事力の強化もやむを得ないのでは?)」というのが、多くの国民が漠然と思っていることではないだろうか。
そのような現実に対し、護憲派の人たちがよく口にする「話し合いで平和的解決を」には、理想としては共感するし、そうあるべきだと思うけれど、どうも話が噛みあっていないのではないか?と常々思っていたので、この本はとても興味深く読んだ。
この本の中で著者は、次の3つの提案をしている。
・もし、日本が侵略されるようなことがあっても、国民の命と財産を守る
・周辺諸国の軍隊との対立を減らし、協調を増大させる
・日米安保に代わる平和の軍事戦略を採用し、アジアの平和と安定を実現させる
この3つが、「九条の完全実施」であり、九条があっても国防は可能だ!と。
そこに至るまでの道筋としては、かなり実現困難と思われることが書かれている。しかし、議論を煮詰めていくことでまた違った発想も出てくるのではないだろうか。
これまで憲法に関心がなく、日米安保についても余りよく知らない人でも読みやすい本であると思う。 -
Posted by ブクログ
著者はジャーナリストというふれこみだったので、ネット検索してみれば、K産党候補にもなる左派の人でした。そのせいか、ガチガチでは無いにしろ、一歩引いてもやはり理想論としか捉えられない。だが、第9条の戦略を達成するために自衛隊を合法化したり、将来的にアメリカを説得して在日米軍の規模縮小、日米安保破棄を目指すという方針はかなりの進歩か。しかしながら、かつてS民党は党是であった自衛隊の違法性を転換したことによってその支持者を失っていったのではなかったか。反J民票がM主党やI新、Mんなの党ではなく、K産党へと流れた東京都議会選挙の流れを受けて、来る参院選で躍進するかもしれないK産党が著者の戦略を受け入れる時、どういった流れが起こるかが興味深い。ただ、第9条を維持しつつ、自衛隊を正当な軍隊とする旨を追加するとするマニュフェストを発表したK明党も、連立政権内にあってJ民党をけん制するという意味では眼が離せない。