黒野耐のレビュー一覧
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Posted by ブクログ
「なぜ無謀な戦争に走ったのか」がわかれば、将来「無謀な戦争に走らずに済む」わけではないような気がしてきた一冊。
新書サイズにも関わらず、陸軍大学校と世界大戦の関係をきっちりと時系で説明できていて著者の知性というかドヤ顔が伺える。
陸軍大学校の創立から消滅まで、敗戦の一因としての立ち位置を新書レベルで克明に書かれている。例えば学校の卒業者が受けた教育の内容が貧弱だったために、第一次大戦において陸軍は「欧州に派兵しない(したくない)」という結論に至ってしまったのだが、これが無残な結果を招くことが予想できなかったなどなど。また共産化を防ぐという目的を離れて中国大陸で戦闘を初めてしまう暴走ぶりなど -
Posted by ブクログ
幻の選択肢で日本は変わっていた。戦争の悲劇を避けられた「たられば」を検証する。
本書は日清戦争から太平洋戦争まで日本が取り得た選択肢を検証した本である。
日清戦争時には北京攻略も視野に入れていたが、伊藤総理は清国政府が瓦解し交渉相手を失う事を恐れていたという。
一番残念なのは、日露戦争後に日米共同の満鉄経営が実現しなかった事であろう。アメリカの鉄道王ハリマンと仮契約を結ぶところまでいったが、小村外相の反対により実現しなかった事である。これにより日本が警戒され、米国との摩擦が増すようになる。
満州事変以降は、悲しいくらいの選択肢しかない。軍部の独走と指導者層の弱体化の悪弊がよく解る -
Posted by ブクログ
日本の近代戦争史の様々なターニングポイントにおいて、別の選択をしていたら歴史はどうなっていたか、という歴史好きには刺激的な題材。
防衛大出身で自衛隊で戦史を研究した筆者らしく、「たられば」の前説として現実の歴史で起こった各戦争をコンパクトながらも戦術・戦略的な見地から解説しており、日本近代戦争史を俯瞰するには適した書籍といえる。
大まかな方向性としては、日清・日露は政戦略が合致することで的確な戦争計画の遂行ができたが、それ以後は軍部の暴走と政軍トップのマネージメント能力の欠如により戦争計画すら立てられず敗北(戦争目的の未達)した、という司馬史観的な歴史観に基づいている。
ただし「たられば」