黒野耐のレビュー一覧
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Posted by ブクログ
「たられば」で歴史を論じても意味がないと考えるのはおかしなことだ。だって歴史から教訓を得るためには必要条件でしょ?
この本は、果たしてどのような選択をしていたら、日本はアメリカと開戦せずに済んだか、ということを研究している。どうやればアメリカに勝てたかということではなく、勝てないとわかっている戦争をどうすれば回避できたか、ということ。
表紙は変だけど、とても真面目な本だ。
日清戦争の時代から真珠湾攻撃まで、時系列に沿いながら、その時点での回避できた点を浮き彫りにしていく。
特に重要な転換点だったと思われるのは、第一次世界大戦で欧州が戦場になっているとき、イギリスなどから参戦の要請を受けていたのに、参戦(派兵)をしなかったこと。なおかつ大戦の混乱に乗じて、山東半島やドイツ領南洋諸島を占領してしまったこと。
これによって、日本人は欧米人に「窮地に陥っている我々を助けるどころか、混乱に乗じて領土を奪う卑怯者」とみられるようになってしまった。
その後のワシントン軍縮会議で日本が厳しい立場に追い込まれた原因はここにある。
あとは比較的よく知られていることだが、満州建国などあからさまになる日本の野心を警戒した欧米は結束して対日包囲網をつくりあげていく。
でも案外、満州だけにとどまっていたら国際社会に認めさせられるだけの可能性はあったようだ。
そもそも欧米が日本に対して怒るのは、日本ばかり中国大陸を食いやがって、という感情なのであって、中国人を守ろうとかそういう考えではない。パイの奪い合いに俺たちも参加させろ、ということだ。だから満州以外は、もう手を出しません、中国には戦争を仕掛けません、と言えば、アメリカとの関係改善の余地は多分にあった。国共合作も起こらなかっただろうし。
でも、いけいけどんどん、で戦争仕掛けまくっちゃうんだよね、現地の軍人たちは…
これを「プチ石原現象」と著者は呼ぶ。
これは政府の意向を無視し、統帥権を都合よく持ち出して、現場の判断で戦線を拡大していき、結果として成果を上げれば、政府の意向を無視したことが問われないばかりか、逆に政府が追認していく、という石原莞爾が得意とした戦術。
満州国を建国したあと、国力増強のため中国との戦争を避けることに動いた石原だが、関東軍には「プチ石原」軍人が多く誕生したため、歯止めをかけられなかった。
やっぱりここで止められなかったことが日米開戦を不可避にした一番大きな要因のように思う。
本書はまだ「真珠湾を攻撃しなかったら」ということも論じているが、これはいかに最小限の被害で講和まで持ち込めるかということを論じたことなので、面白い内容だけれど、回避という点からは外れるのでここで紹介するのはやめたい。
面白かったので、再読するかも。 -
Posted by ブクログ
ナポレオン戦争の頃から近代のイラク・テロ戦争までの戦争の移り変わりを解説。
地政学に基づき大戦略がかわり、同盟国・敵国がかわり
技術的進歩に伴って戦い方が変わっていく。
戦争そのものの意味すらも戦争のたびに変わってきていることがわかる。
時代にそって戦争学的視点を養った後、
最終章では日本を取り巻く東アジアの現状を紐解く。
まさに今までにないほどの緊張状態。
核を持たず、武力を持たず。
さらには防衛費用を削減する。
そんな日本でも立ち向かうべきなのにヘコヘコ頭を下げているという状況。
軍をもたなければ戦争なんて起こらないなんて誰が言った。
周辺各国はそんなことは言いやしない。
一度始まれば日本なんて混乱しているうちにめちゃめちゃでしょう。
戦争をするための本ではない。
戦争を知るための本。
皆、この本をもってして戦争を学ぶべき。 -
Posted by ブクログ
戦争という行為、それに至るまでのプロセス、そしてその後のプロセスを論ずる「戦争学」の入門書と言える一冊。基礎とも言うべき「地政学」の解説から始まり、事例として取り上げた戦争はナポレオン戦争からイラク戦争までと幅広い。
著者によれば、欧米の大学には戦争学あるいは軍事学の講座があり、これを持たない日本との意識の差は歴然としているとのこと。とは言え、著者は戦争を奨励しているわけではもちろんなく、「戦争を勉強し、戦争を知れば、戦わずして国益を損なわない途は必ず見つけられる」という考えで書いている。今の日本に徹底的に欠けている学問であることは間違いない。
7年前に出された本書に今 惹句をつけるとすれば「政治家必読の一冊!」ということになるんだろう。(かなり安っぽいが) -
Posted by ブクログ
6年ほど前に読んだ本だが、集団的自衛権の行使容認やイスラム国の台頭など、新しい情勢を踏まえて再読。
はじめに、「戦争学」の基礎として地政学を位置づけた上で、マッキンダー、マハン、スパイクマン、ハウスホーファーなど歴史を動かしてきた代表的地政学者を取り上げ、「ランドパワーとシーパワー」「ハートランドとリムランド」、ナチスに影響を与えた「パン・リージョン」などの概念を解説する。
また、プロシアのフリードリヒ大王に代表される常備軍による「制限戦争」と、ナポレオンに代表される国民軍による「絶対戦争」との違いが説明される。
クラウゼヴィッツは、「戦争の目的は相手に我が方の意志を強要すること」とし、そのために敵の戦闘力を撃滅しなければならない(つまりナポレオン型の絶対戦争)と主張した。これが後世の政治家・軍人たちに影響を与え、以後の戦争では各国とも甚大な被害を出すことになった。
また、クラウゼヴィッツの有名な言葉「戦争は政治におけるとは異なる手段をもってする政治の継続にほかならない」に対し、著者は「理性的・合理的な政治が前提」であるとして批判している。ただ、戦争は政治によってコントロールされなければならないというのはそのとおりだと思う。
リデルハートは、戦争の目的は短期間のうちに平和を回復することとし、敵の殲滅自体は絶対的な目標ではないと主張した。その上で、敵の指揮所・通信施設・交通・補給線を狙って敵を麻痺させられれば事足りるとする「間接アプローチ戦略」を掲げた。この戦略は、イラク戦争における米軍のハイテク戦術をもって高度に実現する、として著者は米軍のイラク戦略を評価している。
冷戦期の防衛戦略について、リデルハートは、大量報復戦略はかえって小規模な紛争を多発させるおそれがあると指摘した。
マクナマラ国防長官は核の威力をアピールすることによる抑止戦略(確証破壊戦略:1965年)を掲げたが、米ソは1972年に暫定協定を結び、相互確証破壊戦略=MAD(防衛の放棄)という逆説的な防衛戦略を採った。
レーガン大統領は、後のミサイル防衛に繋がる戦略防衛構想(SDI)を打ち出したが、MADの理念を否定するものであるとして否定された。
ゲリラとの理想的な戦い方として、フィリピンのマグサイサイの戦略が紹介される。マグサイサイは人道的援助という“善政”により農民たちの支持を獲得し、農民たちとゲリラとの分断に成功した。
著者によれば、マグサイサイの対ゲリラ戦略の成功の鍵は、ゲリラへの外国から援助を断つこととゲリラの拠点をなくすことだったという。いずれもフィリピンが島国だからこそできたことと著者は指摘している。
これはイスラム国との交渉戦術にも応用できるか?と思ったが、著者は民間支援活動が「外国人によっておこなわれた場合は効果を失う」(p185)と言い添えている。残念。
しかしこれは著者自身が後の章で対テロ戦争について言っていること(戦後の占領政策が大事)と矛盾してもいる。
テロとゲリラの違いについて。
テロは少人数グループ、ゲリラは多人数からなる組織。
テロの目的は恐怖の支配、ゲリラの目的は新政権樹立。
テロは民衆を標的にするが、ゲリラは民衆の支持を得ようとするので標的にはしない。
また、テロリスト集団は国ではないので外交交渉ができず、戦争を事前に抑止することができない。
独立したテロリスト集団が乱立しているので戦争終結の交渉もできない。
ゆえにテロとの戦いは難しく、明確な終わりがないのだという。
著者は「テロに対処するのに刑事裁判は無力」(p216)と言っているが、この点について掘り下げた議論をしていない。現実にテロリスト集団は一国の軍隊に対抗できるほどの武力を保持している、というのは理解できるが、果たしてそれだけで刑事裁判が無力と言えるのか疑問に思った。「対テロ戦争はいかにして正当化できるか」という問題に関心をもっていたので、そこが詳しく書かれていないのは少し残念だった。
最後の章では現代日本が抱える軍事的問題を明らかにし、現状の政策批判及び著者独自の政策提言を行っている。
しかし「政府が集団的自衛権の行使に踏み切らないのは、中国や韓国の……批判を恐れてのことである」(p282)というのはやや乱暴な議論ではなかろうか?普通に考えて一番大きな理由は「憲法違反」ではなかったか。「日本有事と周辺事態の区別」はまさしく憲法の要請を満たすためのものだったはずだ。 -
Posted by ブクログ
[ 内容 ]
日露戦争に勝利した新興国家はなぜ破綻したのか。
組織の欠陥と無定見な教育に敗戦の真因を見出す新史観。
[ 目次 ]
第1章 山県有朋の参謀本部
第2章 幻となった統合参謀本部
第3章 陸軍大学校とメッケル
第4章 参謀本部の初陣―日清戦争
第5章 問われた陸大の真価―日露戦争
第6章 衝撃と迷走―第一次世界大戦
第7章 石原莞爾の挫折―日中戦争
第8章 組織が生んだ狂気―大東亜戦争
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読書の速度(時間がかかった・普通・一気に読んだ)
[ 関連図書 ]
[ 参考となる書評 ] -
Posted by ブクログ
[ 内容 ]
「愚かな戦争」は「愚かな政治家」が起こす!
日本軍の敗因を前著『参謀本部と陸軍大学校』で喝破した著者が、戦史から導いた「戦争回避」の原理。
[ 目次 ]
第1講 地政学と大戦略
第2講 二一世紀への地政学
第3講 ナポレオン戦争とクラウゼヴィッツ
第4講 第一次世界大戦とリデルハート
第5講 第二次世界大戦と絶対戦争
第6講 核の恐怖下の戦争―冷戦
第7講 冷戦下の制限戦争とゲリラ戦
第8講 二つの新しい戦争―イラク戦争
第9講 アジア太平洋の戦争学
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Posted by ブクログ
日本はなぜ太平洋戦争へと突き進んでいったのか?陸軍、関東軍の暴走というのはよく言われている。ではなぜ陸軍がそうなってしまったのかを、陸軍の士官を養成する陸大の教育の分野から問い直している。その対象は広く、陸大・参謀本部の成り立ち、関係性や海軍、政府との関係について詳細に説明されている。また私が今まで勉強して来なかっただけだが、太平洋戦争に至るまでの動きが細かく書かれていたので、勉強になった。
人材教育の重要性と難しさは企業や現在の義務教育の場面にも当てはまると思った。また何を教えるかとはどんな人材を作るかであり、それは数十年後の日本や世界のビジョンをきちんと描かれていなければならず、今の日本にも不足している点だと思った。