G・フローベールのレビュー一覧

  • 三つの物語
    書き手の存在が極限までに削ぎ落とされた結果生まれた、素朴でスマートな写実力が魅力のフローベール文体。個人的にはそこまで惹かれないが、公平性、主人公と作者の距離の絶妙な取り方という点に関して、とても勉強になる。
    書き手の感情はもちろんのこと、描かれた人物の内面をこと細かに書き連ねることはせず、分かりや...続きを読む
  • ボヴァリー夫人
    『ボヴァリー夫人』

    「そろそろやばいかな」とかこの若妻は思いません。
    元祖ゴーイングマイウェイな”ボヴァリー夫人”。

    若い時の夢見がちな空想って、
    いつしか現実と向き合う時間が増えるにつれ
    にこやかに送り出せるものだと思うのですが、
    (と言うかサヨナラせざるを得ない…?)

    この妻、諦めない。...続きを読む
  • ボヴァリー夫人
    最初は冗長に感じたが、読み進むうちに繊細な情景描写や感情表現にぐいぐいと引き込まれた。文学史上に残る傑作だと思う。翻訳も丁寧で読みやすい。
  • ボヴァリー夫人
    冷静で緻密な描写に終始圧巻される。
    ストーリー自体は現代ではありふれた転落劇だが、これでもかと積み重ねられた情景描写が雄弁で士気迫ってくるものがある。
    農業共進会でのロドルフとの逢引シーンが素晴らしい。
    役者あとがきまでボリューム満点で満足度が高かった。
    シャルルは何も悪いことはしていないし一貫して...続きを読む
  • 感情教育(下)
    ついに…読み終えてしまった…!めちゃくちゃにおもしろくて、素晴らしい作品…

    ①ダンブルーズ氏の葬式における描写。
    ・フローベールの死に対するあっけない滑稽な描きかた。『ボヴァリー夫人』でも死人の扱いはさっぱり、淡々と扱う。死にゆくまでの肉体的な苦しみは丁寧に描くものの、死そのものに対する厳かな目線...続きを読む
  • ボヴァリー夫人
    どうしようもない女性の話。真っ当で愛情深い夫を退屈で凡庸だと軽蔑。夫は安定した稼ぎがあるのに、この人でなければ自分はもっと裕福な暮らしができたはず、と自惚れ。そんな女性の話でも一応の格調を保っている。文章の美しさもさることながら、女性の一途さ故に。ただ物語のような恋愛をひたすら求める様は、哀れだけど...続きを読む
  • ボヴァリー夫人
    でたらめな父親と、気位の高い母親にふりまわされて
    シャルル・ボヴァリー氏は自分では何もできない男だった
    親の言うまま勉強して医者になり
    親の言うまま資産ある中年女を嫁にとった
    しかし患者の家で出会った若い娘と恋におち
    初めて自らの意思を持ったシャルルは
    熱愛のさなか妻が急死する幸運?にも恵まれ、これ...続きを読む
  • ボヴァリー夫人
    古典なので当然ですが、話の筋は実に古典的な不倫モノです。しかし精緻で目の前に情景を広げさせ、人物を浮かび上がらせる描写が光ります。恋する乙女のまま妻となり、結婚の理想と現実の落差と凡庸な夫に苛立ちを覚え、背徳に身を崩す作中のエマが実に人として最低で、実体のある生々しい存在感を放ちます。今では凡庸とい...続きを読む
  • ボヴァリー夫人
    よく思うのですが、女性が妻となり、家庭を守るという行為は、外に出て荒波にもまれながら、家庭を同じく守る夫とは対照的な苦痛があると思うのです。
    さまざまな変化を社会という人ごみの中で体験する変化への苦痛と戦う夫と。
    何も変化が無く、単調な家事を繰り返し、黙殺されそうになっている妻。
    対極に居るから「だ...続きを読む
  • ボヴァリー夫人
    私ってなんであんな駄目な男と付き合ってしまったのかしら…
    そんな事を考えているそこの奥様!これを読めばエマを共感出来るはず!
    夢見がちなエマが一つの結婚の間違いから転落人生を追ってゆく
    妄想はいいけれどホドホドに。
    素敵なラブロマンスなんてないのさと乙女の夢をぶち壊す作品です
    原語は文章が綺麗で女の...続きを読む
  • ボヴァリー夫人
    フロベールの他の本読まないといけないですよね。これしか読んだことないから…。感情教育とか、紋切型辞典とか…。
  • ボヴァリー夫人
    配偶者や恋人以外の男女に心が傾くことを浮気と呼ぶのは実に言い得て妙だ。足が地につかず、まさに気持ちがフワフワと浮き立つ如きその感覚は、恥ずかしながら私自身にも経験がある。以前読んだ桐野夏生著「柔らかな頬」のなかで、不倫相手と密会する主人公が「このまま彼と生きていけるなら子供を捨ててもいい」と考えるの...続きを読む
  • ボヴァリー夫人
    初夜のあとシャルルがむしろ処女だったみたいでエンマはスンとしてたのウケる
    「彼女が知らない場所で寝るのはこれで四度目だった。(中略)そして、そのどれもが自分の人生に新たな段階の幕開けをもたらしてきた。場所が違うので、同じことがまたしても起こるかもしれないなどとは思えず、これまで体験してきた部分がなに...続きを読む
  • ボヴァリー夫人
    19世紀フランス文学の名作。モームの世界十大小説のひとつ。原文に忠実な訳文を目指したという日本語最新訳。

    恋愛小説のような情熱的な恋に憧れていた少女が、うっかり平凡な結婚をしてしまった反動で引き起こしてしまう壮絶な不倫劇。不倫にまつわる情動の燃え上がりや苦悩の激しさをあますことなく描き切り、恋愛と...続きを読む
  • ボヴァリー夫人
    装丁が水色で夫人の後ろ姿の後毛まで。
    フローベールの文章に忠実に訳してあるそう。


    ルルー氏のとりたてが執拗で、上乗せしてたんじゃないかなどど思った。378
    エンマは、いいようにおだてられてしまったけど、このルルーの悪党ぶりには天罰でも降らないかと思ってしまう。
  • 感情教育(上)
    冒頭は、これでもかというぐらい当時の様子が描写されている。
    まさに、もう一つの主人公は19世紀(改造前の)パリ。

    主人公フレデリックが、超賢くもとんでもない阿呆でもなく、ごくごく普通な(時に失敗する)人間なのが良い。

    これから面白くなるー!というところで下巻に続く。

    今のところ回収見込みが無さ...続きを読む
  • ボヴァリー夫人
    吉田健一の『文学人生案内』第一章「文学に現われた男性像」に小説には女性が華やかに、かつ悲惨に焦点を当てられ中心になって描かれているのが多い、男性には光が当てられてない、 という記事にはわたしは目をひらかれる思いだった。

    吉田氏はこの本の中で「フローベルの『ボヴァリー夫人』」という章で詳しく、文学論...続きを読む
  • ボヴァリー夫人
     ボヴァリー医師の妻、美しいエマが、姦通を重ね、虚栄に溺れ、借財に追われ身を滅ぼす話。目の前の誘惑に負ける、強欲で愚かなエマ。遺された者のことを考えない、身勝手で卑怯なエマ。でも、およそ500ページにも及ぶ彼女の半生を辿ると、同情してしまう自分もいる。
     エマは根から倫理に反した人間ではなかった。た...続きを読む
  • 感情教育(下)
    フレデリックとともに二月革命のパリを体験する第3部だけど、後半一気に展開する。それに合わせて一気に読み進めてしまった。それにしてもフローベールの文章は読み落としを許さない文章で、読み落とした文章が重要だったりする。今でも読み落とした文章はあるだろうから、もう一度読まないとと思う。
  • 感情教育(上)
    19世紀フランスの革命期の激動の中、主人公のフレデリックは立身出世、社交界で一目置かれる存在となることを夢みて行動。ウブなフレデリックと一緒に読者もまた当時のパリおよびその近郊での生活を体験する。会話や自然描写など、極めてフランス的な作品。