阿辻哲次のレビュー一覧
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Posted by ブクログ
・阿辻哲次「戦後日本漢字史」(ちくま学芸文庫)を読んだ。本書で最も良いと思つた一文は、「点を一つとれば、それだけで国民が正しい漢字を書けるようになる、とでもいうのだろうか。 日本国民もずいぶんとなめられたものである。」(138頁)であつた。これは「臭」の下が本来は「犬」であつたのが、戦後の漢字改革で「大」に改められた ことを言つてゐる。 「漢字は形が複雑で、覚えるのも書くのも大変だから、できるだけ簡単な形にして」(14頁)、児童の学習負担軽減と印刷の労力軽減をといつて行はれたことであつた。指令はGHQから出た。拒みやうはない。それに乗つて、戦前からの仮名文字論者やローマ字論者が活躍して行はれたのが戦後の国語国字改革であつ た。その最も分かり易い例の一つがこの「犬」か「大」の問題であつた。この結果として、私達は現在「臭」を使つてゐる。この路線は現在に至るまで変はらな い。実際、私達はなめられたのである。「民主主義と自由の権化である占領軍の幹部がデータの改竄を依頼するというのは尋常ではなく 云々」(55頁)、これは国字改革に先立つて行はれた全国識字能力調査の結果に関してであつた。この時の非識字者が2.1%であつたことを漢字改革の妨げになると危惧して、占領軍側から調査委員会のメンバーにクレームがついた。しかし、これは後の国語学の大家柴田武によつて突つぱねられた。これがなかつたら戦後の漢字改革がどうなつてゐたか。占領軍はこれさへも通ると思つてゐたのだから、日本を相当になめてゐたのである。戦後の日本漢字史は、このやうに「ずいぶんとなめられ」てゐた占領軍の漢字政策からの脱却を目指す歴史であつた。
・著者阿辻氏の戦後の漢字問題に於ける立場は、先の引用からも分かるやうに保守的だと言へる。先の引用に続いてかう述べる。「『当用漢字字体表』によって規範とされた字体には、このやうに文字学的に大きな問題をはらむものがたくさん含まれている。(中略)いまとなってはそれら若干の『問題字』をあげつらって、字体の変更を議論することは決して現実的とは思えない。すでに手遅れとなっているのが、私には非常に残念でならない。」(138頁)このやうな戦後の漢字改革批判に類する表現は他にもある。「字体表における字体の選定は(中略)誤解をおそれずにいえば、ごく少数の人による密室での作業であって、その結果に対する外部からの意見はまったく反映されることがなかったようだ。」(124 頁)これなども、あのいかにも不徹底な、所謂新字体がいかなるものであるかを教へてくれる。要するにああであらねばない必然性などはない。「似ているから一緒にしてしまった」(同前)だけのことであつた。そして、似て非なる問題が「印刷字形と手書き字形」(191頁)の問題である。ごく簡単に言へば、印刷された通りに書くかどうかといふ問題である。「教科書や辞書に印刷されているのが『正しい』字形であり、テストの答案などではその通りに書かないといけな い、という認識が蔓延しているように見受けられる。云々」(192~193頁)とあるやうに、これはもちろん印刷された通りに書く必要はない。習慣とデザインの問題である。はねようがはねまいが「字種としては完全に同じである」(192頁)。こんな当然なことを不明にしたのが戦後の漢字改革であつた。現在は目安になつた(これだけでも「脱却」である!)常用漢字表に至るまでにも様々な問題があつた。それらを丁寧にときほぐしてくれる。 さすが中国文学者、漢字で飯を食ふだけのことはあると言つては失礼であらうか。多くの人に読んでもらひたい書である。 -
Posted by ブクログ
著者が大学の先生だけあって、当たり前ですが、大学での語学授業に合間に話される
中国・中国語ネタが満載です。どれも、やはり、アカデミズムっぽく、中国語の成り立ち、日本語との違いなどを、わかり易く説明してくれています。
著者と中国語との距離感がわかって、非常に面白いと思います。
その距離感は、やはり、長い間、中国語との格闘の末に導き出されたモノで
非常に説得力があります。
これから、中国語を勉強する人や、今、現在勉強している人に対して、
「あなたが勉強しているモノは、こういうモノなんだよ」と、
教えてくれます。
この本を読んでも、中国語の能力は上がりませんが、どのように中国語と
付き合っていけばいいか?のヒントには確実になります。 -
Posted by ブクログ
<目次>
はじめに
1時間目 漢字の数
2時間目 とめ・はね・はらい、ってそんなに大事なの?
3時間目 音読みと訓読みについて
4時間目 筆順について
5時間目 部首の不思議
6時間目 学校教育と常用漢字について
ホームルーム 新しい時代と漢字
<内容>
予想通りの本で喝采した。それは、とめ・はねなどの問題と筆順の問題だ。以前から文字は他人が見て読めるように(もちろん丁寧に)書けることが大事で、とめ・はねなどや筆順は(ある程度)いい加減でもいいと感じていたからだ。著者によると、超有名な中国の書家などの文字も筆順は違うらしい。結局は戦後すぐに文科省(のある人が)個人的な指針として作ったものが一人歩きしたらしい。
また、以前から謎だった「法」「演」「漢」が「サンズイ」であることも解決した。結局は旧字体がとても大切である(「法」は本来「灋」。古代の裁判で羊がうそをついた人間を角で突き、川に流されることから)、ということだ。それによって本来の意味がわかるのだから。私は漢字の意味をとらえれば、さまざまな熟語(たとえば歴史用語なども)も間違えることなく書けるようになる、と考えているので、やっぱり我が意を得たりだった。 -
Posted by ブクログ
[ 内容 ]
四千年の昔から現在まで、世界でもっとも長く使用されてきた文字「漢字」。
その一字一字に秘められた由来や逸話に、日々のちょっとした出来事を交えて、漢字の研究者が綴る全100編のエッセイ。
鼻、休、亀、老、苺…普段なにげなく目にする漢字も、知ってみればこんなにおもしろい!
楽しく読めて、しかも学べる1冊。
[ 目次 ]
菊
米
里
豊
策
旅
黄
歌
鬱
聖〔ほか〕
[ POP ]
[ おすすめ度 ]
☆☆☆☆☆☆☆ おすすめ度
☆☆☆☆☆☆☆ 文章
☆☆☆☆☆☆☆ ストーリー
☆☆☆☆☆☆☆ メッセージ性
☆☆☆☆☆☆☆ 冒険性
☆☆☆☆☆☆☆ 読後の個人的な満足度
共感度(空振り三振・一部・参った!)
読書の速度(時間がかかった・普通・一気に読んだ)
[ 関連図書 ]
[ 参考となる書評 ] -
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ネタバレ[ 内容 ]
漢字が誕生して三千年、漢字の字体はさまざまに変化していった。
そのなかで、多くの部首が生まれ、消えていった。
所属する部首を移動したり、部首が分からなくなってしまったものも多い。
漢字を分解してみると、その合理性と矛盾がはじめて見えてくる。
50の部首ごとにたどる楽しい漢字エッセイ。
[ 目次 ]
[ POP ]
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☆☆☆☆☆☆☆ ストーリー
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共感度(空振り三振・一部・参った!)
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[ 参考となる書評 ] -
Posted by ブクログ
[ 内容 ]
世界でもっとも長い歴史をもつ文字・漢字。
この今に生きる古代文字の三千年に及ぶ歩みのなかから、興味深いエピソードを紹介し、漢字文化の面白さを語ります。
基本漢字の驚くべき字源も解説。
でも古い話ばかりではありません。
携帯メールの流行と漢字との深いつながり…なんて、考えたことありますか。
[ 目次 ]
序章 世界の文字のなかの漢字(ことばと文字;時間と空間を超える文字 ほか)
第1章 漢字はこうして生まれた(漢字の誕生をめぐって;漢字の先祖・甲骨文字 ほか)
第2章 日本に漢字がやってきた(漢字文化圏;古代日本の文字世界 ほか)
第3章 漢字の作り方(漢字のしくみ;漢字の成り立ち ほか)
第4章 漢字の現在と未来(漢字の危機のなかで;コンピュータと漢字文化)
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Posted by ブクログ
漢字制限論は明治から出されてきたが、敗戦の一つの反省として、初等、中等教育の大事な時期に膨大な漢字を覚えるのは無駄で、もっと大切なことに学習時間を充てるべきであるとの、「善意」の意見から本格的な検討が始まった。
当用漢字や常用漢字にまとめられるまでの検討状況や、その後の国民の反応など、漢字という身近な問題だけに、大変興味深い。首尾一貫性なく簡略化した漢字について著者が悲憤を洩らしているところなどは肯けるのであるが、ここまで学習により浸透してしまった以上、どうしようもないだろう。教育の恐さである。
ワープロ、PC、スマホと、漢字変換がどんどん簡単になってきた以上、表記ローマ字化の議論はもはや出ないであろう。漢字とこれからも付き合って行く上で、これまでの議論の歴史を知る上で、本書は有意義だと思う。