片岡剛士のレビュー一覧
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早稲田大学経済学部の若田部正澄教授が円高のメカニズムを理解するための3冊のうちのひとつにあげているのが本書。円高の状況、その原因と弊害、政府・日銀の対応について、理論、歴史、データに基づいて、丁寧な分析を行っています。本書を十分に理解すれば日々の為替の動きや金融政策に対して、新聞の論説やエコノミストのコメントの確からしさを見極めたり、自分なりの考えを述べることが十分に可能となるでしょう。
本書の内容で、特に私が興味をひかれたのは、円高がどの程度進行すれば弊害が生じる「過度な円高」と言えるのかの基準を示すところです。それに照らすと、リーマン・ショック後(2008年→2012年在)の110円 -
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日本経済の長期にわたる停滞の要因は何か。このテーマで書かれた本はきわめて多いが、本書は経済理論の枠組みを踏まえるとともに、可能な限りデータの裏付けを取りながら議論を進めたきわめて手堅い本である。著者の筆遣いはきわめて慎重であり、ついつい結論を急ぎたくなるところも、一歩一歩に議論を進めてゆく。類書ではあまり利用されない歴史データを用いているところも特徴だ。
経済理論というと、きわめて難解なイメージがあるが、本書でもっとも重要なのは「国際金融のトリレンマ」という考え方(p.85)。すなわち、為替レートの安定化、国際資本移動の自由化、独立した金融政策の3つの中で、同時に達成できるのは2つまでという -
Posted by ブクログ
1985年の「プラザ合意」によって、日本は国際通貨基軸であるドルの安定化のために、国内経済を安定を犠牲にせざるをえなかった。
急激な円高による国内は円高不況となり、政策当局は公定歩合の引き下げと内需拡大(投資の促進)によって乗り切ろうとした。
ところが、これがバブルを産む結果となる。
バブルによる地価高騰が社会問題になったことで、日銀が行ったのが急激な公定歩合引き上げ。1989年に2.5%だった公定歩合は、1990年に6%となる。
これは日銀の意図的なバブル潰しによって、株価の下落と地価下落という混乱の中でバブルは崩壊した。
その後,2000年のITバブルで一旦盛り上がりそうになった日 -
Posted by ブクログ
大胆な金融政策と機動的な財政政策の実施により、2013年の日本経済は円安・株高が進み、実質GDPの成長率は1.5%の結果を出している。物価上昇率は上がり失業率も改善が進み着実に実体経済にも好影響を及ぼした。しかしながら消費税の増税は2014年の日本経済に想定外の落ち込みを記録させるに至った。著者の主張は再増税の延期であり、現実は主張どおりとなっているが、いまだ深刻な日本経済の落ち込みは慰撫されていない。数値の高い経済指標に酔いしれるのもいいが、いまだ景気の恩恵に浴していない大多数の庶民が巷にあふれている。現実というものをしっかり見つめてほしい。