中川理のレビュー一覧
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Posted by ブクログ
文化人類学がどういう学問かについて、扱う範囲を横断的に取り上げた入門書。学生向けのようですが、一般の読者にも大いに参考になると思います。
30年近く前、大学生の頃に少し文化人類学を学んだのですが、当時とは比べものにならないほど文化人類学側の意識が変わっていて、決して解釈を押し付けない、人々にどこまでも寄り添おうとする態度が印象的でした。
たとえば、呪術の章でシャーマニズムが取り上げられていましたが、大学時代にはこれが社会の安全弁として機能する側面もあると学びました。シャーマンとして託宣をする者が貧困層の出身で、託宣を聴きに来る者が富裕層である場合などは特に。
しかしこの本では、そうした解釈を -
Posted by ブクログ
文化人類学というものに初めて触れました。エンジニアという職種で仕事していることもあって、普段から構造化やパターン化をして物事を単純にする思考が習慣になっています。そのような生活をしていると、ある種の人間社会にもその構造化やパターン化がうまく当てはまるような錯覚をしてしまっていると自覚しています。その人間社会に引いた、もしくはすでに引かれた境界線の脆さに対しての向き合い方や考え方に色々なきっかけをもらえた内容でした。
また、多くの論文を引用する文章構成は普段そのような文章に多く触れる身としてはすごく読みやすかったです。
文化人類学を学ぶことで、チームビルディングや会社の文化形成にも応用できる -
Posted by ブクログ
松村圭一郎の贈り物と負債、を読んだ(第6章)
商品交換と贈与交換は分離された営みではない、というのが面白い。そのやりとりの中で、モノは意味や価値を変化させる。どこでも売られている商品でも、親族の遺品だと故人を偲ばせる大切な形見になるし、有名人の持ち物はありふれていても高額オークションの対象となる。モノは、いろんな履歴を辿る。このモノの意味や価値の変遷に注目したのがイゴールコピトフだ。彼はモノがかけがいない交換不可能なものといつでも交換できる商品という2つの極のあいだを動く、と指摘した。
私達社会の人間関係は、特定のモノのやりとりをするからこそ人間関係として維持される。
家族は何もしなくても