文化人類学がどういう学問かについて、扱う範囲を横断的に取り上げた入門書。学生向けのようですが、一般の読者にも大いに参考になると思います。
30年近く前、大学生の頃に少し文化人類学を学んだのですが、当時とは比べものにならないほど文化人類学側の意識が変わっていて、決して解釈を押し付けない、人々にどこまで
...続きを読むも寄り添おうとする態度が印象的でした。
たとえば、呪術の章でシャーマニズムが取り上げられていましたが、大学時代にはこれが社会の安全弁として機能する側面もあると学びました。シャーマンとして託宣をする者が貧困層の出身で、託宣を聴きに来る者が富裕層である場合などは特に。
しかしこの本では、そうした解釈を価値観の押し付けだと切り捨てていて、30年近くも知識をアップデートしないままだった自分を恥じると同時に、文化人類学は約30年間、批判的に顧みてアップデートすることを続けてきたんだなと思いました。
煮詰まったとき、余裕がなくなったとき、選択肢は他にもあると思い起こすために、この本をずっとそばに置いておきたいです。