佐々木健一のレビュー一覧
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「面白いとは、差違と共感の両輪である」
アイデアは組み合わせによって出来上がる。組み合わせとは足し算や、掛け算のことだけを言うのではなくて、引き算も含まれる。たとえばツイッターは「従来のブログ機能」にあえて「文字数の制限」を組み合わせた結果成功した。
「合わせ鏡の法則」取材をする時、自分自身の姿勢が相手にも反映される。テンション高く聞けば相手も高く、抽象的に聞けば抽象的に、論理的り聞けば論理的に答えが得れる。相手の本音を引き出したければまず自分が本音を語ることが大切。
「わかりやすさ」=「面白さ」ではない。しかし、「わかりそうでわからない」というものは吸引力を持っており、興味を持続させる。「モ -
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項羽と劉邦、最澄と空海、信玄と謙信、エジソンとテスラ…そんな歴史上の大人物達で無くとも、同時代に並び立つ二人の天才のライバル関係を描いたストーリーというのは大抵の場合、すごく面白い。
しかもそれをNHKの番組制作ディレクターという圧倒的に取材力に長けた人がノンフィクション・エッセイとして書いたら。その時点で面白くなることは自明だ。筆者はこの本が初の著作らしいが信じられないくらい文章の構成が巧みに感じた。圧倒的な取材量に基づく事実の裏どり、肉付けがあることが文章から透けてくる。
『舟を編む』という辞書編纂者にスポットを当てた三浦しをん著の名作小説があるが、あんなドラマは小説の中だけだと思って -
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『99.9刑事専門弁護士』。この数字はドラマ用にデフォルメされたものと思いきや、それが日本の現実で、覆すためのハードルがこんなに高いとは…。
今村核弁護士の弁護活動には頭が下がるし、希望にも思えるけど、それがひとりや少数派のままだと自分が冤罪事件の当事者になった時どうなるのかが簡単に想像できすぎて恐ろしい。
実社会には松本潤もいなければ、HEROの木村拓哉もイチケイのカラスの竹野内豊もいないので…もはやどこから手をつけたらいいのかわからないほど根が深いけれど、一歩ずつ進むしかないし、進んでいけると信じたい。そのためにも今村弁護士を追ったドキュメンタリー番組。再放送を強く希望します。 -
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twitterで流れてくるイラストには魅力を感じる。
それとは別に、フェルメールの絵には美しさを感じる。
そして、背伸びして出かけた美術館で目にする現代アートは訳が分からない。
この3種類の絵の違いがジャンルの違いを超えているのは明らかですが、何が違うのか分からないでいました。
自分の感性や教養が足りないから、現代アートは分からないのかとも考えていました。
本書の第7章・第8章は、何が芸術なのか、どのような態度で臨めば観賞できるのかという問いを通じて、私の長年の疑問に答えてくれました。
また、この美学という分かりそうで分からない学問が、なぜ哲学の一種であるのかにも。
ところで、第6章「芸術 -
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ネタバレ数々のドキュメンタリー制作で知られる佐々木健一氏の著書。
「面白い」という抽象的な感覚を言語化してくれている。ただ、あくまで映画やドキュメンタリーといった分野での「面白い」の印象。
英語でいうとfunnyよりinterestingに近い。
ただ、自分もテレビマンとしてのキャリアを積み上げていく予定なので、大変参考になった。
以下、勉強になったことを簡単にまとめます。
・面白いとは差異と共感の両輪。差異が関心を生む。意外性によって視聴者の心を揺さぶり、その上で人物に共感を覚えてもらう。
・新しいものを生むには過去を知る。「想像とは記憶である」(黒澤明)アイデアとは既存の要素の新しい組み合わせ -
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著者、佐々木健一氏は本書で日本エッセイスト・クラブ賞を受賞されたそうです。
平成25年4月29日、NHK-BSプレミアムの特番。
「ケンボー先生と山田先生~辞書に人生を捧げた二人の男」という番組の取材内容に新たな証言や検証を加えて構成したものだそうです。
ケンボー先生というのは『三省堂国語辞典』を編纂した見坊豪紀(けんぼうひでとし)氏のことで、山田先生というのは、『新明解国語辞典』を編纂した山田忠雄氏のことです。
二人は東大の同級生で二人とも三省堂の社員でした。
最初はケンボー先生の助手として山田先生と二人で、『明解国語辞典』を作っていたそうです。それが途中から、簡単に言うと山田先生の反乱で -
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凄まじい生き方をするすごい人がいた
NHKドキュメンタリー「ブレイブ 勇敢なる者」
を見終わった時に心が震えた!
冤罪弁護士・今村核さんに密着したドキュメンタリーだった。
これは、そのドキュメンタリーを撮ったディレクターが書いた本。
99.9%有罪
残り0.1%の無罪
無実の罪を認めてしまった「弱くさせられている人」
その無実を確実なものとするために真実をとことん追求していく
鮨店の放火事件では現場の模型を自ら作り燃焼実験をし、チカン事件の時は映像を何百回と自ら確認し、
さらには骨格のことや人間の皮膚神経についてまで調べる。
執拗ともいえるその姿勢は「変人」と揶揄されることも…
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ネタバレこの弁護士さん自身が書かれた著書を読みたくなりましたね。
この先生の、「信念を貫くこと=生きる意味」は採算を度外視しなくては成り立たない。しかし採算度外視のままでそれをし続けていけば自分の人生は破滅してしまう。その葛藤がすごかった。描かれた孤独の様相が壮絶だった。
ここに描かれたこの弁護士さんの孤独は私たちがこの著書を読んで知るものよりもはるかに実質は過酷だと感じます。私たちはかろうじて一端を知るのみで、体感では理解しえないでしょう。
冤罪事件の実際、そしてそれを覆すことの想像を絶する困難と日本の司法の現状、読めば読むほど無実である人間が犯罪に巻き込まれることの恐ろしさを感じます。
そし