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感動を呼んだドキュメンタリー番組、NHK『ブレイブ 勇敢なる者「えん罪弁護士」』(2016年11月放送)の出版化。大きな身体に、白髪交じりのボサボサ頭。ドラマなどで観る敏腕弁護士とはかけ離れた風貌をしたその男は、「罪を負わされた被告人のえん罪」と、「自身の中に積った心のおり」の両者を雪ぐために司法の壁に立ち向かう──。
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Posted by ブクログ
『99.9刑事専門弁護士』。この数字はドラマ用にデフォルメされたものと思いきや、それが日本の現実で、覆すためのハードルがこんなに高いとは…。 今村核弁護士の弁護活動には頭が下がるし、希望にも思えるけど、それがひとりや少数派のままだと自分が冤罪事件の当事者になった時どうなるのかが簡単に想像できすぎて...続きを読む恐ろしい。 実社会には松本潤もいなければ、HEROの木村拓哉もイチケイのカラスの竹野内豊もいないので…もはやどこから手をつけたらいいのかわからないほど根が深いけれど、一歩ずつ進むしかないし、進んでいけると信じたい。そのためにも今村弁護士を追ったドキュメンタリー番組。再放送を強く希望します。
本作は冤罪事件を取り扱う弁護士の話であり、実際に担当した裁判の緻密な検証が見事。加えて、最後の最後で、父と息子の話となり、このエピソードも大いに感動した。これで著者の作品は全て読んだが、いずれも素晴らしい作品だと思う。
凄まじい生き方をするすごい人がいた NHKドキュメンタリー「ブレイブ 勇敢なる者」 を見終わった時に心が震えた! 冤罪弁護士・今村核さんに密着したドキュメンタリーだった。 これは、そのドキュメンタリーを撮ったディレクターが書いた本。 99.9%有罪 残り0.1%の無罪 無実の罪を認めてしま...続きを読むった「弱くさせられている人」 その無実を確実なものとするために真実をとことん追求していく 鮨店の放火事件では現場の模型を自ら作り燃焼実験をし、チカン事件の時は映像を何百回と自ら確認し、 さらには骨格のことや人間の皮膚神経についてまで調べる。 執拗ともいえるその姿勢は「変人」と揶揄されることも… そこまでしても無罪が勝ち取れないこともある それでも今村核さんは不屈の精神で立ち上がる 何がそこまで彼を駆り立てるのか? その理由について彼はこう語る 「私が生きている理由」 司法は本当に正義なのか? いや、まだ正義は日本の司法にあると言っていいのか? 裁判という得体のしれないものの恐ろしさ… 人は人を裁けるのか? 司法と正義とは? それを追求するために今村核さんは戦っているのかもしれない。 ご本人が書いた著書もぜひ読みたいと思った。
日本の刑事裁判の有罪率99.9%に挑み続ける弁護士、今村核さんのドキュメンタリー。2016年に放送されたNHKの番組の取材内容を盛り込んだもの。 冤罪がどう作られていくのかという点に関して、『証言の心理学』という中公新書と、『虚偽自白を読み解く』という岩波新書で読んで興味を持っていたが、弁護士の...続きを読む立場から、否認事件を担当するとはどういうことなのか、99.9%になってしまう(暗数を含めるとこの数字がさらに上がってしまう)司法の構造的な問題点がどういうことなのか、ということを全く分かっていなかったということが、本当に恐ろしいことだと思った。つまり、この本で取り上げられている痴漢の冤罪事件のようなことは誰しもに突然起こることというのが恐ろしい。最後の「司法の病」の章で、「えん罪を生み出す刑事司法の構造を見て、その中に自分が入ってしまったわけですから、もう徹底してやるしかない」(p.222)、「いや、俺はね、他の弁護士はなんでそこまでやらないのか、逆に不思議で。刑事司法のえん罪を生み出す構造を見て、その中に入ってしまったわけですから、それはもう徹底してやるしかないじゃないですか。僕はただ真面目なだけで、『変わってる』とかよく言われるけど、心外ですよ。」(p.161)と語る今村さんについて、鑑定依頼を受ける別の教授は「安っぽい正義感とかではなくて、『本当にこれを変えていかないと、日本の刑事司法はどうなっていくんだ』という危機感が、彼の中にはあると思うんです。誰もがいつ、その制度の中に放り込まれるか、分からないわけですよね。だから、試行錯誤している。どのように証明していけば、間違った判断をしない裁判になるのか。そのための努力は惜しまない。そういう使命感を彼からひしひしと感じます」(p.223)と述べている。この「誰もがいつ、その制度の中に放り込まれるか」という部分は、本当ひとごとじゃないよな、と思ってしまい、なんかこの本を読むと電車に乗ることすら怖くなる。「被害者の女性の思い込みに基づいて結論を導き出すことが可能なら、誰でも犯人にされてしまう危険性があるわけです。」(p.205)ということが怖い。 この本では一貫して、なぜ今村さんは冤罪事件を担当するようになったか、という点を軸にして、今村さんの普段の様子を追っていくドキュメンタリーだが、キレイなドラマの弁護士とは全く違う、そして冤罪事件ばかりを担当していった結果「”破滅”しかない」(p.11)という絶望が語られる様子に、現実の厳しさをこれでもかと感じずにはいられない。 最後は余談だが、青年期の今村さんの様子を描いた部分、父親を憎み、母親から逃げようとした部分、というのは、日々中高の教員をしているおれには印象に残るけど、今の時代こういう中高生は少数派なのかなと思う。「無意識に子どもを呑み込んじゃう親とかいますからね。」(p.137)と今村さんは語るが、今の時代無意識でも意識的でもとにかく呑み込み、子どももむしろ積極的に呑み込まれてなんぼ、みたいに思ってるんじゃないかなと思う。あと、「弁護士って一応、法律の専門家とされてますが、重要なのは有罪か無罪かと言う事実認定なので、法律知識なんてほとんど関係ないんですよ。(略)本当の勝負ってそこじゃないから。知識として法律だけを知っていても勝てないんですよ」(p.159)という部分も、弁護士という仕事について、全然知らなかったなと思った。最後まで興味を持って読めた。(22/11/10)
この弁護士さん自身が書かれた著書を読みたくなりましたね。 この先生の、「信念を貫くこと=生きる意味」は採算を度外視しなくては成り立たない。しかし採算度外視のままでそれをし続けていけば自分の人生は破滅してしまう。その葛藤がすごかった。描かれた孤独の様相が壮絶だった。 ここに描かれたこの弁護士さんの孤...続きを読む独は私たちがこの著書を読んで知るものよりもはるかに実質は過酷だと感じます。私たちはかろうじて一端を知るのみで、体感では理解しえないでしょう。 冤罪事件の実際、そしてそれを覆すことの想像を絶する困難と日本の司法の現状、読めば読むほど無実である人間が犯罪に巻き込まれることの恐ろしさを感じます。 そしてこの弁護士さんの人間性の真摯さもさることながら、そのお父さんの人間的魅力にも大変心惹かれました。 こういう親子関係、というのもあるんだなということを知ることが出来てそこまで掘り下げて取材した著者にも敬意を感じます。愛情表現というものの一筋縄ではいかない人間の感情の複雑さを垣間見た気がしました。 司法制度、感情を交えず冷徹に事実を積み上げていくという科学捜査とその根拠の信頼性、それを行う執念と根気、人としての真摯な生き方、信念を貫く方法、信じられる人間を得るということ、家族との関係性などなど…いろいろな点から「生きる」ということを考えさせられる良著です。中々手に取られにくい一冊かと思いますが、たくさんの方に読んで欲しいですね。
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