佐々木健一のレビュー一覧
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佐々木健一さんという人は、テレビ制作をしていた人だから、ほんとに構成が上手い。人を惹きつける方法を知り尽くしている。この本もテレビ番組を元にしているので、まるでドキュメント番組を見ているみたい。
まず初めにCGマンガによるつかみ(映画の予告編みたい)があって文章が始まり、藤田哲也博士のダウンバースト発見のシーンがくる。読者の興味が高まったところで、生い立ちと人となりが語られる。ここで読者は藤田哲也博士がいかに有能で、努力家で、愛すべき人物であるかを知る。好きになっちゃう。そのあとちょっと難しい説明も入る初めのシーンの解説となる。
これを読み通せない人がいるとは思えないほどのテクニック。
これは -
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タイトル名から難しいテーマを想像してしまうが、非常に分かり易い現代的なテーマを意識した内容で興味深い本だった。章立ての名称からも。例えば「センスの話」「カタカナからの美学」「コピーの藝術」「生のなかの藝術」「藝術の身体性」「しなやかな応答」…などから類推できる。15年ぶりの増補とのことで、そのあたりの解説も著者の熱意が感じられた。アートと藝術という言葉の違いの日本での微妙な彩!(アートではあるが、藝術ではない!日本の便法が外国では使い分け不可能)、ミュージアムに対する日本語の美術館と博物館の違い。スポーツと藝術の関係性は確かに例えばサッカーの得点までの藝術的、創造的なプレーというのがあったりす
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気象学者・藤田哲也。日本ではあまり知られていない藤田さんは、竜巻がよくおこるアメリカでは、亡くなった時にはニューヨークタイムスの朝刊に写真付きで追悼の記事が載せられました。竜巻の大きさを分類する単位F(フジタ)スケールは現在も世界中で使われている竜巻の単位の原案を考案した人である。そして、謎の航空機事故の原因を突き止めた。ダウンバーストと名付けたそれは、当初、ほとんどの気象学者に受け入れられず、約10年もの間、論争が続きました。
けれど、藤田の説をパイロットたちは実感していた。そして、藤田の説が立証され、現在ではダウンバーストの予防が張られ、大きな航空事故がなくなった。
日本人として知ってい -
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芸術作品とそのタイトルの関係について、理論的および歴史的な観点から考察をおこなっている、ユニークな美学書です。
著者は、芸術作品とタイトルの関係をめぐって鑑賞者が取る態度には、「教養派」と「審美派」の二種類があるといいます。「教養派」はタイトルを通して作品を制作した作者の意図に近づくことをめざし、「審美派」はタイトルによってみずからの芸術的直感が一定の方向に誘導されてしまうことに対する警戒を表明します。著者は、たがいに対立するこの二つの態度が、ともに近代的芸術観に基づいていると論じています。こうして著者は、タイトルを手がかりとすることで美学上の中心的な問題に踏み込んでいきます。
本書の議論 -
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ネタバレ[ 内容 ]
絵画や彫刻の展覧会で、作品の傍らには必ずネームプレートが寄り添っている。
音楽、小説、詩、戯曲…。
いずれにもなんらかのタイトルが付されている(なかには「無題」というタイトルもある)。
では、このタイトル、いつごろからどのように、作品と不即不離の関係になったのだろう。
人の名前、商品のネーミングも視野に入れながら、芸術作品におけるタイトルの役割と歴史を考える、刺激に満ちた美学の冒険。
[ 目次 ]
タイトル、この気になるもの
なまえと名詞
なまえの魔力
名づけとネーミング
商品名とタイトルの場所
タイトルの空間
タイトルの歴史学(文学の場合;絵画の場合)
タイトルの言語学―「テ -
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2007年07月03日
ずっと気になっていた図書でしたが、いよいよタイトルについての疑問が湧いてきたので読まざるを得ませんでした。どことは言えないが、美術史家ではなく美学家が書いている文章だな、と全般的に感じ取れる本でした。
私の興味を特に惹いたのは、タイトルという本題からは逸れますが、ヴィットゲンシュタンの「家族類似性」とか「風景相(アスペクト)」についての話でした。M先生が演習で触れていた作品の内にある美学、作品の外にある美学についても少し言及してありました。
『本の遠近法』の帯に「本が本を呼ぶ」というフレーズがありますが、本当にそれは可能なのかもしれません。気になる本から、気になる