今野一雄のレビュー一覧
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『エミール』第5編および『マルゼルブへの手紙』を収録している。エミールの教育の締めくくりとして、エミールのみに似つかわしい女性とはいかなる人物であるべきか、という女性論が開陳される。その女性ソフィーと出会ったあとも、「市民の義務」を学ばなければならないと称して、『社会契約論』の思想を規準に諸国を遊覧し、どの国に居住すれば自由を維持することができるかを検討する。最終的には、この地上において自由を維持することのできる国家は存在せず、積極的に国家活動に関わることはないが「執政官」として必要とされた場合にのみ義務を果たせばよい、という『社会契約論』で提示される「市民」像とは真逆の、自然法に従う「人間」
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『社会契約論』とほぼ同時に出版された『エミール』のうち、第一篇から第三編までを収録する。「自然人」の教育こそが主題だが、それはまったくの無為を意味するわけではない。のちにヘーゲルが、「自然法」という言葉の二義性に着目して述べたように、ここでの「自然」はむしろ人間の「本質」を意味し、それを、社会から隔絶された人工的環境を作り出すことによって実現しようとする。したがって、『エミール』は完全な作為の立場に立っている。そうした本来的な人間を作り出すための予備段階として、まず感覚からある程度の推論=判断能力を育てることが、第一篇から第三編までの主題である。
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エミールは名前は知っていたけれども、なかなか手が出なかった。でも死ぬ前に読んでおかなくては(死ぬには遠いとおもうが)と頭にひっかかっていたので、おもいきって読んでみた。
おもしろかった!
ルソーが愛情をこめて子供を立派な大人に育てるにはどうしたらいいかということを事細かに記しているのである。それだけではなく、彼の考え方、勉強法、幸福論など、いっきょ大公開である。
たとえば、幼い子供には情緒を育てるため明るい色の服を着せたほうがいいといっている。また食べ物にも言及している。とても細かい。それだけ筆者のあたたかみが感じられる。読む本も、古典や評価が定まったものを読むようにといっている。悪書は読ま -
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エミール、上、中、下と改めて纏めたが、
「下」が、賛同という意味ではなく、
ルソーの個性がとても色濃く出ているので、特に楽しめた。
本から
・プラトンは「国家篇」の中で、女にも男と同じ訓練をさせている。
・肉体はいわば魂に先だって生まれるのだから、最初の教養は
肉体についての教養でなければいけない。この順序は男女に
共通である。しかし、その教養の目的は違う。一方においては
その目的は体力を発達させることであり、他方におていは魅力を
育てることである。もっともこの二つの力はそれぞれの性に
排他的にあるわけではなく、ただ順位が逆になっている。
女性は何をするにしても優美に見えるよ -
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本から
・人間を本質的に善良にするのは、多くの欲望を持たないこと、
そして、自分をあまり他人にくらべてみないことだ。
人間を本質的に邪悪にするのは、多くの欲望をもつこと、
そしてやたらに人々の意見を気にすることだ。
・人間を社会的にするのは彼の弱さだ。私達の心に人間愛を
感じさせるのは私達に共通のみじめさなのだ。(略)
こうして私たちの弱さそのものから私達のはかない幸福が
生まれてくる。本当に幸福な存在は孤独な存在だ。
神だけが絶対的な幸福を楽しんでいる。
・教師よ。言葉を少な目にするがよい。しかし、場所、時、人物を
選ぶことを学ぶがいい。そしてあなたの教訓を全て実例に
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本から
・人間はよい者として生まれているが、社会は人間を堕落させる。
これがルソーの根本命題。
・「子どもの発見」ということが教育思想におけるルソーの最も
大きな功績。
・ルソーはデカルト的な懐疑から出発して、まず認識論を展開し、
ついで唯物無神論の不条理を論じ、理性ではなく直接的な感情
によって、自然の光景と人間の内部に神を認め、全ての人に
与えられた良心の掟を高く掲げています。
・「あぁ徳よ、素朴な者の崇高な学問。これを知るにはそれ程の
労苦と道具が必要なのだろうか。その法則は全ての人の
心の内に刻み込まれているのではないか。だから、それを
学ぶには、自己をかえ -
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ルソーのエミールの第四編を収録する中巻。
上巻では十五歳までの少年を取り扱っていたが、この巻ではその先二十歳すぎぐらいまでの、思春期の青年に対する教育が考えられる。そこでは恋愛、宗教、道徳が問題となる。
自然教育、自然宗教などと、とみに自然がテーマになるルソーだが、その自然の教え、導き、良心などというものとはなんなのかということも明らかになってくる。その地点からの近代社会批判は感動的ですらある。
子供をのびのび育て、強い子に育てるというような、やや牧歌的ですらある上巻までの視界からは打って変わって、社会と人間という関係を教育という地平から広く見渡した第四編(中巻)はルソーの珠玉の哲学論とも -
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ネタバレ自然に育てるのが一番、であるとルソーはいっている。
若い時から、断片的な教養や知識、子どもからすれば「いつ使うのだろうか」と思ってしまうのも当然だ。若干中二病のような毛もする作品ではあるが・・。
確かに子供は自然な存在だ。本当にモノを理解してもらうには、部屋にこもって本ばかり読んでいるより、実際に体験するほうがいいに決まっている。また食に関しても、「肉食するための肉は、目の前にいる牛や馬を殺し、捌き、切り裂いている状況を目の前から覆いさっている結果であるともいえる。そんなものを目の当たりにすれば、とても食べられるものではない。自然に反する味覚、偽装である。」というのようなことをいっている。か -
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ほぼ3年?越しになった『エミール』下巻(第5編+付録「マルゼルブ」への手紙)。
上巻は、エミールの主題であり、最も有名な部分である自然教育について。幼児期から少年期のエミールへの接し方が事細かに示されていた。
理想状態でしかないとは思いますが、結構感動したような。
中は、社交界の風俗(特に男女間の乱れ)への批判ばかりで、
正直、面白くなかった記憶があります。
中の最後はパリを出て嫁捜しに旅立つところで終っていたはずですが、
下巻は、実際に嫁(ソフィーね。)を見つけに行くには、どのように旅すべきかという心得から始まり、
「理想の女性像」であるソフィーが、どのような家で、いかな性格に育て上げ -
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前の日に「いい子で心配」症候群について書きました。
このことを書いてあと,思い出したことがあります。
ルソーの「エミール」です。うろ覚えの中で書いています。間違いは指摘してください。
「エミール」はだいぶ昔に読んだか,中途で放り出してしまったかです。ぼくの勝手な解釈もだいぶ入ります。
ルソーはフランスの啓蒙思想家。教育についても書いています。私生活の評判はよくないのですが。
彼は「自然に帰れ!」と唱えました。
そして,空想の中でエミールを育てます。エミールは子どもの名前です。
この中のテーマは,自然のままに育てればそのままいい子,いい人間になる,とうものです。悪い子